食文化の豆知識」カテゴリーアーカイブ

P&Cネットワークの間島万梨子がお届けする、食文化や食の安全をめぐる連載レポート。
旬の話題を含めて、食の大切さを綴ってまいります。

【第85回】 食環境の現状(64)

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食文化の豆知識 85 [食文化の現状64]

 

食材は季節毎に旬があり、特に四季がはっきりしている日本では、その時々の新鮮な食材

が出回ります。春には芽吹きのものが、夏には太陽をしっかりと受けとめるものが、秋に

は盛りたくさんの実りの恵みが、そして冬もどっしりとした頼もしい食材が楽しめます。

ただ、考えてみると、四季の移ろいで変化していく食材は、殆どが野菜・果物類であって、

肉類に季節を感じることはまずありません。新子や鮎、秋刀魚などの魚介類は一応の季節

を感じさせてくれますが、畜産系にいたっては、通年の印象に変化はありません。逆に言

えば、ほぼ安定している食材といえるでしょう。よって価格も安定している。だからでし

ょうか。米国では収入の低い層ほど、肉類が食事に占める割合が多いとか。肉が贅沢であ

った時代が記憶に刻まれている我が身としては、一種の驚きを隠せませんが、なるほどな、

と妙に納得してしまいました。野菜は気象条件による価格変動が避けられないうえに、調

理に手間がかかります。それなのに3種類もの野菜料理を作っても、メインディッシュに

はなり得ないのが辛いところで、その点、肉は焼いただけで立派な主菜になり、付け合わ

せに野菜をほんの少しつければ、その1品だけで食卓が成り立ちます。ファストフードの

ハンバーガーも安価な肉で、はい出来上がり。それなりに食べられる。でもそのような食

事を続ければ当然に野菜摂取不足に陥り、肥満や中性脂肪過多や動脈硬化が待ち受けてい

ます。

 

本当に、野菜類を潤沢に摂取するには努力と手間が欠かせません。最も簡単な野菜料理で

ある生野菜サラダをばりばりと食べても、到底一日の奨励摂取量350gには及びません

し、それだけの生野菜は食べきれない。蒸すか煮るか茹でるかするのが一番、量を摂取し

やすいのですが、それがなかなかに難しい。と何やら愚痴めいてきましたが、毎日の食卓

に何種類かの野菜料理を登場させる大変さは、台所を預かる側の方はお分かりだと思いま

す。で、簡単に野菜を摂取できる野菜ジュースや青汁が売れるわけです。模範的な食生活

はバランスにつきるといっても過言ではありません。食を提供するレストランや宿泊施設

も、是非、バランスの取れた料理を届けて欲しい。先日訪問した日本海を望む老舗の宿で

いただいた夕食は、新鮮な魚のオンパレードで舌鼓を打ったのですが、野菜料理が殆ど見

受けられませんでした。野菜を旨く調理し、輝く1品に仕立てることの出来る料理人こそ

が、真の料理人といえるのかもしれません。

 

               24年8月4日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第82回】 食環境の現状(61)

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食文化の豆知識 82 [食文化の現状61]

かつてある会合で、本物の食材とは何か、と質問されました。“余計なものが添加されてい

ない食材ではないでしょうか“と答えた記憶があります。随分と乱暴な論理ですが、根本

的に今もその考えは変わりません。生の野菜はまさしく本物です。多少の農薬が使用され

ていようと有機栽培のものであろうと、大根は大根、白菜は白菜、トマトはトマトです。

偽物の大根にはまずお目にかかれません。肉類も産地がどこであろうと肉に変わりありま

せん。ブランド力や部位、肉質で価格付けはされても、すべて肉そのものです。

ところが、これが加工食品となると、別問題となります。まさに本物と偽物が存在するの

です。特に日本では、多岐にわたっています。国が豊かであるために消費者のニーズも幅

広く、それだけ食品種が多いという裏付けかもしれませんが、それにしても劣悪商品が多

すぎると思うのです。

 

