【第116回】 食環境の現状(95)食の潔さ

col_g_pic.gif
 食文化の豆知識 116 [食文化の現状95 食の潔さ]

我が家のテレビの調子が悪くなりました。まだ、アナログからデジタルへの移

行前でしたが、九年前に思い切って購入した大型デジタルテレビです。きっち

り、十年ほどで故障してくれました。家電メーカーの巧みな戦略に感心しきり

です。家電は使い方や頻度次第で耐久年数も異なるようですが、大体が十年を

節目にガタがくるようになっています。自由市場経済社会は、買い替え需要な

しには成り立ちにくいのは理解できますが、それにしても何と律儀な。

 

そう言えば、前に使っていたパソコンは購入後五年半で画面が真っ暗になり、

修理に出しました。修理代金にすこし上乗せすれば新品が買えますよ、と言わ

れましたが、そうはメーカーの思い通りになるものかと、高い修理代金を支払

いました。その後三年ほどで、ウインドウズXPがマイクロソフトのサービス

範囲外になるというので、ウインドウズ8.1に買い替えを余儀なくされまし

た。本当に、あの手この手で消費者にお金を使わせるようになっているものだ

と、呆れるほかはありません。一生壊れないものを作り出す、熟練の日本の職

人さんの爪のあかでも煎じて飲んでほしい、とこれはごまめの歯ぎしりですが。

 

単に比較できないかもしれませんが、食を提供する飲食店は何と潔い?ビジネ

スだろうかと思います。一杯五百円のラーメンでも、二万円のコース料理でも、

五,六時間経てば平等にお腹が空いてきます。消化され跡形も無くなるものを

売っているのですから、現物は残りません。ただ記憶と満足度が残るのみです。

利用者の懐具合と食への好みが消費の主導権を握るのであって、売り手の仕事

は満足してもらうものを一生懸命に提供することに尽きるのです。そこに強欲さが見え隠れすれば、当然にお客の足は遠のきますから、日々努力が必要です。

こわれかけたテレビと調子の悪くなった洗濯機!を前にして、食ビジネスの

単純かつ潔い儲け方をうれしく思いました。

        

平成27年3月5日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

カテゴリー: 食文化の豆知識 パーマリンク