【第21回】 [ 食育の重要性(7) ]

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【第21回】   [ 食育の重要性(7) ]
 
手軽に楽しめる娯楽としての外食。娯楽の雄である旅行とはまた異なり、少しの時間があれば充分楽しめるのが、大きな魅力です。
需要拡大を受けて、外食は子供の世界にいたるまで日常にすっかり定着してきました。ちょっと前までは、ハレの日か、外食慣れしている大人が利用してきた寿司店。いまでは回転寿司店が軒を連ね、多くの日本人の食生活にとけ込んでいます。ちょっと気を張って寿司店ののれんをくぐる。子供などは連れて行ってもらえない。そんな寿司のイメージを見事に大衆化したのは、回転寿司店の手柄?ではありますが、なんだか、食文化そのものが、味気なくなってしまったように感じませんか?
 
好きなときに、好きなだけ食べられる。しかもそこそこの値段で。これが、回転寿司店の人気の理由でしょう。“好きなだけ食べられる”、は、他に、バイキング形式や焼き肉食べ放題手法などを増長させてきました。かつての高級な料理が、雨あられのように落ちてきて、大衆化の形となって食卓を豊かにうるおしています。それらを拒否するものではありません。回転寿司も、市場に登場した頃と比べるとずいぶんと品質もアップし、専門店にひけをとらないネタ揃いも珍しくありません。競合店が多くなり、差別化が必要となったためでしょう。歓迎すべきことです。
 
でも、回転寿司に馴染んだ子供が大人になった時、ちょっと小粋で、板前が“今日はいい○○が入ってますよ。にぎりましょうか”と声をかけてくれる専門店に、果たして自分の金で行くのでしょうか。そこには、大人だけが味わえる、ちょっと緊張する空気が流れる。客と板前のコミュニケーションが、料理に香り付けをしてくれるのです。その極上の食を楽しめるのでしょうか。
 
好きなだけ食べる、という食べ方が、大きなうねりとなっているようです。
あるホテルのランチバイキング。大人3500円で、何と100種類以上の料理が食べ放題。開店前に人が列をなしていました。確かに、好きなだけ食べられる。そこでは、上質なものを丁寧なサービスで味わうといった、落ち着いた雰囲気は望めません。でも、“好きなだけ食べられる。そこそこの値段で”。
そのうち、フランス料理食べ放題、ふぐ食べ放題の店も冗談ではなく登場しそうです。はじめは、ちょっとうれしいかもしれません。
 
食生活は、時代によって変化していくのは当然です。でも、継承していくべき食習慣は歴然とあるのです。食文化とは、食材に対する敬意と、作ってくれた人に対する感謝から、生まれるものではないでしょうか。
 
 
 

 

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