食文化の豆知識」カテゴリーアーカイブ

P&Cネットワークの間島万梨子がお届けする、食文化や食の安全をめぐる連載レポート。
旬の話題を含めて、食の大切さを綴ってまいります。

【第36回】 [ 食環境の現状(15) ]

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 外食業界の市場は、ここ数年横ばい状態が続いていますが、次々に新しい商業施設がオープンし、それに伴って新しい飲食店も登場しています。5月にも淀屋橋に都心型商業施設[淀屋橋odona(オドナ)が、オープンし、12店舗の飲食店が入っています。大阪の名店揃いのようで、楽しみです。

りんくうタウンにも、昨年新しい商業施設がオープンしました。この地は、関西空港開港時に、華々しく大規模開発されたエリアですが、その後の景気低迷のあおりを受けて、周辺地の企業誘致はスムーズとはいえません。まだまだ充実したとはいえない状態ですが、[シークル]という、この新しい商業施設の登場は、周辺地のアウトレットや大型家具店、電器店との回遊性を可能にし、人の集まるエリアとして遅まきながら息づいてきたように思います。

当然に、その施設にも、何店舗かの飲食店が入っています。何度か、足を運ぶ内にお気に入りの店も出来て、家での料理をさぼる口実が増えたと、ほくそえんでいたのですが、その中の1店舗が、早々と店じまいをしてしまいました。まだオープンして半年足らずです。ソーゼージと世界のビールが売りのレストランでした。ランチは、野菜たっぷりのスープ、パスタ、パン、コーヒーで確か780円。

しかもパンは、手作りの3種が食べ放題です。しかも美味しい。良心的でしょう?でも、アラカルトで頼んだ肝心のソーセージが、今ひとつの味わいだったので、夕食利用はしないままに終わってしまいました。

オープンするのに、どれjほどの努力や苦労があったことかと察すると、この何とも急な閉店は、心痛むものがあります。第一の原因が売上げ不振であることは自明の理でしょう。何故、売上げ予想(当然に立てていたはず)に至らなかったのか。理由は、まず店規模が大きすぎたこと、隣にパスタなどのバイキングレストランが出店していること、そしてメインであるべきソーセージの魅力が乏しかったこと、などではないかと、勝手に想像しています。つまり、飲食店にとって、間違った戦略をとってしまった。身の丈に合わない規模、周辺店との類似化(差別化の失敗)、メイン料理のコンセプトの弱さetcです。どれも重要なファクターです。

最近は、特に閉店のスピードが早いような気がします。”傷の浅い内に撤退”。確かにビジネスの定石ですが、オープン前に、売上げを担保する集客を可能にするためのマーケテイング活動が、真剣になされたのか、疑問が残るところです。客が予想より少なかった理由は、必ずあるのです。成熟市場といわれるこの業界で、店を継続するのは簡単なことではありません。

  平成20年6月10日 記    P&Cネットワーク  間島万梨子 

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【第35回】 [ 食環境の現状(14) ]

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牛肉表示の産地偽装やブロイラーを地鶏と偽って販売したかどで民事再生手続中の高級料亭で、客の食べ残した食材を別の客に使い回していたことが発覚しました。まあしかし、次から次へと出てくるものです。内部告発による発覚でしょう。この会社は本当に人使いが下手だったのだなあ、とまさにブラックジョークの一つでも言いたくなります。果たして再生が可能でしょうか。徹底的に内部改革を行ってほぼ信頼を回復し、キオスクでも現在、順調に売れている赤福とは大きな違いです。

今回の”使い回し”が果たしてどのような罪状になるのかは分かりません。保健所に届けたそうですが、現状の法律では、○○違反と具体明示出来ないのではないでしょうか。だからといって許される所業ではありません。数年前、ある居酒屋のコンサルテーションをした時のことを思い出しました。客単価2000円前後の大衆居酒屋で、いかに売れるメニューを作るかに苦心しました。また、1品400円~500円が主流の料理価格から儲けを抽出するには厳しい原価管理が必要でした。いかに安い仕入れ先を探すか、いかにローコストの食材を売れる料理に仕立て上げるか、の知恵の結集です。

飲食店は素人でも開業出来ますが、利益を上げるには大変な労苦が伴います。1人2000円以下の客単価ではなおさらです。その居酒屋で、食材の使い回しをしていたかどうかまでは分かりませんが、オープンキッチンであったので、あからさまな”使い回し”は難しかったと思います。

