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顧客満足の複雑さ 172(社名)

           顧客満足の複雑さ172「社名」 

会社名だけでは、一体その会社が何を扱っているのか分らないことが多くなった。ひと昔前は会社名だけで何を主業としているか明確に判断できたものだ。○○繊維、○○電機、○○化粧品、○○百貨店、etc。それがいつ頃からか、横文字化が進み、一見しただけではその会社の主力商品や取り扱い部門が分かりづらくなった。会社自体の取り扱い業務が多様化しているゆえ、会社名でイメージを絞られすぎることへの懸念もあるのだろう。確かに企業は得意分野を生かして、事業内容種類を増やし、関連事業を増やすことで、経営安定と拡大を図ってきた経緯はある。どの分野にも進出できる余地を十分に残しておきたい、というのもわかる。ただ、トヨタ・ホンダ・パナソニックなどの、社名自体がブランド化している会社は特別として、社名だけでは一体何の会社かわかりにくい時代であるのも確かだ。そんな中で、○○酒造、○○製菓、○○薬品、○○食品などの社名に接すると、その分かりやすさに、ほっと馴染んでしまうのも、一種の安心感なのかもしれないが、今後益々、社名の横文字化と事業内容の曖昧さは広がっていくのだろう。 

私事ながら、社名だけでは一体どんなことをしているのか、ずっと以前より理解しがたい会社群があった。○○商事、○○商社、○○物産と銘打った会社だ。それらに“貿易商”と片付けられない、魑魅魍魎とした印象を受けるのは、自分の理解力が徹底的に不足しているせいだとは思うが、その思いは今も変わっていない。その会社群の平均給与が一般会社の優に二倍はあろうかと聞けば、なおさらわからなくなる。トップ商事会社のそれは1600万円を超えている。一体、何をしてそんなに利益を上げているのかと。いわゆる総合商社という組織は、外国には見あたらないらしい。貿易会社、投資会社、専門商社、などの種分けはあるが、総合商社、は日本独自の称名なのだ。上位総合商社の喫緊の年間売り上げは、三菱商事で17.3兆円、伊藤忠商事が12.3兆円、三井物産が11.8兆円らしい。日本トップのトヨタ自動車は約27兆円だが、トヨタはひとえに自動車を販売して達成した売り上げ額で、では総合商社の巨額な売り上げは何を売って出てきたものなのかよくわからない。物を左から右へ動かすだけで達成できるものなのか。従業員数でみると、トヨタの単独従業員数は7万人強。かたや3大商社は約5,000人前後だという。頭が痛くなった。我が家の車はトヨタなので、それで親近感があるわけでもないが、総合商社は一体、日本の国益にどのように貢献してきたのか明確に知らしめてほしいものだ。主な貿易部門で、日本の食料自給率の根幹をになう農業、漁業等にどういった貢献をして、我が国の基本的な国力増強に尽くしてきたのか、だれか簡明に教えてほしい。 

   2023年4月1日 間島

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顧客満足の複雑さ 171(期待する利用客は)

