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顧客満足の複雑さ 178(飲食店の矜持)

      顧客満足の複雑さ178「飲食店の矜持」 

外国人観光客からの「日本は静かだ」の感想をSNSなどで見ることが多い。電車内や公共の場での静けさに驚いたとの投稿には、その状態を高評価している向きが伺える。そこには車のクラクション音もめったに鳴らないことへの賛辞も加わる。勿論、褒められて悪い気はしないが、本当に日本は静かなのか?と首をかしげることを最近二度も経験した。どちらも飲食店内でのことだ。いわゆる大衆店ではなく、客単価8千円~1万円前後の本来なら落ち着いたレベルの店で、絶叫ともいうべき大声が店内に響くという、なんともストレスフルな経験をした。二店の騒音絶叫の元には四つの共通点があった。まず6名~8名の男女混合グループであること、見るからにビジネス客グループであること、年齢層は若年~中年層であること、そしてグループの中に関西以外からの客がいた、ということだ。これは大声を聞けばわかる。いわゆる出張客なのだろうか。ビジネスでも旅の恥はかき捨て、が、まかり通るらしい。

 コロナの第5類移行に伴ってどっとグループ客が増えたことが、先の騒音絶叫につながった、のだとすれば、何と未熟な習性だろうか。「日本は静かだ」は、せいぜいが1名から4名の客にあてはまる評価なのだと気づいた。数がそろえば、そして地域的解放感がつのれば公共の場であっても一部の日本人は大騒ぎをする。それも他客の迷惑もかえりみずに。愚痴になってしまった。大声で騒いでもかまわない。それが国民性なのだとすれば、明るく率直でおしゃべりが好きな陽気な国民、となる。しかし正式な晩餐会で、見ず知らずの左右の客とは、簡単な挨拶と少々のウィットある会話さえできない内気?な日本のビジネスパーソンにてこずった経験からすれば、先のグループ客はただただ、数を頼りの仲間うち大騒ぎであって、これが日本人の特性では無いと思いたいが、内弁慶そのものだ。

先の飲食店での嬌声は、店側の対応を期待するのも気の毒かもしれない。ただ、大衆酒場ならご愛敬で済むが、それなりの店の場合での大声はやはりたしなめる度量があっていい。というのも、かなり前、何のことは無い、自分が店から注意された経験があるからだ。軽いライブを聞かせるこじんまりとした洒落たレストランで、来阪者を含めて4名で盛り上がっていたところ、「恐れいりますが、お静かにおねがいします」の注意を受けたのだ。恥じ入るばかりであった。久々にその時の記憶がよみがえってきた。店側の凛とした対応が印象的で、その後も何度か、訪問させてもらった。先の二店舗はいずれも、店長らしき人物が騒音元のグループ客を気にしているのは様子で分かったが、彼らに対して何らかの「お願い」や「ご注意」は無かった。まだ間に合う。他客がいる公共の場としてのマナーを店側が教えてもいいのだ。それで怒り出す客は、不要な客と割り切り、店の格を守ってほしい。それが店の矜持というものだ。

2023年10月1日 間島

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顧客満足の複雑さ 177(自然災害は地球から無くならない)

   顧客満足の複雑さ177「自然災害は地球から無くならない」 

今年の夏は、洪水や山火事の被害が世界各地から報告されている。今年の夏も、と言い変えるべきかもしれない。それほどに毎年、世界のどこかしこで災害被害が起こっているのだ。それらすべてを人間による環境破壊のなせる災いと決め付ける人は、さすがに多くは無いと思うが、地球温暖化をはじめとして、自然災害を人間のせいにしたがる層は、ますます増えそうで、いささか食傷気味でもある。自然は厳しいもので、人間は何ひとつコントロールなどできないものなのだ、という当たり前の認識に立てば、いかに被害を少なくするかの知恵がもっとも必要なのだ、という結論にたどりつく。同じ災害でも、国によって被害状況が異なるのは、備え・民度・国力・防護力等の差にほかならない。まずはせめて、それらの平均値をあげる努力が世界レベルで望まれよう。