さて、この高級料亭での”使い回し”が、何故これほど騒がれるのか。それは多額な費用を客に負わせながら、他の客の食べ残しを再利用するという、いやしい違反ビジネス故に他なりません。[手つかずの料理は食べ残しとは違うと思った]の言い訳は、まさに噴飯ものです。飲食店では、残った料理はすべてが”食べ残し”なのです。少しでも箸が入って身が崩れた焼き魚は、さすがに他客に出すわけにはいかない。手つかずの魚なら他客に出しても分からないから使い回す。これは商売の本質を理解していれば、到底出てこないやり方です。

商品は、支払った人に帰属する。費用を支払った人がその商品の持ち主となる。また新品と信じているからその値段を支払う。商売の鉄則です。中古の家を新築と称しては売れません。衣類でも、中古販売があります。アウトレットも賢い販売方法です。店も客も双方が納得して満足するからです。他の客が支払った食材を、そのまま他の客に売ることが、いかに信義に劣るやり方であるか、この料亭では分かっていなかったのでしょうか。手つかずに返された料理は中古品なのです。決して新品としては売れません。それと納得の上、まかないに回すなどの工夫で利用する手もあります。

どの飲食店でも大量に食材が残るものです。その食材をどうするのか。当然のように廃棄するのか、猫jに食べさすのか、飢えた人に食べてもらうのか、生ゴミ処理機でバイオ肥料とするのか、法律の範囲内で、それぞれの方法で処理されます。でも、他の客に知らぬ顔で売るのは御法度です。

 

平成20年5月8日 記      P&Cネットワーク  間島万梨子 

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【第34回】 [ 食環境の現状(13) ]

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度重なる食の安全を脅かす事件の発生で、流通する食材の安全性に留意する人が増えてきました。最近、スーパーマーケットなどで、パックされた食品の裏側をじっと見ている人が多くなりました。若い男女が、お互いの顔を近づけて、熱心に原産国や原材料などの表示をチェックしている光景は、ほほえましさを感じます。そうなのです。食生活は、若い頃からの蓄積が大切。そして何より、消費者の厳しい眼力こそが、食品業界にとって手強い反面、志ある生産者にとっては有りがたい味方にもなり得るのです。消費者が安全でおいしい食品にこだわることが、見栄えや保存、量の水増しのためにたっぷり添加物を投与された食品の撤退を促すことにつながるのです。

お刺身に付いているビニールの小袋に入ったわさびにしても、質は様々です。
異なる店で刺身を買って、それぞれのわさびを比べてみました。一つは、原材料として[西洋わさび、本わさび、酸味料、香辛料、香料、着色料(クチナシ)]が記載されています。もう一つは[西洋わさび、からし、水飴、なたねサラダ油、食塩、酸味料、VC、香料、着色料(黄色4号、青色1号)]となっています。前者の食品会社の方に、エールを送りたいと思いませんか。黄色4号は、合成着色料の中でもアレルギー性が高いと言われています。また青色1号は、発ガン性の疑いが出て、ヨーロッパでは禁止されている国もあります。

多くの着色料が日本でも禁止されてきましたが、依然として10種類以上のタール系合成着色料が認可されているのです。いつ何時、[この着色料は人体に危険であることが判明したので、食品に使用することは禁止する]と厚労省の発表があるかもしれません。たっぷりと摂取してしまった後で。
美しく見せる為に、安全性が担保されていない合成タール系着色料を平然と使用する食品メーカー。合成着色料はとても安価なのです。

美しい和菓子。タール系合成着色料が使用されているものが多くあります。
とてもカラフルで鮮やかな色彩は、赤色3号や青色1号などのタール系合成着色料が頑張って作り出した自然には無い幻の色合い。それら派手な和菓子の横にある地味な色合いの和菓子。小豆と砂糖、国産小麦が原材料でした。迷わず手にとって、お土産の1品としました。

 

平成20年4月16日 記      P&Cネットワーク  間島万梨子 

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【第33回】 [ 食環境の現状(12) ]

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【第33回】   [ 食環境の現状(12) ]

