食文化の豆知識」カテゴリーアーカイブ

P&Cネットワークの間島万梨子がお届けする、食文化や食の安全をめぐる連載レポート。
旬の話題を含めて、食の大切さを綴ってまいります。

【第111回】 食環境の現状(90)

col_g_pic.gif

食文化の豆知識 111 [食文化の現状90]

朝晩は随分と凌ぎやすくなりました。これからしばらくは快適な環境の中で

外の空気を吸えそうです。といっても11月の声を聞けば北から木枯らし一号

が吹き、季節は早くも秋から冬へ移っていきます。となると家の方が快適とい

うことになります。春にしても外を歩いて気持ちがいいのは4月から二か月ほ

どでしょうか。またしても体にはきつい夏がやってきます。そうなのです。外

を歩いて皆が快適と思える時期は意外なほどに少ない。まるで日本は、1年が

亜熱帯か寒冷地かに分かれているような状況になりつつあります。だから日本

ではオープンエアの施設が馴染まない。ここが、常に温暖気候下にあるハワイ

や、厳寒期を別にすれば夏でもまずはさわやかな空気が流れるフランスやイギ

リス、ドイツなどとの違いです。これらの国はいずれもオープンカフェが良く

似合い、人々が外気の中でお茶やお酒を楽しんでいる様子をよく目にします。

確かに絵になる風景です。でも日本で導入すると、原則的に失敗します。

 

自宅から車で30分ほどの距離に、商業施設がオープンしました。数年前のこ

とです。初めて行って驚きました。オープンスタイルなのです。各店毎には勿

論専用の出入り口の扉はありますが、ゲストは各店に入るまでは外を歩かなけ

ればならない。回遊式とでも言うのでしょうか。オープン時期は確か小春日和

の11月初旬でした。大勢の人が詰めかけていましたが、一か月先が懸念され

ました。案の定、その時期には人はまばらでした。とにかく寒いのです。強い

風が回廊式の歩道を吹き抜けていきます。各店は独立型なので、まさに客は店

を出たり入ったりで、その度に寒風に身がさらされてしまう。一方、巡ってき

た夏はとにかく暑くて仕方がない。数年間で半分ほどの店が入れ替わりました。

この施設を企画した側は、日本の季節を正しく認識したうえで、オープン式を

採用したのでしょうか。大いなる疑問です。

 

その近隣に、すべての店・テナントをビル内に囲い込むスタイルの、ハイパー

マーケットとも呼ばれる超大型店があります。一年を通じて人が集まっていま

す。完全空調施設なので、過酷な季節ほどここは快適なわけです。前述のオー

プン式の施設と真逆の進路をたどりました。多少のテナントの入れ替わりはあ

るものの、常に賑わい感があります。極寒でも猛暑でも関係がありません。

店の形態やしつらえは、その地の気象特質をよく見極める必要があります。

ゲストがいかに快適に買い物ができるか、これに尽きるからです。

        平成26年10月5日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

カテゴリー: 食文化の豆知識 |

【第109回】 食環境の現状(88)

col_g_pic.gif
 

食文化の豆知識 109 [食文化の現状88]

 

お盆が近づくと、店には様々な果物が並びます。帰省用のお土産に、お盆のお

供えに、帰ってくる親族のために等々、いつもよりは贅沢な品揃えで、店頭を

飾っています。そのいずれにも関係のない輩にとっては、値が上昇するのでい

ささか不便な時期です。ま、需要と供給バランスの結果だから、仕方のないこ

とかもしれません。市場はまさに需要と供給によって成り立っています。この

密接した関係は、時として需要が供給を導く場合もあるのが面白い。ニーズが、

と言い換えた方が分かりやすいでしょう。たとえばスイカです。ここ数年、小

型のスイカが目立つようになりました。単純に、小型スイカの売れ行きがいい

ので、生産農家が大型から小型へ切り替えを図っているからです。大型スイカ

の売れ行きが伸び悩んでいるのは、井戸の減少、冷蔵庫に入らない、持って帰

るのが重い、食べ手人数が少ない、が主な理由でしょう。結果として、小型ス

イカの売れ行きが伸びるという構図です。我が家でもここ数年は、小型スイカ

にお世話になっています。三つか四つの月型にカットして、メロンのようにス

プ-ンで果肉をいただきます。これが美味しい。なぜか小型スイカは甘みがと

ても強いと感じます。買ってきて、コロンと冷蔵庫にも収まってくれます。当

分、楽しめそうです。本当に日本の果物は進化し続けています。梨も甘くなり

ましたし、ブドウも大粒の甘い種無しは優れものの味わいです。子供のころの

ブドウといえば、デラウエアかキャンベル、マスカットくらいで、甘さも今と

は段違いでした。今のブドウの甘さは素晴らしい。お値段も素晴らしい。

 

