【第120回】 食環境の現状(99)専門店化へ

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食文化の豆知識 120 食文化の現状99(専門店化へ) 

雑然とした書類棚を整理していると、15年前の新聞の切り抜きが出てきました。飲食店のトレンドに関する記事です。その中には、水が店内を流れたり、奇をてらった内装で話題を集めている数店舗を、流行の先端を行く店として、好意的に紹介していました。いわゆる趣向を凝らした内装で、すべて創作料理を提供している店でした。和洋中をミックスした折衷料理や、斬新な味付けと意外な食材の組み合わせから生み出された料理が人気を博しているとか。15年後、それらの店はほとんどが姿を消していました。時代が生んだあだ花といったら、言い過ぎでしょうか。 

そして今、飲食店は普遍的かつ地道な路線の時代にあるようです。わかりやすい料理と清潔で落ち着ける内装、それに見合った価格、の三本柱が重視される時代といえるかもしれません。フレンドリーな接客が加われば、鬼に金棒です。わけのわからない料理をありがたがる層から、堅実さをよしとする層へ移行したように思います。個人的には大歓迎です。この傾向は、日本の食文化が世界から注目され支持されだしたことも、後押ししています。やはり、本家本元ではきちんとしたわかりやすい料理を提供したいということでしょうか。加えて、各飲食店がより専門店化してきました。鶏料理なら上質な地鶏料理へ特化する。うどんならコシのある讃岐うどん、コーヒーなら深い味わいのものへ、魚料理なら港直送の新鮮な魚介類を、そして肉ならブランド牛を。飲食店の原点復帰が見られます。伝統回帰ともいえるでしょう。食も時代と共に変化して当然で、これから新たな食材や料理が現れる可能性も大いにありますが、もうかつての、フュージョン料理がもてはやされた時代に戻ることは無いように思います。キーワードは堅実・わかりやすさ、それに安全です。

 平成27年8月8日 間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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