最近良く耳にするのが、“日本型食事の奨め”です。食の洋風化が食料自給率の低さの一因でもあるので、ここで日本本来のコメ中心の食生活を見直しましょう、という提言のようです。とても耳に心地よく、反論の余地が無いような主張です。でも、この“日本型食事の奨め”とは、具体的にどういった内容を指しての提言なのでしょうか。
 
 
[ご飯、薄揚げとネギの味噌汁、納豆、湯豆腐、大根の漬け物]。典型的な日本の朝食です。さて、コメです。かつかつ自給は出来ていますが、消費量が生産量を若干上回っています。外食業界や弁当業界では、安い輸入米を使用しているところも結構あるのが現状です。そして、ネギ、大根は、国内産でまかなえるでしょうが、その他は全滅です。薄揚げ、納豆、豆腐、味噌の主原料である大豆は自給率5.1%という壊滅的な状況にあります。納豆や湯豆腐にかける醤油も、主原料として大豆は欠かせません。大豆の輸入なくして、“日本型食生活”は決して成り立たないのです。
 
 
むしろ、クリームシチューの方が優秀です。クリームシチューが洋食かどうかは意見の分かれるところでしょうが、鶏肉や乳製品は自給率60%台を維持していますし、タマネギ、人参、じゃがいもも、まずは優等生野菜です。前述の“典型的日本型食事”より余程、国内産食料でまかなえるというものです。
大体が、食の洋風化といっても、専門レストランは別にして、個々家庭ではせいぜいがハンバーグ、カレー、シチューといったところではないでしょうか。
 
 
国産食料のみで成立する“日本型食事”など不可能なのです。自給率の低さの根幹は、大豆、小麦などの基礎食材の国内生産量の絶対的不足にあるということ。つまり、穀物と呼ばれる食材の国内生産量を高めずして、国としての安寧はあり得ません。他国は自国の倉庫でも冷蔵庫でもありません。いっときそれが可能でも、不測の事態発生時(その国の干ばつなどの異常気象や経済情勢の激変)に、自国を犠牲にしてまで、日本に基礎食材を安定供給してくれるでしょうか。
 
 
この世界は、貿易の発展が経済の繁栄を約束するのは勿論ですが、こと、食に関しては、他国に頼る危険性をもっと深刻にとらえて、早急に対策を立てねばなりません。これは一つの省の業務ではなく、国家戦略でもってあたらねばならない問題ではないでしょうか。
 

平成20年3月20日 記

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【第32回】 [ 食環境の現状(11) ]

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【第32回】   [ 食環境の現状(11) ]
 

冬将軍とともに日本を襲った中国製ギョーザ中毒事件は、危うく人命が失われそうになったがゆえに、日本中を震撼させました。これまでの食品偽装問題とは犯罪性そのもの性格を異にする事件で、両国間での様々な機関や組織がからんでいます。真相究明への道は容易ではないかもしれませんが、1日も早い解決が望まれます。

 

この中毒事件の発生後、日本の食の脆弱さを指摘する論調が目立っています。
当事者には不幸で気の毒な事件ですが、これをきっかけに、行政や政府の危機管理意識の低さに注目が集まりました。そして何より、カロリーベースで40%を切る食糧自給率の現実を、メデイアがこぞって取り上げだしたのは歓迎できます。でもその多くが、低い自給率の理由として食の洋風化による国民のコメ離れ、農業の後継者不足に軸を置いているのは、首をかしげたくなります。

 

農林水産省のデータは昭和35年から出ています。まず人口は昭和35年で9400万人。2007年で1億2776万人ですから、47年間で1,36倍の伸びです。思ったほどの人口増加ではありません。生産量などのデータは昭和35年と2005年との比較になりますが、コメの消費量は昭和35年を100とすると約27%ほど確かに減っています。でも、生産量も30%落ちています。そして今は、消費量が生産量を若干上回っているのです。つまり消費量に見合った量を調整生産しているのです。価格安定のためという名目が、何とも官僚の限界を露呈しているとしか思えません。

 

国民が、行政のかけ声通り、コメをパクパク食べ出したら、農家にあわてて増産指令を出すのでしょうか? それとも、そんなことはあり得ないとの前提で、皆さん、コメを食べましょう!を無為無策の隠れスローガンにしているのでしょうか?米作に適した国土をフルに生かし、生産量を増やし、コメを原料とする食品開発によるコメの利用促進をはかるくらいの国家戦略は練って欲しい。

