【第30回】 [ 食環境の現状(9) ]

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【第30回】   [ 食環境の現状(9) ]
 
様々な偽装事件が発覚している中で今度は居酒屋チェーン3社が、公正取引委員会より馬肉不当表示のかどで、関連料理の排除命令を受けました。脂を注入した馬肉の赤身肉を「霜降り馬刺し」「極トロ馬刺し」などの呼称で販売していたというのです。景品表示法違反にあたるとか。
 
白木屋などを展開するモンテローザ、酔虎伝などを展開するマルシェ、居酒屋チェーン村さ来の3社と、納入業者2社に対して排除命令が出されました。マルシェは早速、代表者等による会見を行い陳謝しました。マルシェを含む3社ともに、自社ホームページ上で謝罪文を掲載しています。内容は似たようなものですが、”業者から納入した時点ですでに「霜降り馬肉」と表示されていたものの、内実は脂を注入した馬赤肉だとは認識していた”とマルシェは謝罪会見場で認めました。知る限りでは、他の2社は今のところその点では謝罪していません。
 
このようなことは、現実には珍しいことではありません。「ネギトロ」も、本物のトロではなく、赤身を細かくしたものにサラダオイルとネギを混ぜて売っている店は少なからずあるのです。「牛サイコロステーキ」も、つなぎ肉を成型したものが堂々と販売されています。料理名に対する規制まで、法の目は及んではいないのが現実です。ある店でのボリュームたっぷりの「牛サイコロステーキ」は確か480円です。その値段で厚切り牛肉が食べられるはずもない。豪州産でも無理というものでしす。アブラガニでも「タラバガニの寿司」という料理名で売れるのです。「霜降り馬刺し」も、その延長線上でのことでしょう。でも、料理名を信じて食べる方が幸せかもしれません。または、この値段では本当は違うものなのだろうな、と納得の上で食べるかです。
 
その点で言えば、今回の公正取引委員会の処置は、飲食店を震撼させる厳しいものです。いずれ、飲食店の料理も種々規制が強まると思わせます。冗談ではなく、そのときには「ネギトロ」もどきは、どうネーミングされるのでしょう。
「牛サイコロステーキ」は、「牛つなぎ肉の固まり」に?。まさにブラックジョークの世界です。著しい過大表示は使えなくなりそうです。
 
でも、正直さが最高の美徳であるべき業界、つまり現実には偽装に満ちた業界や社会は、食品関連以外の方が多いと思いませんか。
 
 
 

 

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