 今夏に限っても、中国の洪水、カナダの山火事、ハワイの山火事、フランスの熱波、などなど、毎日のように自然の猛威にさらされる事象が発生している。多くは先進国、と呼ばれる国々からの情報であって、後進国、たとえばアフリカや中南米の自然被害はあまり表には出てこない。情報網が完備していないだけで、多分、多くの災害が人民を苦しめているものと思われる。一方、内乱などの人的被害の多さは、ヨーロッパに押し寄せる難民の増加が如実に現実のすさまじさを表している。他国の内乱は簡単には関与できるものではなく、その国の成熟度如何によるだろうから、これもまたなかなかに解決できるものでもない。そうなのだ、人間ができることは高が知れている。とすれば、今、盛んに、そして声高に叫ばれる“CO2を削減しろコール”は、一向に胸に響いてこないのだが。 

真に必要なのはより謙虚に、自然災害被害を少しでも減少する対策を世界レベルでたてることだ。地球は何も困らない。困るのはいつでもどこでも起こる自然災害に見舞われる人間なのだ。そして、ずっと昔から自然災害で多くの人が被害を受けてきた。その時の知恵を生かさなくてはならない。フランスなども夏の熱波は十数年前にも発生し、高齢者を始めとして多くの死者を出した。そして今夏も危機的な状態らしい。もともと涼しい風土なので、自宅にエアコンがある人は少ないのが被害を多くしているが、十数年前から学んでいないように思える。各家でのエアコン設置が難しいのであれば、エリアごとのエアコン設置施設を義務づけて、臨時避難場所にするしかない。同じ状態で、同じ被害を出す、のは残念なことだ。言うは易し、行うは難し、なのだろうか。災害大国?日本でも、その都度の被害は出るが、懸命の対応策はとっていると思う。自然災害を人為災害にしないための国力増強は、もろてをあげて歓迎したい。そして、治水や耐震性補強、物資補給、避難場所の確保等々、まだまだ世界は未熟なのだという認識を共有することが望まれる。台風ひとつとっても、その向きを変えたり、消滅させたりできないのだ。地球に優しく、地球を守ろう、のスローガンを言い募るより、なすべきことは多くある。        2023年9月1日 間島

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顧客満足の複雑さ 176(メディアという甘く優しい互助会)

顧客満足の複雑さ176「メディアという甘く優しい互助会」 

外国に日常生活の拠点を置く芸能人が少なからずいる。住まいは主に欧米の先進国だが、時々、日本に帰って仕事をするか、現地にいるときは映像でのレポート発信の仕事をするかで収入を得て悠々自適の生活ぶりが伺える。わずらわしい人間関係に悩まされることなく自由を謳歌しているようにみえる。しかしながら、わずかな例外を除けば、数年を経て日本に戻り、すでに第一線とはいかないまでも、メディアでの露出や仕事の復帰でその後の生活を成り立たせているケースは実に多い。住んでいた国でその才能が注目され、仕事が舞い込み、大物になった、という話は聞いたことが無い。一方、外国人が日本に来て、そのキャラクターや能力が認められ、芸能界やマスメディアの一隅で十分な地位を築き、日本に定住したケースは結構みかける。彼らは時々は母国に戻り、親族との交流を暖め、一時の自由を味わうものの、結局は仕事場としての日本に戻ってくる。先の日本人のケースとは逆だ。

何か大きなネットワーク、例えば巨大な互助会が存在するのではないか、と思うほどに、日本の芸能を含むメディア業界は仲間うちでは甘く、優しい。世界に通用する芸能人や評論家は俳優、歌手を含めてほとんどいないにもかかわらず、だ。世界のクロサワ、世界のミフネがいた時代は確かにあった。今はいない。日本のビートルズ、日本のマイケルジャクソンが、出てきたためしはない。