      顧客満足の複雑さ171「期待する利用客は」  

もう10数年前のことになるが、米最大手の旅行サイトを運営するエクスペディアが実施した、観光客の評判ランク付けアンケート結果が話題になったことがある。詳細は覚えていないが、世界28か国を対象として、各国1500人以上のホテルマネージャーに、客としてもっとも歓迎する国民をランク付けしてもらったところ、日本が1位を獲得したのだ。理由としては・行儀が良い・礼儀正しい・もの静か・不平を言わない・部屋を綺麗に使う・などが評価されたのだという。下位に沈んだのはフランス・ロシア・イギリス・インドなどで、一様に偉そうな態度でうるさいし、部屋を汚し、不平が多いという評価だった。ちなみにおひざ元のアメリカはチップの気前の良さで、中位に食い込んだらしい。現職のホテルマネージャーへのアンケート結果ということで、当時はずいぶんと話題になったが、その後継続して調査が実施された形跡はない。下位に沈んだ国々からの横やりが入ったか、嫌がらせがあったかは明らかではないが、なるほどと、国民性の違いに妙に納得した結果ではあった。ただ、観光客として歓迎する国民の一位に選ばれたことはさほど喜ばしいことではなく、ホテル側にとって扱いやすい大人しい客ということだろう。むしろ下位の国々の観光客への対応を重ねることで、ホテルマネージャーとしての接客技量を磨けるはずだ。彼らの自己主張の強さとしたたかさ、いざというときの粘り・交渉力・などを、かえって際立たせたのだ、という印象は今も変わっていない。もしも今、同じ形での調査が実施されてもほぼ同じような結果が出るかもしれないと思うと、愉快にはなる。国民性はそうは簡単には変わらない。その時点では、観光客として少数派であるがゆえに調査対象には入っていなかった中国はどんなランクに収まるだろう。 

さて、上記の結果を十分に享受していたのは、国内の宿泊施設や飲食店・観光施設ということになる。海外観光客が押し寄せたコロナ禍前の3年間ほどを抜きにして、世界的に評判の良い顧客を主に相手にしていたのだ。ストレスは少なかったはずだ。今こそ、時々とんでもない客の実情が明らかにされることもあるが、総じて日本人客は大人しい。自分自身、国内旅行での宿泊先で、他客の騒々しさや傍若無人さにストレスを感じたことは無い。ビジネスホテルで夜間、アジア人客が大声で仲間の部屋を行き来するのには参ったことがあるが、日本人客と階を分けるといったホテル側の配慮が行き届き、ストレスは減った。世界的にコロナ禍が収まり、海外観光客の出足が戻ってきたのは喜ばしいことではあるが、母国の客がいかに扱いやすい上客であるかの再認識が求められよう。さほど手はかからず、部屋も不必要に汚さず、温泉でもマナーを守り、むやみやたらに騒がない。もしも、その日本人客さえをも満足さえ得ていなかったのだとしたら、海外客を満足させ得るなど、ビジネスの根幹としてあり得ない話だ。まずは自国民の満足度をあげる力を付けねばならない。コロナ禍前の繁華街の大規模ドラッグストアで、日本人客と分かるとあごで隅のレジに追いやられたことを思い出す。外国人による経営だったらしいが、その店はコロナ禍で姿を消した。また復活するのだろうか。

   2023年3月1日 間島

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顧客満足の複雑さ 170(自宅にないものの提供)

      顧客満足の複雑さ170「自宅に無いものの提供」  

住宅の写真本を見るのが好きだ。これから家を建てる計画など全く無いが、間取りやそれぞれの内装を見るのは楽しい。具体的に参考にしたい、などという実利を抜きにしても、眼の保養になるので、気分転換には最適なのだ。そこに載っているのは一様に広々としたすっきり空間で、調度品や雑貨が少ない。いわゆる無個性ともいえるインテリアが多い。中には、にぎやかな装飾に囲まれた、楽しそうな部屋をもつ家もあるが、大体が落ち着いた雰囲気の部屋だ。見ていて、多くがまさしくホテルライクなインテリアなのだと気づいた。特に水回りはモノトーンが好まれ、必要以外の装飾がない。キッチンも無駄なものが出ていない。ほとんどの小物は収納されている。トイレ・洗面もすっきりとした色彩で統一され、トイレマットや便座カバー、化粧品などは一切見られず、一輪の花だけがその場所の色を制する、という心憎さだ。こんな生活感が無い内装ではかえって落ち着かないのでは、との危惧は杞憂に終わりそうで、シンプルインテリアライフはこれから家を建てる若い人のバイブルらしい。日々、あれやこれや雑多なものに囲まれている身にとっては、あこがれに終わってしまうが、これは確かなブームであり、傾向であるようだ。ホテルライク志向は今後ますます高まっていくだろう。 