南国の果物は、独特の気象条件下で甘さを蓄えている感がありますが、日本で

育てられる果物は、生産者の努力の賜物です。しかし、残念ながら、果物の消費量は頭打ちとか。値が張るのも一因ですが、食べるのが少々面倒という側面

もあります。お菓子のようにすぐにかぶりつけないし、お腹を満たす役割はそ

れほどありません。あくまで嗜好品と、とらえられがちです。たしかに、冬の

みかんのように、夏でも手軽に安く美味しくいただける果物があればいいのに

と、かなわぬ?夢を見ています。

 

        平成26年8月5日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

カテゴリー: 食文化の豆知識 |

【第108回】 食環境の現状(87)

col_g_pic.gif

食文化の豆知識 108 [食文化の現状87]

 

蒸し暑い季節になりました。この時期になるとあっさりとしたものが食べたく

なります。それに合したかのような野菜が店頭に並びます。シソ、みょうがな

どの薬味をはじめ、ビールのつまみにぴったりの枝豆に、冷やして美味しいト

マトやきゅうり。ナスやトウモロコシも旬を迎えています。本当に夏は夏の料

理向きの野菜が豊富になるって、なんだかおかしいような、不思議なような。

でも、実は逆なのかもしれません。夏野菜を夏向きに食べる知恵を一生懸命に

人間が編み出してきたからであって、夏の料理向きに野菜が合してくれている

わけでもない?何やら、禅問答になってしまいそうです。

 

でも枝豆やトウモロコシには、夏バテを防ぐ豊富な栄養素が多く含まれている

とか。本当に季節季節の野菜には、それぞれの大切な役割があるような気がし

ます。収穫が気候に左右される由来なのでしょう。野菜の栄養は旬を迎える頃

にもっとも強くなるといいます。ホントに野菜は奥が深い。比べて肉類にはほ

とんど旬はありません。季節によって若干の肉質の変化はあっても、ほぼ一定

して店頭に並びます。野菜のような季節を感じる感動は無いけれど、安定して

供給される優れものといっていいと思います。一方、魚は潮流に乗って移動し

ますので、天然ものは季節を選びます。だから季節毎の楽しみを提供してくれ

ます。春の鰆、夏の鱧、秋の秋刀魚、冬のフグといったところでしょうか。い

ずれも美味しい!

 

今のところ、豊富に季節のものを楽しめる我が国ですが、これが未来永劫に続

くとは限りません。世界的に食糧が不足してくるのは目に見えています。世界

規模でいくと、人口は増えていきます。野菜は土地が必要なので、今まで通り

の気候が続く限り、まず心配はないと思いますが、問題は魚かもしれません。

魚はまさに国同士の取り合いになる恐れがあり、きつい漁獲国際規制がかかる

可能性もあります。いま、急がれるのは安全な養殖の増強です。2005年度

で、日本の全漁獲量のうち、養殖生産量の占める割合は21.4%とか。これ

でも随分と多くなったのです。関係者の努力の賜物に他なりません。真鯛やブ

リ、フグなどは養殖魚の方が市場を圧倒しているのは素晴らしい結果です。率

直に言って、漁業が一番近代化が遅れている分野ではないでしょうか。近海で

の乱獲の調整をも含めて、国を挙げての、取組みが急がれます。

 

        平成26年7月5日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

カテゴリー: 食文化の豆知識 |

【第107回】 食環境の現状(86)

col_g_pic.gif

 食文化の豆知識 107 [食文化の現状86]

 先日テレビで、スペインのイベリコ豚を使用した生ハムの製造過程を紹介する

番組がありました。材料は豚のモモ肉と塩のみ。塩の量と混ぜ込むタイミング、

塩抜き、それに貯蔵場所の温度・湿度管理に加えて、余分な皮や油の処理等、

材料はシンプルながら、手間暇かけた工程でした。平均15か月以上、長期熟

成させて出来上がった生ハムはまさに垂涎ものの逸品だとか。見るからに美味

しそうでした。

 

翌日、スーパーのハム売場に立っていました。日本で名の知れた大型スーパー

です。ソーセージやハムの間に、生ハムコーナーもありました。殆どが国内産

ですが、テレビで紹介されたような、豚モモ肉と塩だけで作られた生ハムは皆

無でした。ゼリーやら発色剤やらリン酸塩やらたんぱく質加水分解物やらアミ

ノ酸調味料などが入っています。添加物それぞれに役割はあるのでしょうが、

シンプルな本物の生ハムが食べたい。そして上段の一角に、豚もも肉と塩だけ

が原材料のイタリア産の生ハムを見つけました。値段は国産ものの三倍ほどし

ましたが、思い切って購入しました。少量なのでオニオンスライスで増量して?