一方、世界が認める真の実力者、たとえばトップアスリートの存在は日本人として本当に誇らしい。ただかれらはメディアに媚びる必要がないがゆえに、自らの露出は少ないのが残念だ。実力では負けないアニメーション界も同様で彼らもテレビなどのメディアを必要とはしない。デザインやファッションなどの、いわゆるアーティストと呼ばれる人たちも世界で活躍している。彼らも日本のテレビを必要とはしない。物理生理化学界はノーベル賞受賞者を輩出しているが、テレビとは無関係なところで研究を続けている。

どれだけ政府の悪口を言っても、時の為政者を罵っても、罪に問われる心配のない日本から出ていく人は少ない。学術・医療関係や企業間での移住は安定して存在するだろうが、国自体を見捨ててでも逃げ出したいという人は極小だ。先のメディアではないが、日本全体がやはり甘くて優しいのだ。この国をリードしていくのは、大変であるのは間違いがなさそうだ。

                     2023年8月1日 間島

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顧客満足の複雑さ 175(宿泊施設の役割の広がり)

       顧客満足の複雑さ175「宿泊施設の役割の広がり」 

以前にも書いたと思うが、実際に住まいとして機能している住宅インテリアの本を観るのが好きだ。何よりの良き気分転換になる。それも間取り紹介があるのが望ましい。それぞれの施工会社が自社の建築例を、オーナーへの何らかの見返り条件を加味することで掲載しているのだと思うが、今のトレンドが見えてきて興味深い。リビングもキッチンも一様にモノトーン色でまとめられ、水回りもすっきりとしている。本の傾向にもよるが、敷地面積200平米以上、建坪120平米以上の住宅を掲載しているものが多い。日本では十分な広さの住宅といえるだろう。ただそれらの間取りを見て違和感を感じるのは、いわゆるゲストルームが無い住宅が主流を占めているということだ。長野県の800平米の土地に大きな住まいを構えるA宅にも、東京郊外の建坪180平米もあるB宅にも、広いリビングルームや夫婦のベッドルーム、子供部屋はあるものの、和室を含むゲストルームが無かった。親族や友人が泊まることを想定していないのだろうか。そこに徹底した個人主義を感じた。そんな中、和室やゲストルームが用意されている希少な間取りを見ると、ほっとしてなんだか、うれしくなる。そこには,精神的なゆとりと愛が感じられるから、というのはセンチメンタリズムすぎるだろうか。 

アメリカなどの豪邸は何室のゲスト用ベッドルームがあるかが、豪邸たる証明となる。それらが埋まったときのにぎわいを想像すると楽しい。世界のどの国でも多分、住宅の大小にかかわらず、ゲストが気楽に泊まっていく部屋は用意されている。狭ければ雑魚寝でもOKで、主人側も客人もどちらも気にしない、という風景が浮かんでくる。昔の日本家屋にも、客人が遠慮なく泊まれる二間続きの和室がある家が多かったものだが、今のトレンドはいかに個々人が快適に住めるか、に重点が置かれ、そこに他者を受け入れるスペースは無い。それが当然なのだといわれれば、そうなのだろう。たとえ親しい知人でも、人を泊めるとなると神経を使う、という人は多い。親族や知人友人と寝食を共にして楽しみたいときには、旅館やホテルを利用するのが、お互いのストレスが少なくてすむ、という声を聞いたことがある。なるほど である。今後も宿泊施設の役割のひとつとなり得るだろう。場の提供とともに、食の提供という観点から見れば、役割はさらに増えてくる。知人の長男は2型糖尿病で、日常の食事療法に気を使った生活をされている。家族も持っておられ、奥方の努力は大変なものらしい。外食や旅行時の食事も、ただ楽しむというわけにもいかない。こういうケースも、施設側に糖尿病用の食事が用意されているとうれしいだろうに、と思う。他の人と同じく、美しい見映えの数々の料理を安心して楽しめる幸福によって、当人のストレスは多分、大きく軽減される。勿論、そこには専門家のアドバイスは必要だが、これも宿泊施設の役割のひとつになってほしい。 

