【第31回】 [ 食環境の現状(10) ]

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【第31回】   [ 食環境の現状(10) ]
 

昨年ほど、「偽装」という文字を日常に目や耳にする年は無かったように思います。おかげで、「偽」は昨年のキーワードにまで出世?してしまいました。今年は是非とも「真」の重みを増していきたいものです。

 

ただ「安全」が益々注目され、重要視されてくると、またぞろ「偽」の文字が行き交うことになる可能性は大いにあります。それも結構。食に関連する業界の安全第一主義並びに衛生管理は、高邁な企業倫理の元で徹底して遵守するべきだろうと思うからです。”人の口に入れるものを売る”ということは、その人の命を預かっていることと同義なのです。

 

でも、その「安全」が金科玉条のごとくに提供側から振りかざされると、首をかしげたくなる場合もあります。ある高級ホテルのカフェでのこと。年末年始特別コースとやらは食べる気がせず、アラカルトを頼みました。通常の、コンパクトでリーズナブルなランチコースは姿を消し、ボリュームある倍ほどの価格のコースにとってかわっていたからです。やれやれ。

 

私たち二人が頼んだのは、ピザ一皿とパスタ一皿。それに人数分のミニスープ。ピザとパスタはシェアしようというわけです。妥当な注文でしょう? ところが、スープの後に配膳されたピザは優に5~6人前はありそうなビッグサイズ。メニューには、ハーフサイズの案内はありませんでした。パスタもボリュームがあり、私たちはまずパスタは頂くことにして、ピザは持ち帰ることにしました。美味しそうなチーズの香りは夕食時に家で楽しむことにしましょう。

 

残念ながら、その要望は却下されました。理由は”安全に厳しい時期なので””安全重視でございまして”まさに「安全」オンパレードです。でも、今は極寒い時期で、しかもピザですよ! 街場のレストランは、中華でもイタリアンでも、生もの以外はスムーズに持ち帰らせてくれます。そのホテルでは、万が一の食中毒発生時責任追及を恐れてか、保健所の指示か、前例がないからか、適当な持ち帰り用のケースが無かったのか、単に面倒くさいだけなのか分かりませんが、こうなると、「安全」って一体何なのでしょう。

 
こういう場合、利用者の希望に添うことで「安全」が軽視されるとは思えません。また、目の前にいるのが、馬ではなく人間だと判断出来れば、”食べきれないと存じますが”の一言は注文時に欲しいものです。そういうアドバイスを上質のレストランで、以前耳にしたことを思い出しました。
 
 
 

 

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