【第36回】 [ 食環境の現状(15) ]

col_g_pic.gif

 外食業界の市場は、ここ数年横ばい状態が続いていますが、次々に新しい商業施設がオープンし、それに伴って新しい飲食店も登場しています。5月にも淀屋橋に都心型商業施設[淀屋橋odona(オドナ)が、オープンし、12店舗の飲食店が入っています。大阪の名店揃いのようで、楽しみです。

りんくうタウンにも、昨年新しい商業施設がオープンしました。この地は、関西空港開港時に、華々しく大規模開発されたエリアですが、その後の景気低迷のあおりを受けて、周辺地の企業誘致はスムーズとはいえません。まだまだ充実したとはいえない状態ですが、[シークル]という、この新しい商業施設の登場は、周辺地のアウトレットや大型家具店、電器店との回遊性を可能にし、人の集まるエリアとして遅まきながら息づいてきたように思います。

当然に、その施設にも、何店舗かの飲食店が入っています。何度か、足を運ぶ内にお気に入りの店も出来て、家での料理をさぼる口実が増えたと、ほくそえんでいたのですが、その中の1店舗が、早々と店じまいをしてしまいました。まだオープンして半年足らずです。ソーゼージと世界のビールが売りのレストランでした。ランチは、野菜たっぷりのスープ、パスタ、パン、コーヒーで確か780円。

しかもパンは、手作りの3種が食べ放題です。しかも美味しい。良心的でしょう?でも、アラカルトで頼んだ肝心のソーセージが、今ひとつの味わいだったので、夕食利用はしないままに終わってしまいました。

オープンするのに、どれjほどの努力や苦労があったことかと察すると、この何とも急な閉店は、心痛むものがあります。第一の原因が売上げ不振であることは自明の理でしょう。何故、売上げ予想(当然に立てていたはず)に至らなかったのか。理由は、まず店規模が大きすぎたこと、隣にパスタなどのバイキングレストランが出店していること、そしてメインであるべきソーセージの魅力が乏しかったこと、などではないかと、勝手に想像しています。つまり、飲食店にとって、間違った戦略をとってしまった。身の丈に合わない規模、周辺店との類似化(差別化の失敗)、メイン料理のコンセプトの弱さetcです。どれも重要なファクターです。

最近は、特に閉店のスピードが早いような気がします。”傷の浅い内に撤退”。確かにビジネスの定石ですが、オープン前に、売上げを担保する集客を可能にするためのマーケテイング活動が、真剣になされたのか、疑問が残るところです。客が予想より少なかった理由は、必ずあるのです。成熟市場といわれるこの業界で、店を継続するのは簡単なことではありません。

  平成20年6月10日 記    P&Cネットワーク  間島万梨子 

カテゴリー: 食文化の豆知識 パーマリンク