【第23回】 [ 食環境の現状(2) ]

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【第23回】   [ 食環境の現状(2) ]
 
食品添加物がどのように使われているか、その怖さも便利さもを併せて克明に記した上で消費者の意識改革を啓発する出版物が、60万部以上を売るベストセラーになっているとか。食品添加物商社に勤務されていたという著者の臨場感あふれる記述は、安い食品を大量に作ることを第一義としがちな食品業界の裏側や、それを歓迎する消費者への警告が読み取れて、食選力の重要性を考えさせられる内容に仕上がっています。
 
はからずも最近、相反する主張を目にする機会を得ました。ある新聞の食関連記事に「このところ、無添加のアピールが目立つが、消費者の不安を背景にしたいい加減な表示は慎むべきだ。また良質な製品作りに欠かせない添加物もある。熟成ハムやソーセージに使用される亜硝酸塩は食中毒菌を抑え、風味を良くするには不可欠である・・」とあり、無添加などを強調した表示が、かえって不安や誤解を助長している側面もあるので、消費者もきちんとした知識を持って良い選択をすべきだ、という内容でした。もっともな主張ですが、亜硝酸塩のくだりが少し気になりました。ハムなどに使用される亜硝酸塩は、アミン酸を含むものと一緒に食べれば、胃の中でニトロソアミンという発ガン性の疑いがある物質が作られる可能性があることは、一般にも知られているからです。
 
そして、ハム・ソーセージ作りの二業者のホームページを見ました。有名なハム関連会社では、「亜硝酸塩は一般細菌の増殖を抑え、ポツリヌス菌の増殖も抑え、肉色素の酸化を防止し、脂肪の酸化も抑え、獣臭を消し、香ばしいハムの風味を醸し出す」と、まさに良いことづくめです。逆に、亜硝酸塩を使わずに作ったハム・ソーセージにはポツリヌス中毒のリスクがあり、欧州では発色剤(亜硝酸塩)を使わない自家製ハムなどで死者も出ている、と主張しています。
 
かたや、20年前から無添加のハム・ソーセージ作りに取り組んでいる会社。
亜硝酸塩がハム作りには欠かせないという世界の常識を乗り越え、実験を繰り返しながら無添加の製品作りに挑戦しています。新鮮で上質の黒豚肉100gを使うと70~80gのハムが作れるとか。ただ発色剤を使わないので茶色い色をしています。砂糖や香辛料のみの漬け込み液で、肉のくさみを減らし美味しく仕上げる努力を続けています。
一方、市場に出ている多くのハム・ソーセージ会社のものは、冷凍の輸入豚肉を使用し、リン酸塩などの結着剤を加え、大豆タンパクなどを増量することで肉100gから120~130g程度作れるようです。
 
いまは、安全とされる添加物も、明日には危険メッセージが出されるかもしれません。厚生労働省は万全な守り神ではあり得ないのです。
 
 
 

 

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