【第22回】 [ 食環境の現状(1) ]

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【第22回】   [ 食環境の現状(1) ]
 
スーパーマーケットやデパートで見る和牛の価格の高さに、ため息をついていたこの3月、農林水産省は、「和牛」と表示出来るのは、日本生まれで日本育ちの牛に限ると決めました。「国産」は、輸入物でも日本で育った期間が最も長ければ表示できます。一方「和牛」も、日本固有の黒毛和種、褐毛和種、日本単角種、無角和種およびこれら4品種間の交配雑種であれば、輸入物でも和牛と表示できました。ところが、これからは、黒毛和種牛であっても、輸入品はそうは記載できないことになります。今回の表示規則は、日本産のいわゆる和牛のブランド化による付加価値アップを狙うための決定と思われますが、結果としては、日本の畜産業者を守り、美味しい和牛を食べるためには消費者に高い金額を課せることになるのではと懸念されます。
 
はからずも、米国産牛肉の輸入条件緩和の見通しが立ってきました。現在、生後20ヶ月以下の牛の肉に限定している条件を、30ヶ月以下に緩和する動きが見られます。和牛と明らかに肉質が異なる豪州産牛肉と違い、米国産牛肉は和牛の種牛や遺伝子をもとに、日本人好みの美味しさを持つものが、多く飼養されています。以前に行ったある焼き肉店のこと。食通の人に紹介されたのですが、評判通り美味でジューシーで肉の旨みがとろけ出すような、絶品の肉でした。お値段もなかなかのものでしたが、皆とても満足しました。ところが最近、その店が閉店したとのこと。なんと、その店は米国産輸入肉をメインに取り扱っていたため、長引くBSEによる輸入規制に耐えきれなくなったのです。
てっきり、国産の和牛とばかり思っていました。
 
いま、米国産牛肉の輸入量は、禁止される前の10分の1程度だといいます。
よって、美味しい牛肉を食べようとすると、純国産牛100グラム1000円前後以上は覚悟しなければなりません。米国産牛肉の輸入禁止が、和牛価格をますます押し上げています。勿論安全第一ではありますが、100万頭に1頭より低い水準(米農務省)というBSE有病牛を食して、10数年後に牛海綿状脳症を発症する確率は、いかほどのものでしょうか。
日ごろより、国産にこだわっている筆者ですが、目玉の飛び出るほどの和牛の高さに、いささか辟易しているこのごろです。
 
 
 

 

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