いただきましたが、なかなかに美味で、肉の旨みたっぷりで、後味もすっきり

していました。

 

かまぼこや練り天ぷらはもともと、日本にあったものですが、ハムやベーコン、

生ハムなどの食肉加工品は外国から入ってきた食品です。それらを日本企業は、

インスタントに作る技術を駆使し、混ぜ物を入れて安価に提供できる食品に仕

立て上げました。何というテクニックでしょう。嫌味ではなく、感心します。

そのおかげで、日本人も気軽にハムサンドイッチやベーコンエッグなどを楽し

めるようになったのは確かです。

 

でも、日本の食レベルの高さが世界で認められる中にあって、そろそろ大手メ

ーカーも本物のハムや生ハムを作ってほしいものです。多少値が張っても、国

産で上質のものが手に入るなら、やはり国産ものをいただきたい。今でも、小

規模で添加物なしのハムなどを作っているところもあり、お取り寄せネットで

人気を集めているとか。国産ビールやウイスキーは世界に誇れる質の高さです。

食肉加工品も、国産の素晴らしいハムやベーコン、生ハムがスーパーに並ぶこ

とを夢見ています。

 

                  平成26年6月4日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

カテゴリー: 食文化の豆知識 |

【第106回】 食環境の現状(85)

col_g_pic.gif

 

食文化の豆知識 106 [食文化の現状85]

 

やはりというか、当然というか、昨年秋から新聞をはじめとするメディアが大

騒ぎで連日取り上げた食材偽装事件は、今や関連記事を目にし、耳にすること

が極端に減少しました。誰一人として病気にもならず、ただ、だまされた、ケ

シカランの攻撃は早々と収束してしまいました。偽装のほとんどが企業側から

の報告に基づいていたのも、さらなる攻撃を免れた遠因かもしれません。そう、

正直に?申告したのを受けて大騒ぎになったのですから。逆に、この事件は日

本人の正直さが皮肉にも発端となったと言えば、また攻撃されるでしょうか。

 

とはいっても、一連の食材偽装は、日常にどこでも起こり得る問題なのだということを、

消費者が認識できたのは重要なことです。自由経済社会においては

モノを売ることでお金が回り、市場が活性化し、景気を刺激し、企業が儲かり、

給料が上がり、よりモノが売れるという循環がうまく機能するのが理想です。

すべての景気の礎はモノが売れることなのです。だから、どの企業も総力を挙

げて自社のモノを売ろうと努力するのであって、その方法が法に触れると犯罪

になりますが、ぎりぎりOKというケースも数多くみられます。誇大広告、も

どき商品、内容のごまかしのみならず、劣悪商品としか言えないモノが堂々と

売られています。しかし、それらの中に輝く逸品を見つけることもあるのです

 

先日、うす口醤油を購入する際、いつも買っている商品が品切れなのか見当た

りませんでした。一応、特選醤油で余分な添加物も入っておらず、気に入って

いるものです。やむなく、棚に超特選の文字が記されたうす口醤油があったの

で、それを購入しました。価格は確か、1,3倍ほどで、それほど値嵩感はあ

りません。ひと月は保つので、考えれば安いものです。ヒガシマルの超特選う

す口醤油です。これは素晴らしい味と香りを持っていました。ほんの少しで、

料理の味に締りが出るのです。まさに日本の醤油でした。いつもより大切に使

うので、損はしないでしょう。

 

探せば、なかなかに良品も多いものです。飲食店もそうかもしれません。そう

いう良心的なモノは、消費者の支持だけが頼りです。キョロキョロとして、そ

んなモノをみつけるのも楽しいかしれません。

 

        平成26年5月5日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

カテゴリー: 食文化の豆知識 |

【第105回】 食環境の現状(84)

col_g_pic.gif

食文化の豆知識 105 [食文化の現状84]

