【第82回】 食環境の現状(61)

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食文化の豆知識 82 [食文化の現状61]

かつてある会合で、本物の食材とは何か、と質問されました。“余計なものが添加されてい

ない食材ではないでしょうか“と答えた記憶があります。随分と乱暴な論理ですが、根本

的に今もその考えは変わりません。生の野菜はまさしく本物です。多少の農薬が使用され

ていようと有機栽培のものであろうと、大根は大根、白菜は白菜、トマトはトマトです。

偽物の大根にはまずお目にかかれません。肉類も産地がどこであろうと肉に変わりありま

せん。ブランド力や部位、肉質で価格付けはされても、すべて肉そのものです。

ところが、これが加工食品となると、別問題となります。まさに本物と偽物が存在するの

です。特に日本では、多岐にわたっています。国が豊かであるために消費者のニーズも幅

広く、それだけ食品種が多いという裏付けかもしれませんが、それにしても劣悪商品が多

すぎると思うのです。

 

酒、醤油、味醂、ジャム、チョコレート、つゆ系、練り商品、ハム、ソーセージ、ベーコ

ン類etc。これらの中で、もどき商品が大きな顔をして陳列棚で売られています。どれがも

どき商品かは、裏の原材料欄を見れば大体判断がつきます。原材料種が多ければ多いほど、

その商品は偽物に近づいているというわけです。例えばジャム。もっとも良質なものは、

元の果物と砂糖・蜂蜜類だけです。添加物が増えるに従って劣悪商品になり値段も下がっ

ていきます。苺ジャムと銘打っても、ほんの少しの苺に大量の添加物を投与して出来上が

った練りものとしか評価できないものも出回っています。これはジャム発祥のヨーロッパ

ではジャムとは呼ばれないでしょう。チョコレートも日本では大体が、カカオより砂糖の

添加量が勝っている。本物のチョコレートではありません。日本酒も、糖類やら醸造アル

コールやらをどっさり入ったものが酒コーナーに並んでいます。ハム類にいたっては、

ハムという名称を付けてはいけない商品が多く販売されています。どれだけの添加物が投

与されているでしょう。醤油も本物は、大豆、小麦、食塩 から作られており、手間は

かかりますが、原材料はシンプルです。ところが、脱脂加工大豆を使って旨み調味料や塩

水で薄めたものでも、一応は醤油として売られています。

 

パン党の人なら多分毎朝食べているパンにしても、膨大な種類のパンが存在します。どっ

さりとこれでもかというほどの添加物が加えられているものも多く出回っています。

“美味しければいいじゃない”も、もっともですが、小麦と塩、それにバターだけを加え

て天然発酵させたパンの美味しさは、飽きることがありません。

利用者が本物を選ぶようになると、自然に偽物は駆逐されていきます。市場とはそういう

ものです。あとは価格をどう安定させるかが、大課題でもありますが。

 

               24年5月5日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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