     2023年7月1日  間島

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顧客満足の複雑さ 174(食と経済の関連)

         顧客満足の複雑さ174「食と経済の関連」  

最近、新聞や雑誌などで食の安全や食が健康に及ぼす影響に関する記事はよく目にするが、予想内に収まる内容のものが多い。良く言えば再認識、悪く言えば二番煎じというところか。ただ、異なる観点から積み上げた異なった内容を組み合わせると、新たな世界観が見えてくるのが面白い。例えば食品添加物を取り上げた記事では、それらが体に及ぼす影響に警鐘をならしている。ただそれら食品添加物は厚労省認可のもとに使用されており、直接体に害を及ぼしたという事実事例は聞かない。警鐘は憶測の域を出ないが、自身を振り返れば、なるだけ添加物の少ない食品を選んではいる。保存性や見た目、また味覚向上性での添加物の持つ役割は認めてはいるものの、素材そのものを味わいたいという欲がある。また添加物の体に及ぼす影響はどこかで現れるのではないか、という危惧感も少なからずある。悩ましいのは、添加物が少なければ少ないほど、価格が高い、ということだ。 

ここに3種の食品がある。A社の人気食パンの原材料をみると、小麦粉・糖類・マーガリン・バター・パン酵母・食塩・発酵種・脱脂粉乳・植物油脂・乳化剤・イーストフード・VCが記載されている。一方、B社食パンの原材料は、小麦粉・砂糖・バター入りマーガリン・パン酵母・食塩・米粉・醸造酢となっている。大手スーパーでは上記A社食パンは4枚切148円、B社は188円で販売されている。常時の価格だ。大きな違いは乳化剤とイーストフードが入っているか否かだろう。そして入っていないほうが高い。だしの素では、A社の原材料は、食塩・ブドウ糖・風味原料・たん白加水分解物・アミノ酸等となっている。B社は風味原料・でん粉分解物・酵母エキス粉末・麦芽糖が記載されている。風味原料というのは、かつお節粉末や昆布粉末などを差し、両社とも内容はほぼ似ている。大きな違いは食塩とアミノ酸が加味されているかどうかで、加味されているほうが4割がた安い価格で売られている。かまぼこA社の原材料は魚肉・みりん・砂糖・食塩・卵白・でんぷん・アミノ酸等調味料・保存料・着色料(赤色106号・カロチノイド)。一方B社のそれは魚肉・砂糖・みりん・卵白・食塩・昆布だし・酒かすで、価格はA社のかまぼこは、B社の半値以下だ。どの食品でも、食品添加物が多ければ多いほど価格は安い。どちらを選ぶかは消費者の自由ではあるが、価格の安さは大きな魅力であるのは確かだろう。販売数がそれを裏付けるかもしれない。 

全国市区町村の男女平均寿命に関する記事をみつけた。男女共、全国一は川崎市麻生区で、男性84.0才、女性89.2才だという。この地はいわゆる住宅地で、公園などの緑地も多く、散歩やジョギングを楽しむには絶好のエリアらしい。生活水準も高い。ちなみにワーストワンは大阪市西成区で、平均寿命は男性73,2才、女性84,9才だ。男性は10才以上の差がある。以前のドヤ街と呼ばれた時代と比べ整備されたと聞いていたが、この結果は胸をえぐる。喫煙率は高く、検診率は低い。そして食生活の差も寿命差の結果の一由をになっているのだろう。食は経済によって大きな違いが出る。贅沢な食品が違いを左右するのではなく、意識の問題にかかわる、ということだ。ただ、この価格高騰のときには“食費をまずは削る“の声を最近よく目にし、耳にする。心が重くなるが反論はできない。  

     2023年6月1日  間島

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顧客満足の複雑さ 173(魅力の付加価値)