ならば、これからの宿泊施設は高度な付加価値が求められよう。昔から、ホテル・旅館の売りは、非日常空間の提供にあるからだ。広々とした温浴施設や美しい料理の数々は自宅では経験しにくいので大きな魅力になり得るが、肝心の部屋で惹きつけるとなると、なかなか難しい時代に入る。自宅でベッドにこだわり、寝具にこだわる層はこれからも増え続けるだろうし、抜群の収納力でもってリビングも水回りも、すっきりとシンプルにまとめられた、ホテル並みの環境下で住む人達たちが増えている。わが身のことになるが、中学生のときの家族旅行で、いわゆるクラシックホテルに泊めてもらったことがある。生まれて初めてのベッドに体が沈みそうなソファ、凝った内装、すべてが経験したことのない洋式の豪華さに、高揚感を覚えたのを記憶している。もしも今、再訪したならその時のように感動できるだろうか。そうなのだ。人が非日常空間に惹きつけられるのは古今変わらない。ならば逆手の発想もあり得る。我々が失った古き良き日本文化を結集した奥ゆかしい部屋。欄間や床の間、広い縁側に障子-襖のある部屋。それらはもはや旅館にしか存在しそうにない。昭和レトロを再現した部屋も一興となる。人は現在から過去へ、または未来へ遊びたがる。それなら徹底して、人々の意識下にある願望に応えていくことも求められよう。                          2023年2月1日 間島

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顧客満足の複雑さ169(自給体制の確立は急務)

      顧客満足の複雑さ169「自給体制の確立は急務」  

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

やはり新年のごあいさつとしては、ほかの文言がみつからない。乱れる世界情勢の中で、この言葉を発することができる国に生きていることに感謝したい。どうか今年はコロナの5類化への移行に伴い、平常な生活が戻りますように。そしてウクライナの人々が暖かい備えで、厳しい冬の生活を迎えられますように。 

さて、ウクライナ危機は周辺国のみならず、多くの国に危機意識を共有させた。日本でもウクライナ危機をきっかけに食料や肥料の多くを輸入に頼るリスクが表面化したという。笑わせないでほしい。食料の自給は、何かをきっかけにその重要性に気づくような問題ではない。国の根幹を支える最重要課題のひとつであり、平時から死に物狂いの政策・対策が必要なのに、具体的に何をしてきたのか。国民に“米を食べましょう“と呼びかければ、それで自給率があがると本気で思っているのかにわかには信じがたい。多分、有益な方策はわかっているのだろう。でも実施できていない。反対を恐れ、抵抗を恐れ、メディアを恐れ、これといった手を打てないままに、米を食べなくなった国民のせいにする?自給できているのは米飯だけで、他はオールアウトだ。大豆の自給率は全体で6%。食品用に限っていえば20%前後。大豆から豆腐、味噌、醤油が作られる。まさに日本の食卓には欠かせない大切な食材がわずか20%の自給率でまかなわれているのだ。ただジャガイモに関しては日本は健闘しているらしい。北海道での大規模生産が功を奏して、世界でも上位の生産額を誇っている。そういうことで、農業はもはや大規模化と機械化の両輪なくして、成り立たないということだ。 

一定の規模以上での農地に限って税の優遇措置が施されるべきで、あまりに小規模な農地は家庭菜園並みに扱うことで、生産可能土地の集約化を図らねばならない。零細農家を弱者扱いして助成し続けることが、日本の農業を発展させ得るだろうか。企業化による生産能力の向上や働く人の待遇改善を図る以外に、日本の食料自給率の向上は期待できない。経済的有利さで不足分は他国から買えばいい、で通用する時代は過ぎた。有事となればどの国も自国第一だ。他国に回すものは無いといわれれば、それで万事休す。半導体の国内回帰も極めて重要な政策であるが、食料自給率が無残に低い状態が、いかに国の脆弱化を如実に表しているかの危機感があまりに少ない。 