 

最近、とても心踊るうれしい新聞記事を目にしました。大分県の酪農家の紹介ですが、大規模経営で成功している方です。知恵と研究を結集し、自由化に負けない大規模酪農を実現されました。補助事業に頼りすぎず、農水省と生産者団体の「調整」にも異を唱えておられます。価格安定を図るため、コメの減反と同様に牛乳の生産調整が進む中、”意欲のある生産者を抑えこんではいけない”と指摘されています。大学とも連携し、大規模な放牧地の有効利用の研究も進んでいるとか。まさに民間の力です。

 
 
 

 

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【第31回】 [ 食環境の現状(10) ]

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【第31回】   [ 食環境の現状(10) ]
 

昨年ほど、「偽装」という文字を日常に目や耳にする年は無かったように思います。おかげで、「偽」は昨年のキーワードにまで出世?してしまいました。今年は是非とも「真」の重みを増していきたいものです。

 

ただ「安全」が益々注目され、重要視されてくると、またぞろ「偽」の文字が行き交うことになる可能性は大いにあります。それも結構。食に関連する業界の安全第一主義並びに衛生管理は、高邁な企業倫理の元で徹底して遵守するべきだろうと思うからです。”人の口に入れるものを売る”ということは、その人の命を預かっていることと同義なのです。

 

でも、その「安全」が金科玉条のごとくに提供側から振りかざされると、首をかしげたくなる場合もあります。ある高級ホテルのカフェでのこと。年末年始特別コースとやらは食べる気がせず、アラカルトを頼みました。通常の、コンパクトでリーズナブルなランチコースは姿を消し、ボリュームある倍ほどの価格のコースにとってかわっていたからです。やれやれ。

 

私たち二人が頼んだのは、ピザ一皿とパスタ一皿。それに人数分のミニスープ。ピザとパスタはシェアしようというわけです。妥当な注文でしょう? ところが、スープの後に配膳されたピザは優に5~6人前はありそうなビッグサイズ。メニューには、ハーフサイズの案内はありませんでした。パスタもボリュームがあり、私たちはまずパスタは頂くことにして、ピザは持ち帰ることにしました。美味しそうなチーズの香りは夕食時に家で楽しむことにしましょう。

 

残念ながら、その要望は却下されました。理由は”安全に厳しい時期なので””安全重視でございまして”まさに「安全」オンパレードです。でも、今は極寒い時期で、しかもピザですよ! 街場のレストランは、中華でもイタリアンでも、生もの以外はスムーズに持ち帰らせてくれます。そのホテルでは、万が一の食中毒発生時責任追及を恐れてか、保健所の指示か、前例がないからか、適当な持ち帰り用のケースが無かったのか、単に面倒くさいだけなのか分かりませんが、こうなると、「安全」って一体何なのでしょう。

 
こういう場合、利用者の希望に添うことで「安全」が軽視されるとは思えません。また、目の前にいるのが、馬ではなく人間だと判断出来れば、”食べきれないと存じますが”の一言は注文時に欲しいものです。そういうアドバイスを上質のレストランで、以前耳にしたことを思い出しました。
 
 
 

 

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【第30回】 [ 食環境の現状(9) ]

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【第30回】   [ 食環境の現状(9) ]
 
様々な偽装事件が発覚している中で今度は居酒屋チェーン3社が、公正取引委員会より馬肉不当表示のかどで、関連料理の排除命令を受けました。脂を注入した馬肉の赤身肉を「霜降り馬刺し」「極トロ馬刺し」などの呼称で販売していたというのです。景品表示法違反にあたるとか。
 
白木屋などを展開するモンテローザ、酔虎伝などを展開するマルシェ、居酒屋チェーン村さ来の3社と、納入業者2社に対して排除命令が出されました。マルシェは早速、代表者等による会見を行い陳謝しました。マルシェを含む3社ともに、自社ホームページ上で謝罪文を掲載しています。内容は似たようなものですが、”業者から納入した時点ですでに「霜降り馬肉」と表示されていたものの、内実は脂を注入した馬赤肉だとは認識していた”とマルシェは謝罪会見場で認めました。知る限りでは、他の2社は今のところその点では謝罪していません。
 