酒、醤油、味醂、ジャム、チョコレート、つゆ系、練り商品、ハム、ソーセージ、ベーコ

ン類etc。これらの中で、もどき商品が大きな顔をして陳列棚で売られています。どれがも

どき商品かは、裏の原材料欄を見れば大体判断がつきます。原材料種が多ければ多いほど、

その商品は偽物に近づいているというわけです。例えばジャム。もっとも良質なものは、

元の果物と砂糖・蜂蜜類だけです。添加物が増えるに従って劣悪商品になり値段も下がっ

ていきます。苺ジャムと銘打っても、ほんの少しの苺に大量の添加物を投与して出来上が

った練りものとしか評価できないものも出回っています。これはジャム発祥のヨーロッパ

ではジャムとは呼ばれないでしょう。チョコレートも日本では大体が、カカオより砂糖の

添加量が勝っている。本物のチョコレートではありません。日本酒も、糖類やら醸造アル

コールやらをどっさり入ったものが酒コーナーに並んでいます。ハム類にいたっては、

ハムという名称を付けてはいけない商品が多く販売されています。どれだけの添加物が投

与されているでしょう。醤油も本物は、大豆、小麦、食塩 から作られており、手間は

かかりますが、原材料はシンプルです。ところが、脱脂加工大豆を使って旨み調味料や塩

水で薄めたものでも、一応は醤油として売られています。

 

パン党の人なら多分毎朝食べているパンにしても、膨大な種類のパンが存在します。どっ

さりとこれでもかというほどの添加物が加えられているものも多く出回っています。

“美味しければいいじゃない”も、もっともですが、小麦と塩、それにバターだけを加え

て天然発酵させたパンの美味しさは、飽きることがありません。

利用者が本物を選ぶようになると、自然に偽物は駆逐されていきます。市場とはそういう

ものです。あとは価格をどう安定させるかが、大課題でもありますが。

 

               24年5月5日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第81回】 食環境の現状(60)

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食文化の豆知識 81 [食文化の現状60]

前回に続き、トマトウラミ節です。我が家では十年前から、朝の一杯にトマトジュースを

欠かしません。二日に500ml一本が空きますので、比較的安いPB商品をひと月に一回

程度、1ダースほどまとめて購入していました。ところが!このところ、いつも棚が空っ

ぽです。二回ふられ、先日やっと棚に並んでいました。当然まとめ買いです。でもレジで

の精算の際、トマトブームに乗った人なのだと回りから思われてるようで(思われてるの

に決まっています)落ちつきませんでした。根が小心者なので、全くこういう状況は不得

手です。このところ食卓では危険信号続きです。食用油も値上がるとか。これはセール時
に購入したのが2本あるのでストック充分です。本当に食品価格は油断が出来ません。こ