と、ここで新年の悪夢から目が覚めた。テレビはどの局も数時間もの録画番組を流し続け、NHKのBSで毎朝放送されていた海外ニュース速報もお休みだ。そうなのだ、ただのニュースなのだから、年末年始は社員は休暇を取らねばならない。で、思い出した。コロナ禍真っ最中のとき、民放テレビ局の社員が大宴会を催し、二階から女性が転落した不祥事を。それに関して上層部からの事情説明は聞いたことが無い。もしこれが政治家の集まりであったのなら、メディアからどんな罵詈雑言が聞けたことだろう。MCやコメンテーターたちの顔をゆがめての、罵りぶりを想像するだけで楽しい。            2023年1月1日 間島

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顧客満足の複雑さ168(食品偽装犯罪のスケール)

      顧客満足の複雑さ168「食品偽装犯罪のスケール」  

先日テレビで、フランスのドキュメント番組を放映していた。番組名は「偽装大国ヨーロッパ」。そういえば日本でも食品偽装が2013年に社会問題化したことがあった。大手ホテルを皮切りに出るわ出るわ、一流ホテルやレストランが軒並みに摘発された。主に産地や原材料の偽装で、バナメイエビを芝エビに、牛脂注入混合肉を牛肉に、ブラックタイガーを車エビに、カナダ産ボタンエビを北海道産に、即席パンを自家製パンに偽って販売した。全国各地で偽装が発覚し連日紙面をにぎわしたことが、まだ脳裏に新しい。その前の2007年には期限切れ商品の偽装が続発。製菓会社や伊勢の銘菓、洋菓子店など、消費期限や賞味期限の偽装が相次いだ。極めつけは、老舗料亭の産地偽装と客の食べ残し再提供事件だろうか。テレビで面白おかしく報道され、いささか気の毒に思えたほどの大騒ぎぶりではあった。その時点で各社各店大きなお灸をすえられたはずだが、のど元過ぎればで、またいつ起こっても不思議ではない犯罪の罠が、食品偽装にはある。 

で、「偽装大国ヨーロッパ」を興味深く観たのだが、そのスケールの大きさは驚愕ものだった。馬肉を牛肉に混ぜての偽装販売がアイルランドで見つかったのを皮切りに、シンガポール・香港でも発覚。この世界的規模の偽装はオランダが舞台で、1年で200万ユーロの取引が行われたという。またフランスではポーランド産の牛肉を材料として使用したハンバーグに偽装が発覚。安価なポーランド産牛肉には、病気で死んだ牛など質の悪い牛肉を加工して高く売るのが常態化していた。この会社の売り上げは2021年度で60億ユーロに達していた。低価格の偽装牛肉を全ヨーロッパに拠出していたのだ。イタリアではオリーブオイルの偽装が後を絶たず、質の悪いオイルがエキストラバージンオイルとして稼ぎ出す額は年間12億ユーロにのぼるという。偽装オイルのメーカーはゆうれい企業で、2年間の調査の結果、トルコから菜種油を輸入し、オリーブオイル製造時に混入させていたことが判明したらしい。

ユーロポール(欧州刑事警察機構)も手をこまねいているわけでもなく摘発に熱心だが、ヨーロッパの食品偽装にはマフィアも参入して大陸全体を相手に商売している上に、摘発されても食品偽装は刑罰が軽いので、まさにもぐらたたき状態だという。食品偽装は儲かるのだ。なんだか、日本の偽装事件がかわいく思えてきた。問題なのは健康被害をもたらすケースだろう。スペインで摘発された、マグロに硝酸塩を注入し赤くする偽装犯罪では、2017年に4000件の健康被害が出た。産地を偽ったものを食べても健康を害することはまず無いだろうが、偽装手口がエスカレートすると、危険性も増す。さてはて、どうすれば防御できるのか、答えは出にくい。食べてすぐにわかるようでは、偽装犯罪は成立しない。商取引は信頼が基本だ。その点でいえば、果樹園や農地から果実や農作物を大量に盗んで知らぬ顔で市場に販売する犯罪は、最も卑しい犯罪のひとつといえるだろう。そのスケールも大きくなっているのが気になる。 

