【第129回】 食環境の現状(108) (食の大切さの原点)

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食文化の豆知識 129 食文化の現状108(食の大切さの原点) 

食は人の命を支える原点です。口から食物を食べなければ人は生きていけません。様々な健康サプリメントが市場に溢れても、またいかに文明が発達しようとも、口から食べるという極めて当たり前の行為があって初めて普通に生活できるのです。体調を崩して病院に行けば、医師が必ず“食欲はありますか?”と尋ねるのも、普通に食べられることがいかに大切か、の証でしょう。まさに食は、人にとって空気を吸うように、無くてはならない行為であるがゆえに、巷間では食に関するものがあふれています。 

まずメデイア。どのチャンネルを回しても食に関する番組が流れていないことがありません。原則的な料理番組、飲食店巡り、食が中心の紀行、食材の紹介などなど、百花繚乱のごとくに溢れています。それらがなかなかに面白く、また罪も無いので観てしまうことも多いのですが、中には出演者や構成如何で、何とも下品で野卑な番組に仕上がっている場合もあり、目を背けたくなることもあります。ま、そんな番組を観なければ済む話ですが、いつからこんなに食に関する情報が飛び交うようになったのでしょうか。人は段々と贅沢になって、ただ栄養を満たす目的から、食に美味・珍しさ・量・美しさへの要求が加わり、食への欲求が高まってきたのが大きな要因だと思われます。歴史的に見ても、平和で繁栄した時代には飽食・美食の傾向が高まります。その意味では日本は今、とても恵まれた環境にあるのです。

ただ、この安定は絶対ではありません。天災はどこに住んでいても避けることはできませんし、経済の劇的な変化や国際騒乱も国の安定を脅かします。そのようなときに、命を支える食を自ら確保できるでしょうか。コンビニもスーパーもデパートも閉まった状態を想像して、どのような食生活を送れるのか。幸い日本は強い供給ルートを備えており、数日間をしのげば食料の調達は望めますが、自分で自分の食べるものを用意できる力を備えたい。幼児や子供、介護を必要とする人々以外であれば、自ら調達できるようなサバイバルを指南する番組も観てみたいものですが、それでは視聴率を稼げないとみたのか、そのような番組はみかけません。

         5月4日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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