食文化の豆知識」カテゴリーアーカイブ

P&Cネットワークの間島万梨子がお届けする、食文化や食の安全をめぐる連載レポート。
旬の話題を含めて、食の大切さを綴ってまいります。

【第121回】 食環境の現状(100)野菜の摂取量

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食文化の豆知識 121 食文化の現状100(野菜の摂取量)

ある雑誌に“肉よりも野菜の方が安いので、もっと野菜を食べましょう”という広告が載っていました。厚労省が推奨する“一日野菜350g”にほど遠い現実をかんがみ、野菜摂取を喚起しようとする試みが盛んに行われています。日本人の野菜・果物摂取量は、自分たちが思うほどには高くないのです。平成22年の統計では平均268g。昭和60年からは20%も減少しています。一番摂取量が高い60歳代でも319gと、目標には及びません。また世界177か国の平均225gを上回ってはいますが、肥満大国アメリカの350gにも遅れを取っています。中国・イタリアなどは群を抜いて高い摂取量を誇っています。 

なぜ、日本で野菜・果物の摂取量がなかなか望ましい量に達しないのか。複合 要因があり、そのひとつに勘違いがあるようです。もともと和食は野菜重視のはずでは?そうでしょうか?確かに、野菜の煮つけ・お浸し・酢の物と、野菜料理は目白押しです。野菜の種類も多い。しかし和食の原型である一汁三菜的な料理を日常に食べている人がどれだけいるでしょう。また多くの人が好む麺類に、一体どれだけの野菜が入っているか。せいぜいがネギ・シイタケあたりではないでしょうか。ラーメンでもモヤシ・ネギあたりです。料理自慢の宿の食事も、刺身や焼き魚があっても、野菜が十分に供されるところは多くはありません。なぜか?野菜は値段が張るし、保存も利きにくく、料理にも手間がかかるからです。そう、様々な理由が見えてきました。 

気候に左右される野菜は、肉類と比べて極めて相場変動幅が大きい食材です。つまり価格が安定しにくく、取り扱いにくい食材であるということです。次に日本では新鮮の一字が輝きすぎて、野菜の様々な保存形態が遅れています。野菜の缶詰めはどれほどあるでしょう。コンビニ弁当やファストフード、お惣菜利用の増加も野菜不足の一因です。どう考えても、それらに十分な野菜が入っているとは思えません。かといって便利さには勝てないのは無理もありません。野菜摂取量を増やすのも一筋縄ではいかないようです。 

ここで、あまり取りざたされていない、もうひとつの理由が浮かんできました。日本人の食の細さです。イタリア人やアメリカ人の一日総食事摂取量と比べると、日本人のそれはかなり少ないのは想像に難くない。とすると、当然にその中に占める野菜の量も少なくならざるを得ないわけです。野菜を大量に食べるとお腹いっぱいになってしまって、お肉や魚などが十分に食べられなくなります。厚労省も1日350gとのうたい文句に固執せず、日本人の総食事摂取量における配分、というとらえ方で野菜摂取基準を考えてもいいかもしれません。

        平成27年9月3日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第120回】 食環境の現状(99)専門店化へ

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食文化の豆知識 120 食文化の現状99(専門店化へ) 

雑然とした書類棚を整理していると、15年前の新聞の切り抜きが出てきました。飲食店のトレンドに関する記事です。その中には、水が店内を流れたり、奇をてらった内装で話題を集めている数店舗を、流行の先端を行く店として、好意的に紹介していました。いわゆる趣向を凝らした内装で、すべて創作料理を提供している店でした。和洋中をミックスした折衷料理や、斬新な味付けと意外な食材の組み合わせから生み出された料理が人気を博しているとか。15年後、それらの店はほとんどが姿を消していました。時代が生んだあだ花といったら、言い過ぎでしょうか。 