         顧客満足の複雑さ173「魅力の付加価値」 

まさに春爛漫。梅に始まって、桜やつつじと、木々の花や草花が目を楽しませる季節の到来だ。チューリップやバラも主役級の花の貫録を見せつける。春が過ぎてもあじさいは梅雨の時期を彩る人気の花で名勝地が多い。真夏は各花の勢いが消えると思いきや、マリンゴールドやひまわりなどが元気に咲き誇る。どの国も、多種多様の花に恵まれているとは思うが、日本ほど花の種類に恵まれた国は無いのでは、などと誇りたくなる。特に昔から日本人は花を愛でてきた。俳句や和歌の素材にはことかかない豊富さだ。人を集める大きな力をそれぞれの花が持っており、あじさい寺、ほたん寺、コスモス寺などの別称を持ち、シーズンには多くの観光客が押し寄せる神社仏閣もある。群生した花はそれほどの人を惹きつける力を持っている。各地方の一種に特化した花公園は、多くの人でにぎわっている。 

以前、寒い季節に泊まった箱根の老舗旅館は、斜面をうまく生かしたつつじの群生した庭を持っていた。5月にはさぞかし美しい風景を見られるのだろう。後に知ったのだが、“つつじの旅館”の別称があった。旅館には広い庭を有するところが結構多い。それぞれの木々は行き届いた剪定がなされているが、強い印象を残す庭はそれほど多くは無い。ほとんどが無難な風景に落ち着いている。訪問客や宿探しの客に特化した印象を植え付ける庭園造りは、強い集客力に結びつくだろうにと、もったいない気もする。かつて、兵庫県川西市での新ホテル企画にたずさわったことがある。広い庭を持てる土地的余裕はなかったが、ホテル周りをバラで囲む、という提案をさせていただいた。バラは手はかかるものの年に二回の開花期があり、バラホテルとして強い印象を与えることができる。幸いオーナーはバラ好きで、提案に好感してもらったがバブルがはじける時期とかさなり、ホテル建築には結びつかなかった。今でもあでやかなバラに囲まれたホテルが目に浮かんでくる。

 人を惹きつける要因は様々だが、“並み”では印象に残らないものだ。ユーチューブで、超高級宿泊施設に泊まる映像が多く見られる。ただ部屋や露天風呂の広さは限界があり、料理も想定内のことが多い。その中で目を惹くのは、備品の豪華さであり、特化したサービスなのだ。フリードリンクも大きな魅力で、まさに至れり尽くせり感がある。ただ、最後に価格が提示されると、なるほど感はあるが、なぜか是非訪問したいと思ったことは少ない。根が貧乏性なのだろう。それだけの価格なら別の使い方をするだろう、などとケチなことを計算してしまう。しかし、もしそこに楽園のような庭園が広がっていたなら、そこに身を置きたいと渇望するやもしれない。大阪のホテルラウンジから見る巨大な滝は、目に焼き付いて離れない。城崎の旅館のブッフェ朝食時に、全面窓に広がった見上げるような坂の芝生庭園はいまだに記憶に残る。一方、世界各国から取り寄せた高級素材で内外装を施し、何かと話題を集めたホテルのコーヒーショップラウンジから見た中庭には、ペンペン草が生い茂っていた。すでにその時期には経営に行き詰まっており、荒れた庭が凋落ぶりを如実に表していた。花や自然を技術力で群生式に整え、魅力の付加価値を増すのもあっていい。日本式庭園にこだわらない自由な発想も望まれる。

                    2023年5月1日 間島

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顧客満足の複雑さ 172(社名)

