【第41回】 [ 食環境の現状(20) ]

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先進国の中でも際だって低い我が国の食料自給率を巡っては、様々な意見や提言、

またここまでの低下を許した犯人捜しなど、かまびすしい主義主張の氾濫を招いて

います。そして、新聞・テレビなどで、たびたび目にし、耳にするのは“食の洋風化”に

自給率低下の最大の罪?を負わせる「識者」の声です。その後に聞こえてくるのは

“日本食の良さを見直そう”の大合唱です。日本食とは、ご飯、みそ汁、野菜の炊き合

わせ、魚の煮付け、納豆、冷や奴、あたりを指すのですか?ハンバーグやカレーライス、

焼き肉などは、洋風化によって生まれた料理なのでしょうか?

 

何か反論があるのか、とも言いたげな、得意満面の大合唱を聞くにつけ、彼らの幼児性

に辟易としていました。“食の洋風化”の言葉自体に偽善を感じるからです。

牛乳などの乳製品の需要増大を指すのか、畜肉の需要増大を指すのか、パンの需要

増大を指すのか。もしそうなら、食の洋風化は、まさに国民の体格を増進させ、健康の

保持に貢献する重要な役割を果たしてきたのです。問題は、国民の健康のため

避けるべきではない“食の洋風化”のための原材料確保を、安易に他国に依存してきたと

いうことです。行政の怠慢と戦略の見誤りの罪は大きいと言わざるを得ません。いわゆる

価格調整・生産調整が、日本の農業を振り回してきたのです。

 

自給率を巡る不毛のメデイア論争の中、やっとまともな戦略が打って出されました。

石破農林水産大臣が、食料自給率を10年後に現在の40%から50%に引き上げるため

工程表を発表したのです。そこには、企業の農地賃借規制の緩和や、パンなどの原材料

として需要が見込まれる米粉の生産量の拡大、飼料米の生産拡大、小麦や乳製品の増産

が、盛り込まれています。約38万ヘクタールの耕作放棄地の有効利用を促すための方策

も盛り込まれているようです。「自作農主義」を中心とした1952年制定の農地法を、56年 

ぶりに改正しようというものです。ただ結構、時間のかかる行程が待っています。

農地法改正案は来年の通常国会に提出される予定です。

 

総論賛成でも各論反対。大きな改正が望まれる時に必ず発生する、既得権益に引きずられる

反対論に猶予しないでほしいと思います。大きな改正は具体化が難しいものですが、

今こそ政治主導で未来のために、思い切った農政転換を図ってもらいたいものです。

 

 

平成20年12月9日 P&Cネットワーク 間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

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