【第26回】 [ 食環境の現状(5) ]

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【第26回】   [ 食環境の現状(5) ]
 
“ブルータスお前もか”と言いたくなるような食品偽装事件が、またも誌面をにぎわせています。京阪神を中心に高級食材取り扱いで知られるスーパーマーケットで販売された冷凍コロッケに、偽装表示があったというのです。実際はホルスタイン種の牛ミンチを使いながら”和牛肉使用”と表示していました。明らかなJAS法違反です。このスーパーでは今年4月にも干し椎茸の産地偽装で厚労省の指導を受けています。ただ、擁護するわけではないのですが、コロッケに和牛を使用していた時期もあり、引継ぎミスによりホルスタイン種に変えた後も表示が和牛のままになってしまったと主張しており、それが事実であるならば先のミートホープ社のような悪辣さは少ないような気がします。故意なのか過失なのかの見極めは難しいところですが、1日も早く信頼を早く回復して欲しいものです。
 
2002年の雪印食品の牛肉偽装事件に端を発した一連の偽装事件は、とどまることを知らず、発覚の頻度も高くなっています。安全への関心、厚労省の監視体制強化、そして何よりも内部告発が、大きく発覚をうながしていると思われます。今後も食品偽装のさらなる発覚は覚悟しておいたほうが良さそうです。
 
食品偽装の歴史?をみるに、牛肉がらみ事件が多くを占めています。和牛と輸入牛との価格差、ブランド和牛に対する絶対的支持、などが偽装を誘発しているといっても過言ではありません。輸入牛を国産牛と偽っていた雪印食品事件は、国産牛BSE感染牛確認による国産牛買取り補助金狙いが目的でしたが、最近の偽装は輸入牛を和牛と偽ったものです。その逆はめったにありません。確かに和牛は日本人の口に合う美味しさがあります。でも品質に照らしてもあまりにかけ離れた価格差には、もっと消費者が怒る必要もあるかもしれません。末端価格の高さには、諸事情があるのはわかりますが、”何が何でも和牛ブランド”の思い入れが、価格を必要以上に押し上げている可能性は否定できません。
 
牛肉業界関連の度重なる偽装事件を完全になくすことは簡単ではありませんが、行政による監視体制の強化や、消費者の厳しい目、偽装会社への厳しい罰則等による抑制継続が必要です。そして、誤解を恐れずに言えば、牛肉価格安定のための潤沢な供給システムへの道筋を急ぐことです。
 
 
 

 

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