うなれば自己防衛ならぬ家計防衛しかありません。コメ価格だけ政府介入で調整しても、

他の圧倒的な食材価格が不安定な状態では困ったものです。食糧省が必要です。農林水産

省にまかせてはおけないと思います。まかせておいた結果が、無惨な食糧自給率であり、

全国に散らばる休耕田であり、世界的にも高い食料価格です。

先日、スーパーマーケットで笑える宣伝文句に出会いました。漬け物売り場の大根、いわ

ゆるおたくわんですね。その売り文句が、“野菜高騰のお助け漬け物”。語句は多少違った

かもしれませんが、要するに“野菜が値上がりしています折、安い漬け物の大根が野菜の

代わりとしてお得ですよ”ということなのでしょう。いやはや逞しい商法ですが、生の大

根とお塩たっぷりの漬け物の大根とは全く用途が違いますし、栄養素も変化しています。

それに安価な加工品ばかり食べるわけにもいきません。体をこわします。日本では上質な

野菜の缶詰や瓶詰めが欧米のようには普及していません。新鮮な野菜に恵まれてきたせい

でしょうか。和食の形がそれらを受け付けなかったのも遠因の一つでしょう。

とにもかくにも、安定的青果物の供給は、行政もからんでの緊迫課題であるという認識が

欠落しているように思います。

外食時でも、野菜の扱いについて多少の誤解があるようです。日本料理には新鮮な野菜が

多使用されている?とは、おおかたの認識ではないでしょうか。でも寿司店でどんな野菜

をいただけますか。寿司大好きで月に何回かはお手頃な寿司店に行きますが、その際は野

菜を摂取するのは諦めています。和食専門店でも鍋もの以外は野菜料理はおざなりなこと

が多い。うどん店やそば店でも野菜はほんの少し、付け足し程度です。会席料理も魚と肉

のオンパレードです。反面、イタリア料理には結構な野菜が使用されています。トマトや

きのこ、タマネギなどがどっさりと使われていますし、中国料理も青菜をはじめ野菜たっ

ぷりな料理が多いものです。日本の旅館に連泊すると、しみじみ野菜不足に陥ります。

だから、思いこみはこわいと思うのです。厚労省お薦めの一日350gの野菜摂取も、日

本では達成が難しいとか。むしろ米国の方が摂取量が上回っている状況です。これは、い

くらお上が旗をあげても、抜本的施策が欠如しているので、“ただあげてみました。それで

役割は終わりです“になってしまいそうです。

               24年4月8日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第79回】 食環境の現状(58)

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食文化の豆知識 79 [食文化の現状58]

 

環境への負荷を減らす意味合いで、エコロジーの言葉が使われるようになりました。“エコ”

の通称であらゆる業種業態に浸透してきています。そのこと自体は勿論、歓迎すべきこと

で、限りある資源を守るためにも、省エネルギーで消費電力を減らしたり、ゴミを少なく

する努力は必至だと思います。ただ、エコの名さえ出せば文句はないだろう式の押しつけ

や驕慢が見え隠れするのは、いささか興ざめです。卑近な例でいえば、かつてマイ箸ブー

ムが起こりました。森を守ろう、の大合唱が世間を席巻し、外食時に店の割り箸を使わず

自分の箸を携帯する人が結構いました。それが、割り箸や爪楊枝は、いわゆる廃材利用の

優れた方法で生まれているとの認識が高まり、自然消滅しました。放置された森は荒れて

いきます。適切に間伐しなければ、息づきません。そのときに出たくず材と呼ばれる廃材

から割り箸などを作って無駄をなくしていたのです。当時から、木の香りが漂う割り箸が

大好きな私は、マイ箸など持参する気にもなれませんでした。ところが、最近になって、

バッグにマイ箸ならぬマイ割り箸を2,3本潜ませています。使い回し可能なプラスティ

ック素材の箸を用意している店が増えたからです。理由説明は、1,大事な資源の再利用

の為、2,ゴミを減らす、のいずれかです。でもちょっと待って欲しい。箸は、ナイフ&

フォーク・スプーンと異なり、それ一本でオールマイティー的要素を持ち、いわば手と一

体化して常に口に食物を運ぶ役割を担っています。そんな個人的な道具を人と共有したく

はないし、きちんと洗浄されているかも信頼できかねる店が多くあります。かつてのマイ

箸ブームが日本で起きた頃、シンガポールでは逆にインフルエンザ感染や食中毒感染を防

ぐため、使い捨て割り箸を各レストランに義務づけたと聞きます。まるで日本と逆です。

それに、ゴミを減らす、という理由ももっともらしいのですが、木素材の割り箸は、逆に

ゴミ焼却を助けると思うのですが、どうなのでしょう。燃えにくい生ゴミに割り箸が混じ

っていた方が燃えやすいだろうに、などと妄想しながら、割り箸を常にバッグにしのばせ

る日々です。エコ崇拝といえば、スーパーでもマイバッグが推奨されているようですが、

まず先に過剰包装から脱却するのが先決でしょう。少しの食材に大仰な包装を施し、無駄

なゴミを大量に提供しています。各種トレーに包装ビニールや包装プラスティックの数々、

すぐに我が家のゴミが増えてしまう。使い回し可能な箸にしても、過剰包装にしても、そ

こには真のエコロジー遵守精神は感じられません。ブームに流されることなく、真贋を見

分ける能力を身につけたいものです。

 