2022年12月1日 間島

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顧客満足の複雑さ167(宿泊施設経営の複雑性)

      顧客満足の複雑さ167「宿泊施設経営の複雑性」  

Go To トラベルの再開は見送られたが、全国旅行支援が10月11日より実施された。宿泊は40%オフ(上限を交通付き宿泊で一人8千円、その他は5千円)とし、それにともなって一人平日3千円、休日は1千円の地域クーポンの配布を決定した。前回のGo To トラベルが高額施設優遇策ではないかと批判されたことを受け、今回は比較的低価格帯の施設に手厚い支援となっている。加えて、平日への旅行需要分散を狙ってクーポンを休日と平日に差をつけた。なかなかよく練られた支援策だと思う。さらに、支援を受けるには3回目のワクチン接種証明書かコロナ陰性証明が必要で、感染拡大を防ぐ手当がなされている。破格の優遇策だった前回と比較すると、堅実策に落ち着いた、ということか。それでも旅行関連業界にとっては、待ちに待った朗報となった。支援は12月下旬までではあるが、その間の旅行支出増加は4,464億円に達するとみられている。10月下旬に京都府北部を訪問したが、各観光スポットは他県ナンバーの車であふれていた。やはり人が動くことで経済は活況化する。泊まって食べて買ってくれるからだ。 

さて支援策のメイン対象となる宿泊施設だが、厳しい経営を強いられる業界ではあると思う。厳しいというより、手がかかると言い換えてもよい。飲食店であれば一定時に食事を提供することで完結する。勿論、そこには料理・価格・サービス・雰囲気への細かい戦略は必要だが、時間にすれば2時間前後までの勝負だ。一方宿泊施設は平均18時間前後、客をもてなすことになる。夕食、風呂、睡眠、朝食のすべてで客とかかわるという、複雑な対応をせまられる。自宅にいても手を取られる作業を代替しながら、なおかつその結果に満足してもらわなければならない。なんと多くの設備や備品、そして接遇が必要だろうか。ひと昔前と異なり、快適な自宅に住み、快適な睡眠環境で生活している人も多い。そんな人たちに満足してもらう設備を、どう提供すればよいのか。結局のところ、自宅より何らかの優れた魅力がひとつでもなければ、その施設の将来性は危うい、といわざるを得ない。自然環境なのか、特化した料理なのか、ラグジュアリーな部屋空間なのか、ゆったりとした温泉施設なのか、手厚い接客なのか。それらすべてを満たすのは至難の業だ。客は常に自宅と比較している。自宅では得難い環境を求めている。勿論、観光が目的なので施設は寝るだけで十分だという人もいるが、やはり日本人は非日常感のある宿泊施設にこだわる。どんな環境や料理、設備で客を満足させ得ているか、させ得たいか、そしてそれらの結果としての客単価を理路整然と組み立てていくことが求められる。そこには理工系の発想も必要になりそうだ。 

2022年11月1日 間島

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顧客満足の複雑さ166(介護事業の特殊性)