 

野菜摂取の重要性が広まり、飲食店でも野菜を主役にしたメニューが出てきました。

もちろん、以前からサラダや香の物、野菜の煮つけなどの料理を提供しているところは
多く
ありましたが、あくまで肉や魚が主役の座をとっていました。今でもフレンチや

イタリアンのメインディッシュは、牛肉や豚肉、鶏肉、それに魚介類であることに
変わりはありませんが、
前菜に関しては、野菜のみを使用したメニューが目につきます。
多種多様の野菜を彩りよく皿の
上に、まるで絵を描くようにあしらった1品は、
まず目を奪い、そして体に優しく入ってきます。
メニュー名も「森の中の野菜」
「野菜フレンチ」「野菜のカーニバル」などなど、アピール力も強い。

 

野菜は決して添え物ではないことに、飲食店、特にフレンチやイタリアンレストラン
が気づき、
洒落た美しいひと皿を生み出しています。生より、むしろ蒸したり、
焼いたり、ゆでたりと、調理法
もバラエティに富んでいます。下手をすると、
和食のほうが野菜料理が少ないケースもあり
ます。寿司は大好物ですが、
野菜物はなかなか取りにくいですし、旅館の料理も魚などに
特化して、野菜量が
少ないと感じる場合が多々あります。以前訪れた料理旅館も、新鮮な
カニや魚が
これでもかと供されましたが、野菜はというと小鍋に入れる少々の白菜とねぎだけで、

アンバランスさは否めませんでした。

 

各家庭でも、野菜料理は2,3品は用意したいところですが、手間がかかって大変だ
という声を
聞きます。多種類が必要だし、調理法もさまざまだし、費用もかか
ります。そうなのです、野菜
料理は、手間もお金もかかるのです。だから、という
わけでもありませんが、食品業界はぜひ
安価で、安全な国産野菜食材を工夫した
半調理品を開発してほしい。今も目にしますが、
大体が外国産であったり、
べたつき感が残ったりと、満足度は高くありません。これからどんな
高品質野菜
半調理品が出てくるか、期待したいものです。

                

          食生活アドバイザー 間島 万梨子  2014年4月6日

 

 

カテゴリー: 食文化の豆知識 |

【第104回】 食環境の現状(83)

col_g_pic.gif

食文化の豆知識 104 [食文化の現状83]

最近は日本でも、禁煙限定の店が増えてきました。今、飲食店はスモーキングに関して三

種に分けられます。店内タバコオールOKの店。分煙式を取っている店。それと全席禁煙

の店です。また、昼夜で別のシステムの店もあって、ランチ時間に限って禁煙、という店

にも出会います。それはランチは客の回転率を高めたいので、タバコをのんびりと吸われ

ると困る、といった理由も無くはないと思われます。分煙式はきちんと換気システムを構

築しないと、煙が流れてくる場合もあります。

 

やはり日本でも大きな流れは、店内禁煙に向かっているのでしょうか。10年以上も前で

すが、タバコを吸っていた身としては、少々複雑な思いもあります。でも、タバコOK

店は入るとすぐに分かります。タバコ臭が漂っているからです。ビジネスホテルでも、禁

煙ルームが空いてなく、やむなく喫煙ルームになることがありますが、部屋全体が臭くて

眠れませんでした。吸っていたときは何とも無かったのに、いやはや勝手なものです。

 

居酒屋やバーを禁煙にするのは難しいでしょう。紫煙の全く漂っていないバーはバーじゃ

ない?愛煙家の言葉が聞こえるようです。仕事のあとの一杯を楽しむ居酒屋も、タバコOK

の店が殆どです。一方、新しい商業施設のレストラン街は終日禁煙の店が目立ちます。そ

の代わりというか、フロアーには、喫煙場所が設けられています。レストランに限らず、

電車のホームからも灰皿が消えました。飛行機は今や、すべて禁煙です。

 

ファミリーレストランのロイヤルホストが、実験的に全席禁煙の店を広げているようです。

禁煙にして後の一ヶ月で30%減った売り上げが、三ヶ月でもどり、その後は禁煙前を5%

ほど上回るそうです。客層も女性や家族連れに変わり、客単価もあがったとか。これはチ

ェーン店の中の成功例のひとつでしょう。ただ今まで喫煙OKだった飲食店が禁煙に踏み

切るのは容易いことではありません。でも新しく出店した店は分煙か禁煙のケースが多く

なり、徐々に店内禁煙の店が占める割合が増えるものと思われます。時代は逆行しないも

のです。

              平成26年3月9日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

カテゴリー: 食文化の豆知識 |

【第103回】 食環境の現状(82)

col_g_pic.gif

食文化の豆知識 103 [食文化の現状82]