           顧客満足の複雑さ172「社名」 

会社名だけでは、一体その会社が何を扱っているのか分らないことが多くなった。ひと昔前は会社名だけで何を主業としているか明確に判断できたものだ。○○繊維、○○電機、○○化粧品、○○百貨店、etc。それがいつ頃からか、横文字化が進み、一見しただけではその会社の主力商品や取り扱い部門が分かりづらくなった。会社自体の取り扱い業務が多様化しているゆえ、会社名でイメージを絞られすぎることへの懸念もあるのだろう。確かに企業は得意分野を生かして、事業内容種類を増やし、関連事業を増やすことで、経営安定と拡大を図ってきた経緯はある。どの分野にも進出できる余地を十分に残しておきたい、というのもわかる。ただ、トヨタ・ホンダ・パナソニックなどの、社名自体がブランド化している会社は特別として、社名だけでは一体何の会社かわかりにくい時代であるのも確かだ。そんな中で、○○酒造、○○製菓、○○薬品、○○食品などの社名に接すると、その分かりやすさに、ほっと馴染んでしまうのも、一種の安心感なのかもしれないが、今後益々、社名の横文字化と事業内容の曖昧さは広がっていくのだろう。 

私事ながら、社名だけでは一体どんなことをしているのか、ずっと以前より理解しがたい会社群があった。○○商事、○○商社、○○物産と銘打った会社だ。それらに“貿易商”と片付けられない、魑魅魍魎とした印象を受けるのは、自分の理解力が徹底的に不足しているせいだとは思うが、その思いは今も変わっていない。その会社群の平均給与が一般会社の優に二倍はあろうかと聞けば、なおさらわからなくなる。トップ商事会社のそれは1600万円を超えている。一体、何をしてそんなに利益を上げているのかと。いわゆる総合商社という組織は、外国には見あたらないらしい。貿易会社、投資会社、専門商社、などの種分けはあるが、総合商社、は日本独自の称名なのだ。上位総合商社の喫緊の年間売り上げは、三菱商事で17.3兆円、伊藤忠商事が12.3兆円、三井物産が11.8兆円らしい。日本トップのトヨタ自動車は約27兆円だが、トヨタはひとえに自動車を販売して達成した売り上げ額で、では総合商社の巨額な売り上げは何を売って出てきたものなのかよくわからない。物を左から右へ動かすだけで達成できるものなのか。従業員数でみると、トヨタの単独従業員数は7万人強。かたや3大商社は約5,000人前後だという。頭が痛くなった。我が家の車はトヨタなので、それで親近感があるわけでもないが、総合商社は一体、日本の国益にどのように貢献してきたのか明確に知らしめてほしいものだ。主な貿易部門で、日本の食料自給率の根幹をになう農業、漁業等にどういった貢献をして、我が国の基本的な国力増強に尽くしてきたのか、だれか簡明に教えてほしい。 

   2023年4月1日 間島

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顧客満足の複雑さ 171(期待する利用客は)

      顧客満足の複雑さ171「期待する利用客は」  

もう10数年前のことになるが、米最大手の旅行サイトを運営するエクスペディアが実施した、観光客の評判ランク付けアンケート結果が話題になったことがある。詳細は覚えていないが、世界28か国を対象として、各国1500人以上のホテルマネージャーに、客としてもっとも歓迎する国民をランク付けしてもらったところ、日本が1位を獲得したのだ。理由としては・行儀が良い・礼儀正しい・もの静か・不平を言わない・部屋を綺麗に使う・などが評価されたのだという。下位に沈んだのはフランス・ロシア・イギリス・インドなどで、一様に偉そうな態度でうるさいし、部屋を汚し、不平が多いという評価だった。ちなみにおひざ元のアメリカはチップの気前の良さで、中位に食い込んだらしい。現職のホテルマネージャーへのアンケート結果ということで、当時はずいぶんと話題になったが、その後継続して調査が実施された形跡はない。下位に沈んだ国々からの横やりが入ったか、嫌がらせがあったかは明らかではないが、なるほどと、国民性の違いに妙に納得した結果ではあった。ただ、観光客として歓迎する国民の一位に選ばれたことはさほど喜ばしいことではなく、ホテル側にとって扱いやすい大人しい客ということだろう。むしろ下位の国々の観光客への対応を重ねることで、ホテルマネージャーとしての接客技量を磨けるはずだ。彼らの自己主張の強さとしたたかさ、いざというときの粘り・交渉力・などを、かえって際立たせたのだ、という印象は今も変わっていない。もしも今、同じ形での調査が実施されてもほぼ同じような結果が出るかもしれないと思うと、愉快にはなる。国民性はそうは簡単には変わらない。その時点では、観光客として少数派であるがゆえに調査対象には入っていなかった中国はどんなランクに収まるだろう。 