              24年2月1日  間島万梨子  食生活アドバイザー  

 

 

 

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【第78回】 食環境の現状(57)

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食文化の豆知識 78 [食文化の現状57]

新年を迎えました。どのようなことがあっても、時は流れ、一年が過ぎていきます。

そしてやはり一年の節目は、生活の区切りとして、頭を垂れて来るべき一年の平安を祈る

のは自然の摂理なのでしょう。そうやって、私たちは人生を積み重ねてきたのだと思いま

す。初詣に繰り出す人々のひとりひとりに、それぞれの願いや祈り、ひいては感謝の思い

や鎮魂があると思えば、自ずと謙虚な気持ちに成らざるを得ません。我が願い等、何ほど

のことかと。神様も大変お忙しい時期でしょうに。

 

さて、昨年のテレビで、短期1年ほどで寿司職人を養成する寿司アカデミーを紹介してい

ました。海外での日本の寿司人気を受けて、日本で技術を習得して海外で寿司店を出店を

希望する多くの外国人も技術を学んでいました。歓迎すべき現象です。寿司は何と言って

も生魚を扱うため、正しい衛生管理が必至です。握り方の技術とともに、徹底した衛生管

理を習得して、海外の寿司店で生かしてほしい。日本では、保健所の指導や法律のかいあ

ってか、寿司店での食中毒はかなり少ないはずです。新聞紙上をにぎわす食中毒の元は大

体が弁当店か仕出し屋、宴会料理、団体料理などで、単独のフレンチレストランやイタリ

アレストラン、寿司店などは極端に少ない。やはり作ったものをすぐに食べて頂くスタ

イルが、安全に結びつくのかもしれません。

 

海外での寿司店は、日本人以外の経営が多いと聞きます。職人もしかり。そういう環境の

中で、ひとりでも実際に日本で技術や衛生管理を学んだ職人が増えていくのは、寿司にと

っても朗報です。というのは、海外旅行の際、頸をかしげたくなる経験を私もしているか

らです。ある国で食べた日本料理は、これは日本人が作っていないな、と明らかに分かる
しろものでした。日本料理の基本がまるでなっていない。器しかり、食材しかり。外国の

人が食べて、これが日本料理か、と思われるのはいやだな、と感じました。また、ある店

では、寿司を握る職人がボロボロの布巾を使っているのが丸見えでした。布巾というより

雑巾で、まな板や手を拭いている。私たちは固まりました。日本ではあり得ない。そこそ

こに店を出ました。寿
司が外国で進化を遂げるのは避けられません。裏巻きやカリフォル

ニアロールなど、そのアイデアに感心する寿司もあります。日本に逆輸入しているものも

あります。でも、基本は守ってほしい。

 

食の宝庫・日本。こんなにバラエティ豊かに食を楽しめる国は無い、と個人的に思ってい

ます。技術しかり、食材しかり。またレストランのレベルの高さしかり。接客のきめ細か

さしかり。これからも世界に誇る食の文化を、守っていきたいものです。

 

              24年1月3日  間島万梨子  食生活アドバイザー  

 

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【第77回】 食環境の現状(56)

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食文化の豆知識  77 [食環境の現状56]

 

野菜の価格が安くなりました。気候のなせる恵みでしょうか。温暖ゆえに収穫高が増え

たのに、需要つまり購買高が少ない故の価格下落らしいのです。大根や白菜の需要が伸

びないのは、暖かい日が多くて鍋料理が恋しくならないせいともいわれています。鍋料

理大好き我が家では、暑かろうと寒かろうと、年中鍋ものが頻繁に食卓に登場しますの

で、大根や白菜、キャベツが安く手に入るのは、本当にうれしい限りです。でも気にな

ったのが、その安価をマイナス症状としてとらえているテレビ報道です。生産農家の方

たちの窮状を訴える内容でした。ちょっと待って欲しい。ほんの少し前まで白菜は一個

が800円ほどもしていましたし、大根も一本300円ほどで店頭に並んでいました。

まるで高級野菜の価格です。それを見て、ため息をついたものです。随分と長い期間、

白菜が高騰していましたので、ずっとキャベツで代替していました。キャベツもとても

鍋になじんで美味しく、材料に困りはしなかったのですが、やはり白菜には白菜の旨み

があるので、今は喜んで買っています。

 