 

日本上陸を果たしたアメリカ発のローストビーフ店が、着実に日本のファンを獲得してい

るようです。2008年出店の大阪店に3年ほど前に訪問しました。こんがりとロースト

された大きな固まりのプライムリブがテーブルに運ばれ、好みの焼き加減の部位を目の前

で切り分けてくれます。心憎い演出です。大きさもあらかじめ選べるので、とても便利で

あったのを覚えています。大きさは確か4段階ほどあって、その場全員がもっとも小ポー

ションのものを選びました。か細い女性達ではなかったのですが、お腹一杯になりました。

興味深かったのは、その小ポーションは本土では選択肢にないということでした。アメリ

カの顧客にとっては余りにも小さいからです。経営サイドはなかなかに賢明でした。日本

人の消化力?レベルをあらかじめリサーチした上で、本土には無いポーションを加えたの

でしょう。それは正解でした。いわゆる日本サイズ・大阪サイズというものです。

 

この地域性を考慮した提供方法は、値段にも表れます。東京で絶大な人気を誇るレストラ

ンも、大阪初出店の際には大阪価格、つまりリーズナブル価格のコースを新たに加えたと

聞きます。大阪のお客さんは価格にシビアであると。これも正解だったと思います。

先日、訪問した際には、そのリーズナブル価格のコースを頂きました。価格と内容のバラ

ンスは取れていました。それでも最終支払い額は1人1万円強でした。より高いコースは

その上に3種類あって、勿論、それらをオーダーする人もおられるはずですが、少なくと

も同行の皆が、いくら有名なレストランでも、一回の食事料金としてはこれで十分との認

識を共有したような気がします。ただ価値観は各自、微妙なものなので、違う考えの人も

いたかもしれません。

 

食事量といえば、クルーズツアーにも差異が顕著に表れます。最近、豪華クルーズを紹介

するテレビ番組が多くあり、船の巨大さや内装の豪華さ、またツアーの魅力に感心しなが

ら観ているのですが、船籍によって最も違いが出るのが、船内で提供される食事であるよ

うな気がします。つまり同じ航路を曳航する豪華客船でも、日本国籍の船の場合は、とて

も繊細な料理構造になっています。コース料理
でも、1品1品のポーションが少なめです。

これが外国船だと、まさに圧倒的なボリュームを誇る内容となります。多分、日本人客は

食べきれない場合が多いと思われます。それらをぺろりと完食される。全くもって食事量

では日本人は太刀打ちできません。最近、大食いを競う番組があり、特に華奢な日本女性

の見事な食べっぷりを見せて、それはそれで楽しいのですが、やはり日本人は他国と比べ

ると食が細い。でも結果としては、長寿国であり、食文化もハイレベルです。全体的に体

型もスマート傾向です。さて、どちらがベターか。次々に料理を美味しそうに平らげてい

く外国の、特に欧米の人達を見ていると、なかなか簡単には答えは出そうにありません。

                26年2月5日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

カテゴリー: 食文化の豆知識 |

【第101回】 食環境の現状(80)

col_g_pic.gif
 

食文化の豆知識 101 [食文化の現状80]

在阪大手ホテル・レストランチェーン下でのレストラン群に端を発した、メニュー偽装表

示問題は、他ホテルや百貨店のテナントレストラン・食品物販店にまで広がってきました。

こうなると、書く方も読む方も、そして観る方も、既視感疲れ状態です。かつての毒餃子

事件のように気の毒な犠牲者が出たわけでもなく、ただただケシカランではないか、レベ

ルでおさまりつつあります。あとは、食を提供する各企業側の徹底した自浄作業とすべて

のメニュー表示見直し、ひいては行政による適切な法整備へと向かうことになるでしょう。

振り返ってみると、今回の食材偽装・虚偽表示は殆どが、企業側の自己告知でした。とな

ると、明らかになったのは氷山の一角ではないだろうかの疑いも残る事件です。多分、半

永久的にどこかで続けられる事象なのかもしれません。それを防ぐ意味でも再発防止のた

めのしっかりとした法律が望まれます。

 

