【その５】

秋だ、秋だ、うそやない。ほんまに秋だ！　どこも秋だ！

ちょっと、大丈夫？　世間は普通にもう冬でっせ。

もう、アンタにはロマンっちゅうものが無いわね。このひんやりとした空気、錦絵のような山々、黄金色に輝くイチョウ。あああああ、ロマンチック！

何か、悪いもん食べた？

フン、ワタシの回りは、まだ美しい秋の色がしっかりと残ってんのよ。

秋にそんな未練があるわけ？

・・・・・・・・

まつたけ、食べられへんかったとか？

・・・・・・・・

栗ご飯、食べられへんかったとか？

・・・・・・・・・・ ロマンチックな秋になっても、いい男と出会えんかった・・・グスン

わ！　珍しい。ココちゃんが食べ物のことを無視した！

秋を逃したら、もう冬ごもりせなあかん。

熊かいな。大丈夫、冬も充分にロマンチックです。
見てごらん。街にあふれる輝くイルミネーションを。
見あげてごらん。冬のきらめく星座を。

寒い・・・・　フトコロさびしい・・・・　ワタシの秋が逃げていく・・・・

もう、元気出して。よし！今夜は温かい鍋料理をご馳走してあげる。

やった！　気の変わらんうちにゴー！

なに、その満面の笑顔は。なんか、作戦負けしたみたい。

さあ、早く早く。冬大好き。

（今日は、ココちゃんの勝ち。やっと奢ってもらうことに成功したココちゃんは鍋の後の雑炊を３杯平らげましたとさ。もち日本酒もたっぷりとね）