【第79回】 食環境の現状(58)

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食文化の豆知識 79 [食文化の現状58]

 

環境への負荷を減らす意味合いで、エコロジーの言葉が使われるようになりました。“エコ”

の通称であらゆる業種業態に浸透してきています。そのこと自体は勿論、歓迎すべきこと

で、限りある資源を守るためにも、省エネルギーで消費電力を減らしたり、ゴミを少なく

する努力は必至だと思います。ただ、エコの名さえ出せば文句はないだろう式の押しつけ

や驕慢が見え隠れするのは、いささか興ざめです。卑近な例でいえば、かつてマイ箸ブー

ムが起こりました。森を守ろう、の大合唱が世間を席巻し、外食時に店の割り箸を使わず

自分の箸を携帯する人が結構いました。それが、割り箸や爪楊枝は、いわゆる廃材利用の

優れた方法で生まれているとの認識が高まり、自然消滅しました。放置された森は荒れて

いきます。適切に間伐しなければ、息づきません。そのときに出たくず材と呼ばれる廃材

から割り箸などを作って無駄をなくしていたのです。当時から、木の香りが漂う割り箸が

大好きな私は、マイ箸など持参する気にもなれませんでした。ところが、最近になって、

バッグにマイ箸ならぬマイ割り箸を2,3本潜ませています。使い回し可能なプラスティ

ック素材の箸を用意している店が増えたからです。理由説明は、1,大事な資源の再利用

の為、2,ゴミを減らす、のいずれかです。でもちょっと待って欲しい。箸は、ナイフ&

フォーク・スプーンと異なり、それ一本でオールマイティー的要素を持ち、いわば手と一

体化して常に口に食物を運ぶ役割を担っています。そんな個人的な道具を人と共有したく

はないし、きちんと洗浄されているかも信頼できかねる店が多くあります。かつてのマイ

箸ブームが日本で起きた頃、シンガポールでは逆にインフルエンザ感染や食中毒感染を防

ぐため、使い捨て割り箸を各レストランに義務づけたと聞きます。まるで日本と逆です。

それに、ゴミを減らす、という理由ももっともらしいのですが、木素材の割り箸は、逆に

ゴミ焼却を助けると思うのですが、どうなのでしょう。燃えにくい生ゴミに割り箸が混じ

っていた方が燃えやすいだろうに、などと妄想しながら、割り箸を常にバッグにしのばせ

る日々です。エコ崇拝といえば、スーパーでもマイバッグが推奨されているようですが、

まず先に過剰包装から脱却するのが先決でしょう。少しの食材に大仰な包装を施し、無駄

なゴミを大量に提供しています。各種トレーに包装ビニールや包装プラスティックの数々、

すぐに我が家のゴミが増えてしまう。使い回し可能な箸にしても、過剰包装にしても、そ

こには真のエコロジー遵守精神は感じられません。ブームに流されることなく、真贋を見

分ける能力を身につけたいものです。

 

              24年2月1日  間島万梨子  食生活アドバイザー  

 

 

 

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