      顧客満足の複雑さ166「介護事業の特殊性」  

特養を含む介護事業所での、利用者に対する介護職員の虐待事件がある度に、この仕事の特殊性を痛感せざるを得ない。増え続ける利用者とあいまって、介護事業所の増設はとどまることを知らない。結果として、この業界は常に人手不足状態にある。要支援や要介護の人を世話するという重い職責にもかかわらず、資格がなくてもとりあえず働くことができる職場であるがゆえに、より良い条件を求めての出入りが多く、また肉体労働下で体を痛めて離職する人もいる。勿論、介護職員初任者研修を経て、介護福祉士やケアマネージャーへのステップアップへの道を堅実に歩む人もいるが、養成学校での研修を終えれば、だれでも介護職員として働くことができる。かつて自宅での母の介護で、ヘルパーさんにお世話になったが、個人の資質の差は大きかった。「この仕事は定年が無いのでその気なら何歳までも働けるし、だれでも出来る」と、かなり年配のヘルパーさんは言った。幸いにも真面目な人たちに恵まれ、トラブルはほとんど無かったが、中には、この仕事には向いていないのでは、と思う人がいたことも事実だ。それが前述の介護業務の特殊性だ。研修を受けて一通りの介護業務に日々携わることにさほどの困難性はないが、心に“奉仕”という軸を持たないであたると、利用者ともども不幸な結果を招いてしまう、ということだ。

福祉大学を出て、障がい者施設で長年にわたって働いている従妹がいる。とにかく穏やかで気が長い。日ごろよりあくせくしているわが身とは環境の差が違いすぎるゆえに、めったに会うこともないのだが、彼女の根底にある“優しさ”が生来の資質なのか、仕事で培われたものかわからない。でもその“気の長い優しさ”こそが障がい者にとって、安全と幸せをもたらす要なのだということはわかる。高齢者介護事業も同じことだ。

で、逃亡先の北海道で先日逮捕された虐待事件の加害者には、「穏やかな気の長さ」が決定的に欠けていた。50代の男性と聞く。介護の仕事に男女差も年齢差も無いのは当然のことながら、加害者は、本人にとって従事してはいけない仕事を選んでしまったのだ。被害者の腕をまるで木を折るように折り、頭を殴打して死に至らしめたという。かっとなって。その荒々しい気の短さを施設側は認識していなかったとしたら、従業員管理の責を問われて当然だし、もし認識していたとするなら同罪であろう。介護業務はだれでも今日からでも始められる。ただ一番の必須資質である“気の長さと優しさ”が無い人には、決して携わってほしくはない。今回の被害者である高齢女性がどのような人生を歩んできたのか知る由もないが、その無念はだれが引き受けられるのだろうか。

2022年10月1日  間島

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顧客満足の複雑さ165(コンセプトは立地と客単価)

      顧客満足の複雑さ165「コンセプトは立地と客単価」  

不動産業を含む、いわゆる対面客商売と称される事業をするにあたっては、立地は最も成否を左右する要素だとされている。1に立地、2に立地、3・4がなくて5に立地といわれるゆえんでもあるが、飲食店の場合は“1に立地、2に料理、3に接客”となるだろうか。ただ、そのすべてが良い条件下にあるのがベスト、の意味でもなく、店のコンセプトにいかにマッチしているか否かが成否を決める、ということだ。広々とした景観を望めるゆとりのあるレストランを目標とするなら駅前立地は向かないし、客が袖すりあう狭くてもアットホームな居酒屋を目指すときに都心から遠い郊外では成功度は低くなる。いずれにしても立地が店を磨く要となることは確かで、立地如何で客層がほぼ決まってくるのは避けがたい事実だからだ。

都心の駅近での飲食商売は、やはり大きな儲けを生む可能性は高い。かなり広い商圏内でのビジネスパーソンを取り込むことができる上に、日常使用というリピート率の高さも期待できるからだ。一方、郊外型飲食店はヘビーユーザーが見込めないというわけでもないが、客層が幅広いがゆえの客が醸し出す一体感に欠けるという宿命がある。いずれにしてもそれぞれの立地がオーナーのコンセプトに合っていればよいわけで、逆に立地がその店を磨いていくことも十分にあり得る。やはり“1に立地、2に立地、3,4が無くて5に立地“は、対面客商売の指針として生き続けているのは確かなようだ。コロナ禍でのオンライン化は、場所を選ばない、つまり立地を選ばないビジネスの可能性を広めたが、その場で料理・雰囲気・会話を楽しめる飲食店の魅力の本髄を変えることはできなかった。