これら事件報道がやや下火になる頃に、忘年会シーズンがやってきました。街に出れば多

くのレストランは客であふれかえっています。個人的にはあまりホテル内レストランは利

用しませんが(値段だけがやけに張るように思えて)、虚偽表示があったレストランもそこ

そこ集客していることでしょう。もう偽装はないだろうとの期待も、利用者側にあるはず

です。個人的にあまり利用しないと書きましたが、ホテル内レストランにあこがれを持っ

た時期もありました。何と言っても、雰囲気の良さや接客レベルの高さが素敵でしたし、

洗練された料理も何より魅力でした。しかし、街場に個性的でハイレベルな店がどんどん

生まれ出すと、逆にホテルレストランが平凡に思われ出したのです。街場の店の方がだん

ぜん、リーズナブルで楽しくて美味しいと。今でもその思いは変わりませんが、ホテルレ

ストランを利用する人の気持ちもよく分かります。まず立地が分かりやすい、安心できる、

雰囲気がそこそこ豪華、料理にハズレがない、などなど。そうなのです。すこしは値が張

っても、リッチで優雅な非日常の雰囲気を味わえて、安心できることが、ホテルレストラ

ン利用に至る大きな理由なのだと思います。その思いを裏切った罪を、やはり深く反省し

てもらわねばなりません。街場の店が同じことをして発覚すると、閉店に追い込まれる可

能性大なのですから。< /span>

 

先日、友人と街場の日本料理店でささやかな忘年会をしました。5500円で丁寧な和食

コースを味わえるので、たまに利用しているのですが、時期的にも満席状態でした。1品

1品美味しくいただきましたが、お品書きに、車海老の野菜巻き揚げ、の記載が目に飛び

込んできました。可愛らしい女性のスタッフに、「本物の車海老?」と聞くのはやめました。

本物ならうれしいし、偽表示でも許せるかな、と思ったからです。優しすぎる消費者かも

しれません。

              25年12月8日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

カテゴリー: 食文化の豆知識 |

【第100回】 食環境の現状(79)

col_g_pic.gif

食文化の豆知識 100 [食文化の現状79]

ホテルレストランが大変なことになっています。在阪大手ホテルチェーン系列のレストラ

ン群で、メニューの誤表示や食材偽装問題が発覚してより、他ホテル系列下でも同じよう

な事象が次々と公表されだしました。新聞でも連日大きく取り上げられています。以前訪

問して気に入っていた奈良の旅館も、食材偽装が行われていたのは大きな衝撃でした。

接客をはじめとても質の高い印象が残った旅館なので、今後の誠意ある対応で顧客の信頼

を回復してほしいと願っています。今回のメニュー表示騒動は、明らかな食材偽装、例え

ばブラジル産鶏肉を国産と表示したとか、豪州産成形肉を和牛と表示したとかのケースは、

景品表示法で何らかの罰則が加えられるでしょうが、そのほかの、料理の価値を高めんと

つけられた大仰な形容詞は具体的に罪には問えないのが現状です。

 

ただ、どの業界でも、誇大表示はまかり通っているものです。その商品の効能・効果は話

し半分と理解しておいた方が賢明です。それが自由競争市場主義の宿命ともいえるでしょ

う。どこも何とか自社の商品を売りたい。結果として誇大な宣伝文句となるケースです。

前述しましたように、悪質な場合は景品表示法違反に問われます。特に医薬品や健康食品

は薬事法で厳しく取り締まられています。一般的に、外食業でのあやふやな表示に関して

は以前から指摘されていました。今回の騒動を受けて、飲食店のメニュー表示に関連する

より厳しい法律が成立するかもしれません。メニュー名如何がその料理の売れ方に影響を

与えるのが現実なので、どこも客の目を惹く魅力的なメニュー名を付けたがる。昔から通

用しているマーケティング戦略の一環です。それが度を超したというか、歯止めが利かな

くなったことが、今回の事件を引き起こしたのでしょう。

 

多分、今後大手ホテルレストランをはじめ、有名旅館などでは、具体的な食材を表した

メニュー名が著しく減る可能性があります。海老なら海老だけ。魚なら魚だけ、という風

にネーミングしておけば、全く法律には触れないわけですから。でも、味気がなくなるで

しょうし、注文する気も失せるというもので、ならば本物を出すことです。本物の和牛、本物の車海老、芝海老、本物の絞りたてジュースを、きちんと出せばいいのです。それが

本物の商売というものです。

              25年11月4日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

カテゴリー: 食文化の豆知識 |