【第37回】 [ 食環境の現状(16) ]

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日本の食料自給率の際だつ低さに関しては、その原因や対策等、新聞誌面やテレビなどでも様々に議論されていますが、どれも今ひとつ、という印象を受けます。数十年をかけて?じわりじわりと低下してきたものを、そうは簡単に引き上げることも困難でしょう。でも、食生活の和食回帰や食べ残しゴミの減少など、国民への行動提起を目にし、耳にする度に腹立たしくなります。食料自給率をここまで低下させたのは、農政の大失策であると思うからです。民間他企業の参入を拒み、大規模農業への転換政策を行わず農地税制優遇政策を取り続け、生産調整に終始してきたツケが回ってきたということでしょう。

 

和食を見直しましょう、との連呼がかまびすしい中にあって、逆に洋風の食事を奨励する声もあるのです。中高年男性の約50%に傾向があり、実際に700万人もの人が治療を受けているという高血圧症。食事療法として、塩分を控えることが肝心なのは周知の事実。和食の献立につきものの、味噌汁や漬け物、醤油、魚の一夜干し、塩鮭、たらこ、お浸し、うどん、そば等には、どれも塩分がたっぷりと入っています。

 

むしろ、洋風の食事の方が低塩分なので、脂肪をとりすぎない程度に取り入れましょうとのアドバイス。確かに一杯の味噌汁には2gの塩分がありますが、牛乳は0g。食パンはバターがあれば充分に美味しく食べられます。日本人と比べ西洋人は塩分の摂取量が半分程度といわれているのは、まさに食生活の違いからきているのです。そして、日本人の塩分摂取量は、厚労省が旗を振っても、なかなかに少なくならない。

 

日本における食の洋風化は、必然性を伴ったのです。子供の成育を助け、病弱な人の栄養補給に寄与し、高齢者の健康保持にも役立ちました。牛乳やチーズ、鶏肉や豚肉は今や食卓に欠かせない食材です。日本食の良さは当然のことながら、生活環境は変化していくものです。食も変わって当然。農政も変わって当然なのです。食生活では、食の洋風化より、むしろ加工食品の氾濫の方に危機意識を持つべきでしょう。多くの加工食品には保存性を高める目的で塩分が添加され、安価な輸入食材も多使用されています。

 

“食の洋風化”だけに、低い食料自給率の罪?をかぶせるのは、いい加減に止めて欲しいものです。

 

平成20年7月9日 記    P&Cネットワーク  間島万梨子 

 

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