さて、飲食店開店にあたって、自分のコンセプトに添える立地を選べる幸運に恵まれた場合、その後の成功度はかなり高まる。コンセプトとは「客単価をどの程度に設定するか」であって、それによって他のすべてのランクが決まってくる。つまり立地はコンセプトのハード面、客単価はコンセプトのソフト面を担う、ということになる。そのポイントを認識せずに、飲食店を開店する人が多いのが現実で、結果として、開店して一年後には30%が廃業し、2年後には約半分しか残っていない状態になってしまう。もちろん閉店にいたる過程は様々ではあるが、要は売上が目標に足らないのが最も多い理由だ。つまりコンセプトにあった総合的な店づくりが出来ていなかったということに尽きる。経験上からだが、飲食店(レストラン)開店にあたって、仰々しく華やかな開店を演出した店があっという間に閉店したという事例は多くある。逆に静かにひそやかに開店して後、じわりじわりと顧客を増やしていき、押しも押されぬ名店に育ったという飲食店もある。華々しい開店は一時的に客を集めるが、接客や料理の不備によって、またコンセプトの不統一によって、リピート客を減らしていく。逆に少しずつでも顧客を増やすための努力を重ねれば、リピート客が店を支えてくれる。飲食店激戦区で、5年、10年と営業を続けている店は、皆、見事にコンセプトの統一感があるものだ。                 2022年9月1日  間島

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顧客満足の複雑さ164(養殖事業への挑戦)

      顧客満足の複雑さ164「養殖事業への挑戦」  

テレビのワイドショーや、お笑芸人が主流のいわゆる仲間内冗談連発バラエティー番組を見なくなって久しいが、一般人取材を中心に構成された番組には、興味を惹かれるものもある。そこには、受け狙いのあざとさが無く、日常生活への真摯な姿勢をかいまみることができるからだ。そんな番組の中で、日本の漁港を回り、局ディレクターが、漁師さんに”おいしい魚を食べさせてもらう“という、ある意味、厚かましい番組がある。漁師さんたちのサービス精神に助けられて、おいしい魚にありつける確率は非常に高い。皆、親切で優しい。ただ、漁港によって、規模や漁獲量の差異が大きいと感じることが多い。盛んな漁港はやはり元気さが違う。              

そこで日本の漁業生産量が気になった。1984年の漁業生産量1282万トンをピークとして年々減少し、2016年には436万トンと3分の1にまで減少している。その後は海洋状況によって微増または微減を繰り返す、といった状況か。その結果、当然に輸入量が増え、2016年には44%を輸入に頼っている。1960年代は113%の自給率で日本は魚介類の輸出国だったのにもかかわらずだ。最大の要因は国内外を含む乱獲による資源量の減少で、他国も危機感をつのらせ、イギリスやカナダでは大規模漁獲制限を設けている。その点では日本はまだまだ消極的ではある。世界の漁業消費量は増大を続け、今や争奪戦が始まろうとしている中、自給率をあげる大切さは自明の理でもある。求められるべき政策の要は養殖漁業拡大への転換だ。現在、漁業生産量の20%強が養殖関連生産になっている。魚種によっては養殖の占める割合が自然漁業より高いものも多い。真鯛では81%、クロマグロは61%、ブリ・ハマチ種で57%が養殖もので、トラフグやヒラメ、シマアジなどが続く。また、牡蠣はご存知、養殖が主体で広島県が60%以上の水揚げを誇っているが、漁業全体の活性化を目指すには、ほど遠いのが現状ではある。農林水産省の思い切った政策は期待できそうにない。