そして今、飲食店は普遍的かつ地道な路線の時代にあるようです。わかりやすい料理と清潔で落ち着ける内装、それに見合った価格、の三本柱が重視される時代といえるかもしれません。フレンドリーな接客が加われば、鬼に金棒です。わけのわからない料理をありがたがる層から、堅実さをよしとする層へ移行したように思います。個人的には大歓迎です。この傾向は、日本の食文化が世界から注目され支持されだしたことも、後押ししています。やはり、本家本元ではきちんとしたわかりやすい料理を提供したいということでしょうか。加えて、各飲食店がより専門店化してきました。鶏料理なら上質な地鶏料理へ特化する。うどんならコシのある讃岐うどん、コーヒーなら深い味わいのものへ、魚料理なら港直送の新鮮な魚介類を、そして肉ならブランド牛を。飲食店の原点復帰が見られます。伝統回帰ともいえるでしょう。食も時代と共に変化して当然で、これから新たな食材や料理が現れる可能性も大いにありますが、もうかつての、フュージョン料理がもてはやされた時代に戻ることは無いように思います。キーワードは堅実・わかりやすさ、それに安全です。

 平成27年8月8日 間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第119回】 食環境の現状(98)果物の摂取量の少なさ

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食文化の豆知識 119 食文化の現状98(果物の摂取量の少なさ) 

 

食と健康との因果関係を啓発する動きは、永遠?に続きそうです。古くは紅茶

キノコから始まり、ココアやトマト、バナナへと続き、今はコーヒーにまぶし

い光が当てられました。一日に3杯以上コーヒーを飲む人は、糖尿病を発症し

にくいとか。がん予防にもいいという論もあるようです。コーヒーは朝にたっ

ぷりといただきますが、それ以外は飲みません。なぜか、覿面に夜の寝つきが

悪くなるからです。ですので残念ながら、その絶大な効能にあやかれません。

食べ過ぎず、飲み過ぎず、甘いものは控えめにして、適度に体を動かしている

ほかはなさそうです。それが難しいのですが。

 

今までに出た様々な話題食材でいえば、紅茶キノコなるものは口にしたことが

ありませんし、ココアはめったに飲みません。でも、トマト、バナナは毎日い

ただいているから大丈夫、帳尻があうかもしれません。何だか馬鹿馬鹿しくな

ってきました。ひとつの食材の効能をひたすらに持ち上げる風潮には、いい加

減愛想がつきそうです。そんな中にあっても、健康維持のためにミネラルやビ

タミンが豊富な野菜や果物の摂取を勧める論調には、それはそうだろうな、と

納得しきりです。しかし、現在の日本人の果物の摂取量は1日100g程度で、

先進国では最下位、米国の半分以下だとか。果物摂取量が少なすぎる、との指

摘は複雑な思いと共にうなずくしかありません。というのは、野菜嫌いは結構

いても、果物嫌いの人は少ないのではないかと思うからです。結局、摂取量の

低さの大きな理由は、価格の高さと皮むきなどの面倒さではないのかと。日本

の果物の美味しさは世界に誇れるレベルだけれど、価格もそこそこします。旬

の果物を安く購入するのにもそれなりの予算が必要です。やはり小規模果物農

家が多いからなのでしょうか。または生産にとても手がかかるから? 外国の

安い果物輸入は関税の高さが弊害となっているから?

 

どれも理由に当てはまりそうですが、若年世代がもっとも果物を摂取していな

い現実に直面するとき、なにがしかの方策が求められてしかるべきしょう。

コメは日本にとってもっとも重要な食材ですが、極小農地や点在する休耕田を

コメ以外の生産に利用するか、また荒れ果てた山林を果樹園として蘇らせる大

きな戦略があってもいい。それと適正な価格操作にも行政が踏み込むだけの魅

力が果物にはあると思うのです。誰もが十分に楽しめる供給量と買いやすい価

格で果物が店頭に並ぶ時代が来てほしいものです。

 

        平成27年6月7日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第118回】 食環境の現状(97)過剰包装のゴミ化

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食文化の豆知識 118 [食文化の現状97 過剰包装のゴミ化]

 

