【第81回】 食環境の現状(60)

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食文化の豆知識 81 [食文化の現状60]

前回に続き、トマトウラミ節です。我が家では十年前から、朝の一杯にトマトジュースを

欠かしません。二日に500ml一本が空きますので、比較的安いPB商品をひと月に一回

程度、1ダースほどまとめて購入していました。ところが!このところ、いつも棚が空っ

ぽです。二回ふられ、先日やっと棚に並んでいました。当然まとめ買いです。でもレジで

の精算の際、トマトブームに乗った人なのだと回りから思われてるようで(思われてるの

に決まっています)落ちつきませんでした。根が小心者なので、全くこういう状況は不得

手です。このところ食卓では危険信号続きです。食用油も値上がるとか。これはセール時
に購入したのが2本あるのでストック充分です。本当に食品価格は油断が出来ません。こ

うなれば自己防衛ならぬ家計防衛しかありません。コメ価格だけ政府介入で調整しても、

他の圧倒的な食材価格が不安定な状態では困ったものです。食糧省が必要です。農林水産

省にまかせてはおけないと思います。まかせておいた結果が、無惨な食糧自給率であり、

全国に散らばる休耕田であり、世界的にも高い食料価格です。

先日、スーパーマーケットで笑える宣伝文句に出会いました。漬け物売り場の大根、いわ

ゆるおたくわんですね。その売り文句が、“野菜高騰のお助け漬け物”。語句は多少違った

かもしれませんが、要するに“野菜が値上がりしています折、安い漬け物の大根が野菜の

代わりとしてお得ですよ”ということなのでしょう。いやはや逞しい商法ですが、生の大

根とお塩たっぷりの漬け物の大根とは全く用途が違いますし、栄養素も変化しています。

それに安価な加工品ばかり食べるわけにもいきません。体をこわします。日本では上質な

野菜の缶詰や瓶詰めが欧米のようには普及していません。新鮮な野菜に恵まれてきたせい

でしょうか。和食の形がそれらを受け付けなかったのも遠因の一つでしょう。

とにもかくにも、安定的青果物の供給は、行政もからんでの緊迫課題であるという認識が

欠落しているように思います。

外食時でも、野菜の扱いについて多少の誤解があるようです。日本料理には新鮮な野菜が

多使用されている?とは、おおかたの認識ではないでしょうか。でも寿司店でどんな野菜

をいただけますか。寿司大好きで月に何回かはお手頃な寿司店に行きますが、その際は野

菜を摂取するのは諦めています。和食専門店でも鍋もの以外は野菜料理はおざなりなこと

が多い。うどん店やそば店でも野菜はほんの少し、付け足し程度です。会席料理も魚と肉

のオンパレードです。反面、イタリア料理には結構な野菜が使用されています。トマトや

きのこ、タマネギなどがどっさりと使われていますし、中国料理も青菜をはじめ野菜たっ

ぷりな料理が多いものです。日本の旅館に連泊すると、しみじみ野菜不足に陥ります。

だから、思いこみはこわいと思うのです。厚労省お薦めの一日350gの野菜摂取も、日

本では達成が難しいとか。むしろ米国の方が摂取量が上回っている状況です。これは、い

くらお上が旗をあげても、抜本的施策が欠如しているので、“ただあげてみました。それで

役割は終わりです“になってしまいそうです。

               24年4月8日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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