【第130回】 食環境の現状(109) (小さい取引にもビジネス感覚を)

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食文化の豆知識130 食文化の現状109(小さい取引にもビジネス感覚を) 

日本の果物の美味しさは、世界的に見ても群を抜いていると思っていますが、最近、不愉快な経験をしました。大の果物好きなので冬ミカンのあと、美味しい不知火などの柑橘類を喜んでいただいていましたが、季節が廻りさすがに出荷薄になり、また他の果物もまだ出回らないという果物の狭間期のことです。ある店の店頭に、聞いたことの無い名前の柑橘類が売られていました。近隣農家からの出荷でした。値段は高めですが購入して、早速いただきました。どうだったか? きわめてまずいミカンでした。剥きにくく、種ばかりで、甘くなく、瑞々しさも無い。まさにいいところなしでした。このようなものは、売ってはいけないのです。出荷農家もどんなものか分かっているはずですが、売れればもっけの幸い、ということなのでしょうか。久々に頭にきました。お金をいただく商品は、価格と等価価値であるべきです。商売の基本です。気を取り直して、出回り始めたスイカをいただいて、うっぷんを晴らしました。最近のスイカは甘く皮も薄い、すぐれ品です。スイカ生産農家の努力の賜物でしょう。先のまずいミカンを高い値段で売った農家と格段の差す。生産者はやはり、誇りのもてる生産物を売る努力をしていただきたいものです。 

とはいうものの見渡せば、価格に見合わない商品が市場には出回っています。多くは、価格の価値はあるものなのですが、中には・・?という商品もあって、残念ながら、我が日本においてもすべてが信用できるというわけにもいかないようです。それでも、家電業界は品質管理面etcで優秀ですし、ビールや各種飲料も安心安全、お菓子やパンも信用できます。それらが企業としての倫理観を備えている所以ではないでしょうか。で、先のミカンの件ですが、そこに欠如していたのはビジネス感覚、つまり企業理念です。たかがミカンで、は通用しません。売る側と買う側の信頼関係なくして、ビジネスは成り立ちません。そして、どんな小さい取引でも、ビジネス感覚は必須です。誤解を恐れずに言えば、TPP成立で日本の農業が衰退すると騒ぐ前に、企業精神の熟成を急ぐべきでしょう。

                 6月4日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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