今や環境問題はどの業界でも重視され、まさにエコ流行りとも揶揄したくなる

ほどの浸透ぶりです。自動車・家電製品・電気etc、それぞれ表出の形は変わ

れど「空気を汚さない、省エネ、自然エネルギー採用」といった環境への配慮

で足並みを揃えています。歓迎すべき状況で、その傾向には大賛成です。一方

で、ゴミ排出量は増え続けています。家庭ゴミを減らすためのアドバイス本や

新聞誌上での論調もよく見かけます。まずは消費者の慧眼から始めるのが手っ

取り早い?からでしょうか。しかし消費者は使用する側なので、ゴミの環境問

題への参加は、ゴミを減らす、ムダを減らす、が精一杯の貢献ですが、ゴミと

なるものを提供しているのはまぎれもなく売り手側なのです。

 

最近、エコバッグと称する買い物袋持参を呼びかけるスーパーが増えてきまし

た。これも環境への配慮の一環でしょうか。最初はレジ袋くらいケチらなくて

もいいのにと、少々納得がいきませんでしたが、ご時勢にはさからえません。

今はいつもマイ袋をバッグにしのばせています。でも、そのスーパーの売り場

には、家庭ゴミの元があふれかえっているのです。大量に家庭で発生するプラ

スティックゴミは、ほとんどがスーパーなどで売られている商品の包装なので

すから皮肉なものです。店で売り方を采配できる野菜や果物も、小分けに包装

して売られています。ナスビ2本がセロハン袋に、トマト3個がセロハン袋に、

ホウレン草もセロハン袋に、キュウリ3本も、レンコンも、玉ねぎも・・・。

このプラスティックは再利用しにくく、捨てるほかはありません。大量のゴミ

の発生です。


 

何故、量り売りへチェンジできないのでしょうか。かつてはそれが当たり前で

した。売り手側の効率化?が進み、われわれは一体どれだけの包装を捨て去り

ながら日々を暮しているのでしょう。と、ここで、ドイツで昨年秋に「完全無

包装」のスーパーが開業したとの記事が目に入ってきました。何でも、二人の

女性が、買い物でどれだけのゴミが出るかを話しているうちに、包装を一切省

いた店を作るアイデアがひらめいてオープンしたとか。店内は、野菜・果物・

菓子類・パスタ・米・香辛料にいたるまで、すべて量り売り式になっているそ

うです。そしてその店は反響を呼び、2号店をオープンするほか、フランチャ

イズ方式の展開も検討しているとか。量り売りのシステム詳細も記載されてい

ましたが、日本でもすこし方法を変えれば十分可能だと思いました。多分、出

来ない理由はわんさか出てくるでしょうが、可能です。この方式がわが国でも

広がっていってほしいものです。

     平成27年5月4日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第117回】 食環境の現状(96)高級品の登場

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食文化の豆知識 117 [食文化の現状96 高級品の登場]

備蓄食品として何種類かの缶詰めは常備しているものの、日常的に食卓を
飾る
ほどの存在感は無い、というのが缶詰めに対する一般的な評価でしょうか。
が家でもツナ缶やコーン缶などはまずまずの頻度でサラダ料理の材料に
使用し
ていますが、それ以外は余り登場しません。焼き鳥缶や魚缶はどうしても
味付
けが濃くなりがちだし、カニ缶を除いては安価ではあるものの、素材の魅力
欠けるという先入観があります。 

ところが先日、超大手スーパーの缶詰め売り場を見て、吃驚しました。品揃え

の豊富さもさることながら、高級缶詰めコーナーが登場していたからです。

牡蠣のオリーブ漬け、希少地鶏の香草焼き、ムール貝のガーリック炒め、ホタ

テのバター炒め、鴨のくんせい風etc、ほとんどが国内産で、一缶が500円

から1000円ほどの価格で並んでいました。なじみのあるサバ缶やいわし缶、

さんま缶と比べても3~4倍の値付けです、でも、いかにも美味しそうにパッ

ケージされたそれは高級感にあふれ、食べてみたいと思わせる訴求力にあふれ

ていました。簡単にちょっと贅沢な味わいを、というアピールです。

 