さて、上記の結果を十分に享受していたのは、国内の宿泊施設や飲食店・観光施設ということになる。海外観光客が押し寄せたコロナ禍前の3年間ほどを抜きにして、世界的に評判の良い顧客を主に相手にしていたのだ。ストレスは少なかったはずだ。今こそ、時々とんでもない客の実情が明らかにされることもあるが、総じて日本人客は大人しい。自分自身、国内旅行での宿泊先で、他客の騒々しさや傍若無人さにストレスを感じたことは無い。ビジネスホテルで夜間、アジア人客が大声で仲間の部屋を行き来するのには参ったことがあるが、日本人客と階を分けるといったホテル側の配慮が行き届き、ストレスは減った。世界的にコロナ禍が収まり、海外観光客の出足が戻ってきたのは喜ばしいことではあるが、母国の客がいかに扱いやすい上客であるかの再認識が求められよう。さほど手はかからず、部屋も不必要に汚さず、温泉でもマナーを守り、むやみやたらに騒がない。もしも、その日本人客さえをも満足さえ得ていなかったのだとしたら、海外客を満足させ得るなど、ビジネスの根幹としてあり得ない話だ。まずは自国民の満足度をあげる力を付けねばならない。コロナ禍前の繁華街の大規模ドラッグストアで、日本人客と分かるとあごで隅のレジに追いやられたことを思い出す。外国人による経営だったらしいが、その店はコロナ禍で姿を消した。また復活するのだろうか。

   2023年3月1日 間島

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顧客満足の複雑さ 170(自宅にないものの提供)

      顧客満足の複雑さ170「自宅に無いものの提供」  

住宅の写真本を見るのが好きだ。これから家を建てる計画など全く無いが、間取りやそれぞれの内装を見るのは楽しい。具体的に参考にしたい、などという実利を抜きにしても、眼の保養になるので、気分転換には最適なのだ。そこに載っているのは一様に広々としたすっきり空間で、調度品や雑貨が少ない。いわゆる無個性ともいえるインテリアが多い。中には、にぎやかな装飾に囲まれた、楽しそうな部屋をもつ家もあるが、大体が落ち着いた雰囲気の部屋だ。見ていて、多くがまさしくホテルライクなインテリアなのだと気づいた。特に水回りはモノトーンが好まれ、必要以外の装飾がない。キッチンも無駄なものが出ていない。ほとんどの小物は収納されている。トイレ・洗面もすっきりとした色彩で統一され、トイレマットや便座カバー、化粧品などは一切見られず、一輪の花だけがその場所の色を制する、という心憎さだ。こんな生活感が無い内装ではかえって落ち着かないのでは、との危惧は杞憂に終わりそうで、シンプルインテリアライフはこれから家を建てる若い人のバイブルらしい。日々、あれやこれや雑多なものに囲まれている身にとっては、あこがれに終わってしまうが、これは確かなブームであり、傾向であるようだ。ホテルライク志向は今後ますます高まっていくだろう。 

