【第108回】 食環境の現状(87)

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食文化の豆知識 108 [食文化の現状87]

 

蒸し暑い季節になりました。この時期になるとあっさりとしたものが食べたく

なります。それに合したかのような野菜が店頭に並びます。シソ、みょうがな

どの薬味をはじめ、ビールのつまみにぴったりの枝豆に、冷やして美味しいト

マトやきゅうり。ナスやトウモロコシも旬を迎えています。本当に夏は夏の料

理向きの野菜が豊富になるって、なんだかおかしいような、不思議なような。

でも、実は逆なのかもしれません。夏野菜を夏向きに食べる知恵を一生懸命に

人間が編み出してきたからであって、夏の料理向きに野菜が合してくれている

わけでもない?何やら、禅問答になってしまいそうです。

 

でも枝豆やトウモロコシには、夏バテを防ぐ豊富な栄養素が多く含まれている

とか。本当に季節季節の野菜には、それぞれの大切な役割があるような気がし

ます。収穫が気候に左右される由来なのでしょう。野菜の栄養は旬を迎える頃

にもっとも強くなるといいます。ホントに野菜は奥が深い。比べて肉類にはほ

とんど旬はありません。季節によって若干の肉質の変化はあっても、ほぼ一定

して店頭に並びます。野菜のような季節を感じる感動は無いけれど、安定して

供給される優れものといっていいと思います。一方、魚は潮流に乗って移動し

ますので、天然ものは季節を選びます。だから季節毎の楽しみを提供してくれ

ます。春の鰆、夏の鱧、秋の秋刀魚、冬のフグといったところでしょうか。い

ずれも美味しい!

 

今のところ、豊富に季節のものを楽しめる我が国ですが、これが未来永劫に続

くとは限りません。世界的に食糧が不足してくるのは目に見えています。世界

規模でいくと、人口は増えていきます。野菜は土地が必要なので、今まで通り

の気候が続く限り、まず心配はないと思いますが、問題は魚かもしれません。

魚はまさに国同士の取り合いになる恐れがあり、きつい漁獲国際規制がかかる

可能性もあります。いま、急がれるのは安全な養殖の増強です。2005年度

で、日本の全漁獲量のうち、養殖生産量の占める割合は21.4%とか。これ

でも随分と多くなったのです。関係者の努力の賜物に他なりません。真鯛やブ

リ、フグなどは養殖魚の方が市場を圧倒しているのは素晴らしい結果です。率

直に言って、漁業が一番近代化が遅れている分野ではないでしょうか。近海で

の乱獲の調整をも含めて、国を挙げての、取組みが急がれます。

 

        平成26年7月5日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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