試しに購入した二個の高級?缶詰めはまだ食品庫に置いたままなので、ここで

価格並みの値打ちがあるかどうかを申し上げることができませんが、缶詰め高

級品の登場自体がこれからの市場を予見しているように思うのです。この傾向

はますます加速するでしょう。高齢者だけの少数家族の増加と、豊かな食への

飽くなき欲求を持つ層の誕生が、こういった高級品消費を支えていくだろうか

らです。今までも、フグ、神戸牛、ズワイガニ等、高級食材は市場に数々あり

ます。でも、庶民の味方ともいうべき缶詰め食品にこういった高級品が参入し

たことは、まだまだ色々な商品に価格差が広がっていくはずです。選択肢の広

さは単純に歓迎すべきですが、どこに自分の身の丈の軸を置くかが大切になっ

てきそうです。        

平成27年4月3日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第116回】 食環境の現状(95)食の潔さ

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 食文化の豆知識 116 [食文化の現状95 食の潔さ]

我が家のテレビの調子が悪くなりました。まだ、アナログからデジタルへの移

行前でしたが、九年前に思い切って購入した大型デジタルテレビです。きっち

り、十年ほどで故障してくれました。家電メーカーの巧みな戦略に感心しきり

です。家電は使い方や頻度次第で耐久年数も異なるようですが、大体が十年を

節目にガタがくるようになっています。自由市場経済社会は、買い替え需要な

しには成り立ちにくいのは理解できますが、それにしても何と律儀な。

 

そう言えば、前に使っていたパソコンは購入後五年半で画面が真っ暗になり、

修理に出しました。修理代金にすこし上乗せすれば新品が買えますよ、と言わ

れましたが、そうはメーカーの思い通りになるものかと、高い修理代金を支払

いました。その後三年ほどで、ウインドウズXPがマイクロソフトのサービス

範囲外になるというので、ウインドウズ8.1に買い替えを余儀なくされまし

た。本当に、あの手この手で消費者にお金を使わせるようになっているものだ

と、呆れるほかはありません。一生壊れないものを作り出す、熟練の日本の職

人さんの爪のあかでも煎じて飲んでほしい、とこれはごまめの歯ぎしりですが。

 

単に比較できないかもしれませんが、食を提供する飲食店は何と潔い?ビジネ

スだろうかと思います。一杯五百円のラーメンでも、二万円のコース料理でも、

五,六時間経てば平等にお腹が空いてきます。消化され跡形も無くなるものを

売っているのですから、現物は残りません。ただ記憶と満足度が残るのみです。

利用者の懐具合と食への好みが消費の主導権を握るのであって、売り手の仕事

は満足してもらうものを一生懸命に提供することに尽きるのです。そこに強欲さが見え隠れすれば、当然にお客の足は遠のきますから、日々努力が必要です。

こわれかけたテレビと調子の悪くなった洗濯機!を前にして、食ビジネスの

単純かつ潔い儲け方をうれしく思いました。

        

平成27年3月5日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第115回】 食環境の現状(94)現代の豊かさ

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食文化の豆知識 115 [食文化の現状94 現代の豊かさ]

 

昔を懐かしむ声は、いつの時代でもあるものです。特に昭和は、今でももっとも人口比率が高い団塊世代が青春の真っただ中を生きた時代なので、昭和レトロとして根強い人気を誇っています。映画も昭和を扱ったものは、安定した興行成績が得られるようです。何といっても団塊世代が懐かしがって観にきてくれるからです。歌も昭和の流行曲はすたれることなく歌い継がれています。確かに、多くの人が中流意識を持ち、物資には恵まれなくても、連帯感に満ちていました。その頃を懐かしむ気持ちはよくわかります。でも、昔はよかったの連呼には、多少の違和感を覚えます。

 