そこに朗報が入ってきた。魚介類の育成を陸上施設で行う「陸上養殖」に異業種からの参入が相次いでいるという。関西電力がエビの陸上養殖に取り組んでいることは以前にも書いたが、いよいよエビの飼育が始まるらしい。年間80トンの生産を見込む。他、三菱商事がサーモン養殖、日揮HDがサバの養殖、JR西日本がカワハギ養殖など、それぞれが自社のIT技術を生かしての挑戦だ。陸上養殖は飼育管理がしやすいため生産性の向上がのぞめるのに加え、人が行うのは軽作業で済むので人材確保もしやすい。まだまだ試行錯誤は続くだろうが、市場拡大に多いに期待したい。近未来には漁業そのものの形態が変化していくかもしれない。

2022年8月1日  間島

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顧客満足の複雑さ163(価値を認識する)

      顧客満足の複雑さ163「価値を認識する」  

ほんの身近な些事ではあるが、自分にぴったりとくる歯ブラシを見つけるのはなかなか難しいものだ。で、いろいろと試して、ベターな状況で妥協している。そんな中、昨年訪れた宮城県の老舗旅館から未使用のままに持ち帰った歯ブラシを使ってみて驚いた。ブラシの固さ、密集具合が何とも使い勝手が良く、二週間使用してもどこもへたらない。ビジネスホテルで同じく未使用のままに持ち帰る歯ブラシは、二度ほどの使用でブラシ部分が無残にへたってしまってゴミ箱行きになる。この違いに、老舗旅館の矜持を見た思いがした。歯ブラシひとつに厳選された目利きがあり、誇りがある。この誠意を今さらながら、受け止めさせていただいた。宿泊価格が高いから当然だ、とは思わない。価格の重みを提供側が真摯にとらえていて、すべてに手を抜かないということだろう。たかが歯ブラシ、されど歯ブラシだ。 

さて、能力という面からいうと、各分野で活躍している人だけに限らず、すべての人が独自のすぐれた力を有しているともいえるが、常人にはできない善行を地道に続けている人もいる。軽めの時代劇俳優とばかり思っていた人物が、長年にわたりアジアの孤児や障がい者の支援を続けていると知り、驚いたことがある。ただただ頭が下がる。それを売名行為だ、偽善だという向きもあるが、言わせておけばいい。いつの世にも、やっかみ者はいる。人気の高い世界的なアスリートをこきおろす人もいる。その人がどれだけの過酷な練習を積み重ねて栄光を手にしたのか、の想像力もない。これもほっておけばいい。そのアスリートは10年以上も東日本大震災で被害を受けた地域・人々に寄付を続けていると聞く。悪事はいずれバレる、というが善行も本人が望まないのにバレてしまうものなのだ。だから善行を知ったときには、第三者は黙ってこうべを垂れればよいだけのことだ。 

ここにきて、インバウンド期待がにわかに高まりだしたが、テレビはいまだにインバウンド客減少の恨み節を流し続ける。売り上げが半減したままで青息吐息状態のホテルや観光地・街の盛り場の店を取り上げる。コロナ禍にあって売上拡大・笑いが止まらない企業や会社は取り上げることも無い。メディアほど不幸や不満が好きな業界も無いだろう。そもそもインバウンドが急激に伸び出してから10年にも満たない。2015年から急増して、2020年をピークとした場合、たかだか5年間強の享受に過ぎないのだ。それまでどのような営業をしていたのか、利益はどの程度であったのか、の掘り下げもなく、インバウンドの復活を願うだけの報道姿勢が目に付く。ある番組で、“国内客の旅行や飲食は富の分配だが、インバウンドのそれは富の増加なので、結果の値打ちが違う“といった発言を、聞いた。一瞬、旨いことを言う、と感心したが、大きな勘違いがある。富の分配そのものがスムーズに機能していない上に、分配できる富のボリュームが人口のわりに低いという現実が忘れ去られている。政治や行政に、真に国内需要を増やす政策立案の力が無いのだ。一部の業界重視等の政策は旅行分野においても見られるが、全体の需要喚起とそれに伴う富の分配まで考慮した政策はいまのところ見えてこない。

2022年7月1日  間島

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