ならば、これからの宿泊施設は高度な付加価値が求められよう。昔から、ホテル・旅館の売りは、非日常空間の提供にあるからだ。広々とした温浴施設や美しい料理の数々は自宅では経験しにくいので大きな魅力になり得るが、肝心の部屋で惹きつけるとなると、なかなか難しい時代に入る。自宅でベッドにこだわり、寝具にこだわる層はこれからも増え続けるだろうし、抜群の収納力でもってリビングも水回りも、すっきりとシンプルにまとめられた、ホテル並みの環境下で住む人達たちが増えている。わが身のことになるが、中学生のときの家族旅行で、いわゆるクラシックホテルに泊めてもらったことがある。生まれて初めてのベッドに体が沈みそうなソファ、凝った内装、すべてが経験したことのない洋式の豪華さに、高揚感を覚えたのを記憶している。もしも今、再訪したならその時のように感動できるだろうか。そうなのだ。人が非日常空間に惹きつけられるのは古今変わらない。ならば逆手の発想もあり得る。我々が失った古き良き日本文化を結集した奥ゆかしい部屋。欄間や床の間、広い縁側に障子-襖のある部屋。それらはもはや旅館にしか存在しそうにない。昭和レトロを再現した部屋も一興となる。人は現在から過去へ、または未来へ遊びたがる。それなら徹底して、人々の意識下にある願望に応えていくことも求められよう。                          2023年2月1日 間島

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顧客満足の複雑さ169(自給体制の確立は急務)

      顧客満足の複雑さ169「自給体制の確立は急務」  

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

やはり新年のごあいさつとしては、ほかの文言がみつからない。乱れる世界情勢の中で、この言葉を発することができる国に生きていることに感謝したい。どうか今年はコロナの5類化への移行に伴い、平常な生活が戻りますように。そしてウクライナの人々が暖かい備えで、厳しい冬の生活を迎えられますように。 

さて、ウクライナ危機は周辺国のみならず、多くの国に危機意識を共有させた。日本でもウクライナ危機をきっかけに食料や肥料の多くを輸入に頼るリスクが表面化したという。笑わせないでほしい。食料の自給は、何かをきっかけにその重要性に気づくような問題ではない。国の根幹を支える最重要課題のひとつであり、平時から死に物狂いの政策・対策が必要なのに、具体的に何をしてきたのか。国民に“米を食べましょう“と呼びかければ、それで自給率があがると本気で思っているのかにわかには信じがたい。多分、有益な方策はわかっているのだろう。でも実施できていない。反対を恐れ、抵抗を恐れ、メディアを恐れ、これといった手を打てないままに、米を食べなくなった国民のせいにする?自給できているのは米飯だけで、他はオールアウトだ。大豆の自給率は全体で6%。食品用に限っていえば20%前後。大豆から豆腐、味噌、醤油が作られる。まさに日本の食卓には欠かせない大切な食材がわずか20%の自給率でまかなわれているのだ。ただジャガイモに関しては日本は健闘しているらしい。北海道での大規模生産が功を奏して、世界でも上位の生産額を誇っている。そういうことで、農業はもはや大規模化と機械化の両輪なくして、成り立たないということだ。 

一定の規模以上での農地に限って税の優遇措置が施されるべきで、あまりに小規模な農地は家庭菜園並みに扱うことで、生産可能土地の集約化を図らねばならない。零細農家を弱者扱いして助成し続けることが、日本の農業を発展させ得るだろうか。企業化による生産能力の向上や働く人の待遇改善を図る以外に、日本の食料自給率の向上は期待できない。経済的有利さで不足分は他国から買えばいい、で通用する時代は過ぎた。有事となればどの国も自国第一だ。他国に回すものは無いといわれれば、それで万事休す。半導体の国内回帰も極めて重要な政策であるが、食料自給率が無残に低い状態が、いかに国の脆弱化を如実に表しているかの危機感があまりに少ない。 

と、ここで新年の悪夢から目が覚めた。テレビはどの局も数時間もの録画番組を流し続け、NHKのBSで毎朝放送されていた海外ニュース速報もお休みだ。そうなのだ、ただのニュースなのだから、年末年始は社員は休暇を取らねばならない。で、思い出した。コロナ禍真っ最中のとき、民放テレビ局の社員が大宴会を催し、二階から女性が転落した不祥事を。それに関して上層部からの事情説明は聞いたことが無い。もしこれが政治家の集まりであったのなら、メディアからどんな罵詈雑言が聞けたことだろう。MCやコメンテーターたちの顔をゆがめての、罵りぶりを想像するだけで楽しい。            2023年1月1日 間島

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