道徳や情緒面の劣化を危惧する声もあります。これは一部、同意する面もありますが、マナーや衛生面では今の方が断然、優れています。特に水回りに関しては、昭和になど戻りたくもありません。乗り物もそうです。ばい煙をまき散らしながら走る蒸気機関車は、髪の中に黒い煤のようなものが入り込んで大変でした。今の新幹線や各路線電車の快適さには、関係各社に頭が下がります。

 

食事もそうです。高血圧や肥満などの生活習慣病が増えると、決まって和食回帰が叫ばれます。“健康の源である伝統的な日本食を食べましょう”の声は色々な媒体から聞こえてきます。でもちょっと待ってほしい。日本食を形成する食材で、今や日本だけでまかなえる食材はコメだけではないのかと。魚介類も輸入物なくしてスーパーマーケットの売り場は埋まりません。醤油味噌、豆腐、納豆の主原料である大豆や小麦の自給率は食料品需要でわずか10%台。多くを輸入に頼っています。また、昔の食事スタイルが健康に貢献していたとみるのも早計です。塩摂取過剰、栄養不良、栄養失調がもたらす弊害は現在の比ではありません。現在の日本の食の豊かさに感謝して、食べ過ぎと偏りにさえ気を付ければ、昔よりはるかに健康的でいられます。

 

昭和を思い出すとき、懐かしい場面、懐かしい体験が湧き出てきます。今と比べると格段に不便だったのに、昭和の時代の方が今より不平不満が少なかったような気がするのは、何故なのか、ポイントはそこにありそうです。

 

  平成27年2月5日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第114回】 食環境の現状(93)生鮮品の価格

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 食文化の豆知識 114 [食文化の現状93]

年末年始は、モノの値段が高めになります。需要が供給を上回るのに加え、やはりこの時期は、贅沢志向で消費者の財布がゆるくなるのを見越してのことでしょう。特に肉、魚、加工品などは正月用の高級品が店頭を飾り、それはそれでひとつの風景として華やかさを提供していますが、中身は全く変わらない野

菜もかなりの高め推移で売られているのには苦笑を禁じえません。時期柄、供給量が需要に追い付かないからか、多少値上げしても買ってもらえるはずという思惑からか、日常の1,5倍から2倍の値段で売られています。かまぼこや肉類、魚が見るからにいつもより上質で豪華なのに対して野菜は普段と全く同じ顔なのにと思いますが、これもご祝儀のひとつなのかもしれません。

 

さて、ここ何か月かの間に、食品の値上げが目につきはじめました。特にバターやチーズなどの乳製品の値上げラッシュはすさまじい。小麦粉を原料とする食材もじわりじわりと値を上げています。これらは円安がストップすれば価格が戻るのか、値上げのままに定着してしまうのか、さっぱり予想がつきません

が、これからは家計防衛の知恵が特に必要になりそうです。そこで、乾物料理のおすすめです。切干大根や高野豆腐やはるさめは、安定価格の優等生です。これらを煮つけたり、あえものにすると立派な1品です。また缶詰めも調理の仕方で、なかなかに美味しい1皿になります。豆腐や厚揚げも家計の味方にし

て、栄養があり旨みのある食材です。それら優等生食材を取り入れる頻度を増やして、値上げラッシュに備えたいものです。

 

本当に、生鮮品の値段は上がったり下がったりで、落ち着くことが少ないモノのひとつです。それが自由市場主義の特質と言われれば、納得せざるを得ないのでしょうが、昨今の衣類や家電の安定した低価格とは対極にある動きです。やはり、来るべき消費税増税にあたっては、生鮮品などへの軽減税率を是非と

も導入してほしいものです。

 

  平成27年1月7日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第113回】 食環境の現状(92)

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 ■持ち帰りの習慣化

食文化の豆知識 113 [食文化の現状92]

 