以前から不思議に思っていたのですが、コメの価格は行政の介入によって調整されるの

に、何故野菜の価格は乱高下するのかと。逆に言えば、何故コメだけが守られているの

かと。野菜は気象条件によって価格が大きく揺れるのは理解できます。少ししか収穫

出来なければ高くなり、大量に収穫すれば安くなる。それに前述のように、消費者の

購買傾向も影響します。となると、誤解を怖れずに言えば、これも一種のギャンブル

といえなくもない。要は、需要と供給のバランスによる商売の成否、ということでしょ

う。どの商売にも通じる鉄則です。でも野菜はその鉄則からはずしてほしい。なぜなら

野菜は、日常に欠かせないからです。肉は牛肉、豚肉、鶏肉から選べます。魚も色々な

種類から好みと予算で選べますが、大根の代わりはないのです。白菜しかり、キャベツ

しかり、ジャガイモしかりです。是非、野菜にもコメのように価格安定の調整力を付加

してほしい。行政が価格保証をすればいいのです。日常に無くては困る野菜たちが、安

定した価格で店頭に並ぶ日が待ち遠しいものです。

 

23年12月2日  間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

 

 

 

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【第75回】 食環境の現状(54)

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食文化の豆知識  75 [食環境の現状54]

 

原発事故による放射能漏れの影響が、実りの秋を前にした被災地域の生産者の方たちを

苦しめています。今回の放射能の人体に及ぼす有害度合いついては、まさに諸説入り交

じり、決定的な結論には至っていないようです。勿論、数値による危険比較は明らかに

されていますが、そもそも放射能は空中に漂っており、風向きなどによっても大きく

変化するもので、一概にどの地がどうと決めつけるのも少々乱暴のような気がします。

風評被害もあり、食物や木材などの放射濃度に対してもう少し許容度が高くてもいいの

にと思いますが、小さなお子さんをかかえるおうちでは、心配なことでしょう。放射能

の被爆が人体に病巣となって現れるかどうかが分かるのは数十年先のこともあると聞け

ば、なおさらのこと不安になるのも無理ありません。

 

でももう人生の折り返し点を過ぎた私などは、放射能がついているかもしれないといわ

れる食べ物に関してはノープロブレムで、問題とされているその地の肉も野菜もいただ

きたい。野菜はしっかりと洗えば殆ど問題ないといわれていますし、肉も焼けば大丈夫

でしょう。万が一、二十年先に体に変化が起こっても、文句は言いません。その年なら、

亡父の寿命をとっくに通り越していますから、何の不平もありません。などと、馬鹿な

ことを考えていますが、本当にもう少し、許容度を高くして、せっかく収穫した恵みを

欲しい人に有効に行き渡るように配慮して欲しいものです。

 

人体に与える悪影響となると、いまだに使用が許されているタール系着色料の方が余程

私には恐い。和菓子や漬け物の毒々しいまでの鮮やかな赤や黄、緑青の色彩を見るにつ

け、気分が悪くなってしまいます。綺麗に見せるためにやむを得ない、などの言い訳は

聞きたくありません。黄色四号はアレルギー性じんま疹の原因になるともいわれ、黄色

一号は発ガン性を疑われ、多くの欧米各国では使用禁止になっているはずです。

スーパーに並ぶ漬け物の大半には人工着色料が使われています。アミノ酸等の調味料も

常連です。過度なアミノ酸調味料を取ると、痺れや頭痛を起こします。自宅でぬか漬け

や塩だけのあっさり漬けを作るのがベストなのでしょうが、なかなかそこまで手が回り

ません。ですから市販商品の中から納得できるものを選ぶ努力を怠らないようにしたい

ものです。消費者から支持されなくなると、その商品は消えていきます。

 