このようなことは、現実には珍しいことではありません。「ネギトロ」も、本物のトロではなく、赤身を細かくしたものにサラダオイルとネギを混ぜて売っている店は少なからずあるのです。「牛サイコロステーキ」も、つなぎ肉を成型したものが堂々と販売されています。料理名に対する規制まで、法の目は及んではいないのが現実です。ある店でのボリュームたっぷりの「牛サイコロステーキ」は確か480円です。その値段で厚切り牛肉が食べられるはずもない。豪州産でも無理というものでしす。アブラガニでも「タラバガニの寿司」という料理名で売れるのです。「霜降り馬刺し」も、その延長線上でのことでしょう。でも、料理名を信じて食べる方が幸せかもしれません。または、この値段では本当は違うものなのだろうな、と納得の上で食べるかです。
 
その点で言えば、今回の公正取引委員会の処置は、飲食店を震撼させる厳しいものです。いずれ、飲食店の料理も種々規制が強まると思わせます。冗談ではなく、そのときには「ネギトロ」もどきは、どうネーミングされるのでしょう。
「牛サイコロステーキ」は、「牛つなぎ肉の固まり」に?。まさにブラックジョークの世界です。著しい過大表示は使えなくなりそうです。
 
でも、正直さが最高の美徳であるべき業界、つまり現実には偽装に満ちた業界や社会は、食品関連以外の方が多いと思いませんか。
 
 
 

 

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【第29回】 [ 食環境の現状(8) ]

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【第29回】   [ 食環境の現状(8) ]
 
日常の食料品の購入は自宅近隣のスーパーマーケットですませることが多いのですが、都心から自宅への帰路のついでに、いわゆるデパ地下を覗くのも結構楽しいものです。
スーパーでは手に入らない高級食材や惣菜、珍しい野菜など、デパート食品売り場は新鮮な驚きに満ちています。多くのデパートで地下食品売り場が部署売上げNO1を誇るというのもうなずける豊富な品揃えです。いつでも人で溢れています。
 
人が集まれば集まるほどその売り場(店)は、より充実した内容となる、の原理原則はデパ地下でも生きています。食品のバラエテイさではスーパーマーケットを凌いでも、やはり値段は高め、というのがデパートに対する率直な印象でしたが、最近ではその常識をくつがえすようなケースに出くわすこともあります。ものによっては、スーパーマーケットよりはるかに安いのです。
 
特に野菜の充実は目を見張るものがあります。一番デパートが苦手だった生鮮青果品売り場が変身を遂げています。特産地からの着実な仕入れ努力が見て取れます。例えばスダチ。
個人的にとても好きな柑橘類で、レモンやゆず、カボスより美味しいと勝手に思いこんでいるのですが、結構高いのが玉にきず。それがあるデパ地下では12個入って120円!おおよそスーパーの五分の一の価格です。勿論徳島産です。丹波産の枝豆(黒豆)もずっとデパートで買っていました。上質だったからです。どちらもそろそろ出荷は終わりますが、ずいぶん楽しませてもらいました。
 
デパートで売られている青果品は各地農協からの仕入れによるものもあるでしょうが、担当者が直接、生産農家との交渉に当たることも多いと聞きます。
上質の品を探しだし、リーズナブルプライスで提供する。デパ地下のパワー恐るべし、といった最近の動向です。”どのようなものが売れるか”のマーケテイング力も、食品売り場は他部署と比べて群を抜いているのでしょう。売れるところは益々充実してくる、の例え通りです。進化し続けるデパ地下から目が離せません。
 
 
 

 

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【第28回】 [ 食環境の現状(7) ]

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【第28回】   [ 食環境の現状(7) ]
 
某新聞で連載されていた食関連記事が、執筆担当者の交代に伴い、軸足も大きく変わりました。「くらし安全」という大テーマは従来通りですが、食の安全に対する行政の取り組み方を中心に構成されていた論調から、現在の法規制の問題点を突く先鋒的内容となりました。まだ変更間もないので、今後の展開を見届けたいと思いますが、この変化は歓迎すべきものととらえています。
 
今まで何度も、首をかしげたくなる内容記事を目にしていたからです。「国では食糧自給率を高めようと検討しているところです。・・・・・」に続く、「国民も、自給率の高いコメ中心の食生活を実践するよう・・・・」に至っては、まさに自分達の無為無策ぶりを、国民に転嫁しようという姑息さが透けて見えます。先進国の中でも飛び抜けて低い食糧自給率は、国家としての戦略の貧しさの結果ゆえであるのは、誰が考えても分かることです。
 