街は早くも歳末商戦。飲食店も忘年会需要で書き入れどき真っ盛りです。やは

り年の終わりは、反省会?をかねて、気の合う仲間などと宴を囲みたいもので

すが、食べ残し料理が増えるのもこの時期。これらは、いわば残飯として廃棄

され、立派な食品ロスとなるわけです。年間500~800万トンにも及ぶと

される、家庭や外食産業や施設などから排出される食品ロス。企業内でも食品

ロスの減少に向けて様々な試みが活発化されてきていますが、消費者としても

ささやかながらも、貢献できることがあります。まず、食べ切ることが大切で、

そのためには過剰に注文しないことがあげられますが、宴会の場合はどうして

も量が多めになるものです。そこで食べ切れなかった料理を持ち帰ろうという

ものです。ドギーバッグの習慣化です。

 

数年前の、ある有名ホテル直営レストランでの出来事を思い出しました。女性

二人で訪問したので、パスタとピザを各1品、それに前菜を1品注文しました。

適切なオーダーであったはずなのですが、最初に出されたパスタは優に二人前

もあり、ピザは超ビッグ。メニューにはサイズやボリュームの明記はありませ

んでした。時は極寒の真冬です。そこでいい考えが浮かびました。ピザは家に

持ち帰って、夜食にしよう!ところが、その希望は店側の拒否にあい、実現し

ませんでした。店の言い分は、①持ち帰りはできないことになっております

②保健所の指導がありますので③痛むと困りますので、でした。バカバカしく

なって引き下がりましたが、料理の持ち帰りに関しては、保健所はノールール

です。要するに店側としては、単に面倒だったのでしょう。

 

そして今、徐々にですが、店・客双方に、持ち帰り体制への理解が増してきて

いるようです。考えれば、注文したものは客のものです。持ち帰ろうが食べ残

そうが客の自由のはずで、持ち帰りがごく普通の習慣になってもおかしくあり

ません。ただそれには、早目に食べる、傷んでいるようなら捨てる、という消

費者の自己責任が重要で、その意識が浸透すれば、店側も持ち帰りに積極的に

なり、当たり前の習慣として根付いてくるでしょう。

 

        平成26年12月8日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第112回】 食環境の現状(91)

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食文化の豆知識 112 [食文化の現状91]

 

今でも高い人気を誇る国民的漫画「サザエさん」ですが、30年ほど前のもの

を見て驚きました。デパートや店での過剰包装を風刺する内容だったからです。

何とそんな時代にすでに、日本における過度な包装が問題視されていたのです。

しかしながら、その問題提起が実を結ぶどころか、今も至るところで過剰包装

が溢れています。包装紙は言うに及ばず、トレイ、ビニール、箱に包まれた商

品に囲まれています。お菓子などは衛生上、完全包装が望ましいですが、果た

して本当に必要なのかと思うものまで、包装されて売り場に並んでいます。

魚や肉に加えて、果物や野菜なども丁寧に包まれています。これは日本独特の

形ではないでしょうか。丁寧でコンパクト。そして包装に係る企業もそれで事

業として成り立つことが出来るわけですが、結果として、最終消費者が支払う

価格に包装実費代がオンされるわけです。

 

なぜ、野菜や果物を量り売りにしないのでしょう。重さで価格を決めれば済む

ことです。レジが煩雑になる?言訳がすぐに聞こえてきそうですが、諸外国で

は原則量り売りが基本です。先進国でも、日本のような1個当たりの値付けや、

パック売りの野菜はあまり見かけません。それぞれが陳列台に山積みされ、キ

ロ当たりやポンドあたりの金額が提示されているだけで、必要な分を取って、

レジで精算してもらうシステムです。確かに、理に適っています。重さ価格な

ので大きさの損得は関係なく、小さいものも大きいものも、選ぶ側次第で平等

に売れていくはずです。包装も必要ありませんから、省エネにもなります。

 

日頃から、省エネ、節電を叫ぶ割にしては、ゴミに出るもの自体が多すぎると、

いつも感じています。プラスチックゴミの多くをラップなどの包装関係が占め

ます。前述したように、包装関連グッズに携わる会社の生存がかかっていると

いう見方もあるでしょうが、やはり時代のニーズは変化していくものです。

消費者に省エネ、ゴミ減少、節電を強いるより前に、提供側の意識向上と啓蒙

も大切ではないかと思うのです。

 

        平成26年11月4日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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