23年10月3日    間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

 

 

 

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【第74回】 食環境の現状(53)

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食文化の豆知識  74 [食環境の現状53]

 

新聞誌面で、飲食店での食中毒発生の記事をよく目にします。全国レベルからみると

発生率はごくわずかのようですが、記事にならないものも結構あって、油断がなりませ

ん。私自身は幸いにも今まで重篤な食中毒になったことはありません。多分、大多数の

人もそうではないでしょうか。ただここで気を付けたいのは、軽い症状で済んだために

それが食中毒であったと認識しなかった例が多く存在するのではないか、ということで

す。軽い下痢は誰でも経験しています。多少症状が重くても、水を飲んで絶食し静かに

していれば、症状が治まるケースが殆どなので、保健所にはかけこまなかったわけです。

一口に食中毒といっても、食べた量や体調如何によって、随分と症状は異なりますし、

また、原因不明のままに、まあ治ったからいいか、で忘れてしまうものです。

 

ただ、今後もその害から免れるという保証はありません。サルモネラ、腸炎ビブリオな

どの細菌や、ノロウイルスなどのウイルスは、五感を研ぎ澄ましても防げません。汚染

されたものを出された時点でアウトです。残念ながら見極めることは不可能です。

食中毒防止の原則である「つけない、増やさない、殺す」は、家庭内では、実行可能で

しょうが、外食時には客は無防備です。かといって、楽しい外食は止められませんし、

余り神経質になっても、食事が美味しくありません。では最低限、どう注意すればいい

のでしょう。

 

まず、外食の場合は、繁昌している店を選ぶことです。繁昌しているということは、食

材の回りがスムーズで、自然に新鮮な食材が用いられます。お好み焼きひとつにしても、

繁盛している店は、肉もイカも野菜も新鮮で、油やソース、マヨネーズの使用期間が短

いために、中身が劣化することはまずありません。一方、はやっていない店では、調味

料をはじめとする食材の新陳代謝が遅くなり、必然に劣化の可能性も高くなります。

それと、トイレの衛生管理が行き届いているかどうかも、チェック要です。店の衛生管

理姿勢がもろに出るところです。洗浄剤や消毒液の完備や床回りの清掃は最低限の責務

です。またスタッフがやたらに咳をしている店もノーサンキューです。そして注文する

料理は、なるだけシンプルなものがお薦めです。素材を焼く、煮る、揚げるだけのもの。

最近、生魚の取り扱い基準は結構厳しいので、はやっている店の刺身は美味しくいただ

けると思います。

 

いくら注意をしていても、あたることはありますが、やはり生肉を避ける、トイレの汚

い店は避ける。閑古鳥の鳴いている店は避ける、練り物ばかりの料理は避ける、大食は

避ける(これ大切です)など、自己防衛しましょう。

 

23年9月3日    間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

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【第72回】 食環境の現状(51)

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食文化の豆知識  72 [食環境の現状51]

 

関西の食文化を語るに当たって、自分自身の各地での食の印象を振り返ってみました。

出身は大阪ですが、父親の転勤で中学校時代は家族全員で福岡に。京都での大学時代は

両親だけが東京だったため度々その地へ帰省。家庭を持ってからは、はたまた高松や成

田や和歌山へ。そして今はどっぷりと大阪に。まさに流浪の人生でしたが、各地で生活

したおかげで、面白い経験をさせていただきました。特に食は、土地土地での特徴が顕

著に現れるもので、強い記憶となって残っています。

経験した各地を一言で表すなら、福岡は寒くて魚が旨い! 高松は温暖で魚が旨い!