日本古来の伝統食である味噌、醤油、豆腐などの主原料、大豆の自給率は果たしてどれ程のものなのでしょう。多くの人に愛されるパンやうどんの主原料、小麦は? 大豆は約20%、小麦は14%前後。これが全体の消費量のなかで、国産ものが占める量なのです。あとはすべて輸入に頼っている現状を、どう道理付けしようというのでしょうか。”輸入した方が安くつく”の理由などは、まさに農業政策の無策ぶりを証明したようなものです。
 
また、中国産食品への信頼の低下する昨今、厚生労働省以下、いかに熱心に検査検疫を実施しているか等、輸入食品の安全確保の制度や取り組みを説明した内容も目立ちました。つまるところ、食料自給率が40%前後に過ぎない今の日本には、輸入食品は欠かせないので云々、という本音が見え隠れしています。
 
新しい連載の第一報は、「中国産食品への不安の広がりを受けての、小売店や消費者、マスコミの取り上げ方が過剰反応との声もあるが、そうは思わない」から始まり、農薬や薬剤のずさんな使用方法への不信、原産地を表示する義務の無い弁当、惣菜などの加工食品やファミリーレストランでの使用などの不透明性をあげて、食品表示のさらなる重要性や透明性を訴えています。
 
食を預かる業界全般の情報公開は、まだまだこれから始まったばかりなのです。
法律は、いつも後手後手に決められるといった印象を、払拭してほしいものです。
(平成19年10月18日著)
 
 
 

 

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【第27回】 [ 食環境の現状(6) ]

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【第27回】   [ 食環境の現状(6) ]
 
仕事上、外食の機会は少なくないものの、日ごろは勿論、自宅での食事が主流となります。すべて手作りとはいきませんが、なるべく素材そのものを生かした料理を心がけています。単に、凝った料理が面倒なだけなのですが・・・。
それでも、いつも同じ調理方法では能がないと、料理研究家の執筆する新聞や専門誌の料理を参考にすることがありますが、大体は見事にはずします。レシピ通りに作っても、家人には不評を買います。自分の腕が悪いのも確かですが、率直に言って、我々にとっては美味しくないものが出来上がるのです。
 
何故なのか考えてみました。素材そのものを余りいじらずに、ただ相性の良い調味料でいただく料理法はそこにはなく、何らかの意外な組み合わせ、意外な調理法が、提案されている。誰でもが知っている料理、食べ方では、商売にならないのでしょうか。あくまで自論ですが、素材そのものをシンプルにいただくことが家庭料理の真髄であり、手を加えて目新しいものを作ろうとすればするほど、本来の素材の旨さがそこなわれていくような気がします。また、揃える材料にも限界があります。
 
やはり、凝った料理は上質のレストランでプロの味を楽しむに限ります。中華料理、フランス料理などは、自宅で作ろうとは思いません。家では、冷や奴と枝豆、野菜の煮付け、野菜のスープ、焼き魚、時にはお肉etcがあれば、充分に満足。ただし、調味料やお酒などは、本物を使うことです。それらしきまがいものを使うと、確実に味覚が鈍化します。
 
外で買い求める食品加工品も多々あります。食パンや漬け物、牛乳など。手作りでまかないきれないものが、便利な形で売られているのはとても助かります。
漬け物は、家できゅうりやナスをひと塩しても結構いけますが、市販のものは食卓をにぎわせてくれます。でも、しっかりと裏の原材料表示を見ることをお勧めします。特に、きれいな色合いのものには、とんでもない添加物が使用されていることが多々あります。国産の野菜かどうかのチェックも、時勢がら必要です。減塩と称して、保存料たっぷりのものもノーサンキュー。それらがてんこもりに記載された漬け物を見るにつけ、ため息が出てきます。
 
自分の口に入れるものに、少し気を遣ってみる。そしてくどいようですが、米と麹だけで作られた酒。大豆、小麦,食塩のみを原材料とする醤油。もち米、米こうじ、焼酎から作られた純味醂。これだけでも、こだわることで、ずいぶんと料理の美味しさが際だつものです。
 
 
 

 

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