和歌山南紀白浜は暖かくて魚が旨い!そして成田は寒くて魚は(涙)。実際、成田の

スーパーで見かけるのは、タラとブリとサケ。そして秋には秋刀魚。記憶に残るのは

その程度で、好物のメバルもイサギも太刀魚も鯛もカンパチも見たことはありませんで

した。新子が出回る春に、保冷袋を持って新幹線に乗り、大阪の百貨店の食品売り場か

ら新子をゲットしてきたこともあります。ただ成田は住んだ中では、もっとも美しく整

備された街でした。駅前のメインストリートの街路樹がなんと桜なのです。春になれば、

町全体がピンクに華やぎ、それはそれは素敵な風景が広がっていました。今となればと

ても懐かしい。

さて、関西と関東の食の違いはともかく、関西と一口に言っても、またそこにも食の習

慣というか、その土地ならではの特色があるものです。大阪と京都も微妙に外からの評価が異なります。京都の方が評価が高い!京都の料理店は確かに伝統がありますが、現

在のような新鮮な魚介類を初めとする豊富な食材を駆使した料理は、戦後に生まれたも

のだと思います。割烹や板前料理はたしか、大阪発祥だと記憶していますが、今や京都

のブランドに組み込まれています。昔と違って、物流の発展が各地の垣根をはずし、技

の力で自由にすばらしい料理を創りあげることが可能になったのは、大いに歓迎すべき

でしょう。でも、食材自体となると、神戸、大阪にはかなわないはずです。兵庫にはな

んといっても、すべての和牛のルーツたるべく但馬牛がいます。そして瀬戸内海には鯛

やたこ、穴子、いかなご等の海の恵みが。日本海には松葉ガニが。

根が魚好きなもので、寿司店に行ってもマグロには目もくれず近海の白身魚に舌鼓みを

打つ身とあっては、やはりやはり関西の、特に瀬戸内海や大阪湾、ひいては太平洋の

の海の恵みを味わえる幸せをひしひしと感じています。

何だか、お国自慢になってしまいました。反省します。

 

23年7月9日 P&Cネットワーク 間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

 

 

 

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【第71回】 食環境の現状(50)

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食文化の豆知識  71 [食環境の現状50]

 

関西の某大学にて、「関西の食文化」という標題で講義を仰せ付かりました。特別講義

ですので、1時間30分の限られた時間枠で、関西の食文化の歴史や伝統、また関西

二府四県の食材の特徴などの内容を盛り込まなくてはなりません。まさにてんこ盛りの

教材になってしまいましたが、自分自身、あらためて関西の食の素晴らしさを再認識
するいい機会になりました。

 

特に、「コナもん」で片づけられがちな大阪の食の奥深さを若い方たちに発信できたのは、

うれしい限りでした。私もたこ焼きは好きな方ですし、お好み焼も好物の一つですが、

他に一杯、美味しい物がこの地にはあふれています。また、大阪の人は“「コナもん」食

べにいこう”などとは決して言わない。「コナもん」なる呼称が浸透したのは、ほんのこ

こ10年来のような気がします。情報誌やメディアが面白おかしく作り上げ、取り上げ

た陳腐な呼称だと、個人的に思っています。たこ焼きはただのスナックです。目的型の

食ではなく、たまたまそこにあるから食べようか、という範囲内の食で、ナポリのピッ

ツアの奥深いレベルにはほど遠いジャンルに位置付けられるものでしょう。

 

天下の台所と称され、その地での食材などは“下りもの”と尊重された歴史を知るにつ

け、もっと関西の食の素晴らしさが発信されてもいいと切に願っています。瀬戸内海、

太平洋、日本海の何と三海から水揚げされる豊富な魚介類、和牛誕生の地としての但馬。

多湿で温暖な気候ですくすくと育つ野菜類。どれを取っても関西の食は多様性に満ちて

います。そして昆布を主とする出汁文化は、繊細な食材の旨さを十二分に引き出す力を

持っています。清流から産まれた銘酒や豆腐も、豊富な食文化の一角を担っています。

 

これからも、関西の食文化を大局的に検証していきたいと思っています。

 

23年6月1日 P&Cネットワーク 間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

 

 

 

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