食文化の豆知識」カテゴリーアーカイブ

P&Cネットワークの間島万梨子がお届けする、食文化や食の安全をめぐる連載レポート。
旬の話題を含めて、食の大切さを綴ってまいります。

【第46回】 [ 食環境の現状(25) ]

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世間をにぎわしている漢検問題、正確には(財団法人)日本漢字能力検定協会の前理事長以下
関係者の背任横領が問われている事件です。同協会は1975年に前理
事長らによって発足し初回
は全国でたった700人程度の受検者であったといい
ます。それが今では年間280万人もの人が
受検する超人気検定にまで成長しまし
た。1992年に公益法人となったことも、人気に火を付けた
ものと思われます。
ここに至る道のりは並大抵のものではなかったでしょう。我が国には様々な
協会が
ありますが、ここまで成長するには、漢字ブームの後押しがあったとしても、身を粉にして
協会の発展に心血を注いだ人の努力が実を結んだことは確かです。
 

でも予想もしなかった巨額の利益を前にして、初心は葬り去られ私物化の一途をたどることに
なります。公益法人が税制でも優遇されているのは、利益がでれば社会
のために役立てるという
役目を担っているからです。自分で好きなように億単位の
お金を使いたかったのなら、一個人会社
のままでいればよかったのです。公益法人
というお墨付きをもらいながら、好き勝手に私物化する
ことは、許されません。

ただ、この漢検は良くできた検定だと思います。ごまかしがない。漢字能力を試すだけのもの
だからです。ビジネス上の有利性を保証しているわけでもないようです。個々人の漢字好きが
後押ししたのです。メデイアもさかんにもてはやしました。

 

一方、巷間には、○○検定があふれています。もともと検定なるものは自由に創り上げることが
出来るのです。一会社が協会と名乗ることも出来ます。色々な知識の
習得にチャレンジしたい
人達向けに、まさに検定のオンパレード時代になってきま
した。それはそれで結構なことだと
思います。人間生涯勉強。どんな検定でも、相
応の勉強は必要です。頭の体操にもなります。
自分の仕事に関連したものなら、チ
ャレンジしたいと思うのは当然かもしれません。

 

しかし、数ある検定の中には、うさんくさいものもあります。資格ビジネスと呼ば
れる類です。
検定に合格すれば、このような仕事に就くことが出来ますよ、という
誘い文句。食関連でも、
食への関心増大という時流に乗って、色々な検定が出てき
ました。ただ、国の認める資格では
ない限り、あくまで個人的知識の習得の範囲で
あるべきで、多くはその範囲内で受検者を
つのっていますが、中には首をかしげる
ような検定も存在します。その見分け方は?
「検定に合格すれば、こんな仕事が出
来ます」は、疑ってかかった方が良さそうです。また、
法外な費用を請求するとこ
ろも要注意。講義さえ受ければ資格進呈というのも講義料がとても
高い場合があり
ます。要は、検定はあくまで自分の生活知識向上のため、もしくは自分の仕事に
ラスアルファになると判断してチャレンジするものだと思います。

 

平成21年5月15日 P&Cネットワーク 間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

 

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【第45回】 [ 食環境の現状(24) ]

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メディアが取り上げる食材に関する情報は、主に健康を保持する食生活への提言を

基に組み立てられていることが多いようです。例えば健全に痩せる食材、血圧を下

げる食材、糖尿病予防の食材、便秘に効く食材、お肌に良い食材などなど。その多

くは生活習慣病予防に役立つ食材情報といったところでしょうか。

 

その発信元が新聞である場合、反響は穏やかなものですが、テレビとなると狂乱と

まではいかずとも思いもかけない混乱を招くことが多々あります。紅茶きのこ、コ

コア、マロニー、バナナ。筆者自身はテレビは余り見ないので、現状を目にしてそ

の理由がテレビであることを知るわけです。朝食に欠かせないバナナが売り場から

消えてしまったのは何故?鍋物にいつも入れるマロニーが見あたらない!

 

紹介される食材すべてが自分にかかわることは無いのですが、日常に食している食

材が売り場から消えると、正直あせります。でも、大抵が3~4週間ほどの不便を

がまんすれば元の平穏な状態に戻ります。一体、あの騒ぎは何だったの?という

感じです。食生活は、つまるところ自分自身の習慣が大きく作用するもので、一時

のブームに乗っかっても習慣化しない、ということなのでしょうか。あの美味しい

バナナにしても、テレビのダイエット効果情報に乗って買いあさった人達が飽きて

しまったか、思うような効果が出なかったので購入しなくなったか、多分、後者の

可能性大でしょう。バナナを食べるだけで痩せるはずもないのです。

 

肥満、高血圧、糖尿病などの生活習慣病の原因は、食が8割、遺伝的体質が2割く

らいではないかと思います。体質はいかんともしがたいところです。血圧は、同じ

ものを食べても加齢現象や体質によって、高くなってしまう人はいます。肥満も太

りやすい体質は確かにあるようですし、糖尿病も膵臓の能力差によって発症率が影

響されます。ただ発症しやすい体質を、食でカバーすることは充分に可能なのです。

 

体に良い王道的食材も食品もありません。どんなに良い成分が含まれていようとも、

そればかり食べて体にいいはずもありません。結構なうたい文句付きの高価な健康

食品を取るより、多種多様な野菜と良質のタンパク質をほどほどに食べる方が、よ

ほど体が喜ぶというものです。メディアもいい加減に、特定の食材宣伝を辞めて欲

しいものです。

 

平成21年4月12日 P&Cネットワーク 間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

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【第44回】 [ 食環境の現状(23) ]

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海外に行くと、自国との様々な慣習の相違を目にすることが多々あります。

渡航先は両手には及びませんが、それぞれに確実に日本と異なるものがあって

興味がつきません。それが海外旅行の醍醐味でしょうか。また渡航先が欧州か

アジアかによっても、相違の内容が大きく変わってきます。

 

特にそれぞれのお国柄を如実に知ることが出来るのは、食関連でしょう。日常に

不可欠な“食”は、だれでもが、その違いを実感できるものです。そして海外に

行く度に、日本の食レベルの高さを再認識させられます。まず味の繊細さ、見栄え

の良さ、素材の新鮮さ、洗練度合い、清潔さ、どれをとっても日本がトップクラス

であるのは確かなようです。子供の頃から食べ親しんでいるという理由だけではな

く、料理に関するこだわり度の高さは、国民性といってもいいのではないかと思い

ます。

 

かの国々でいただいた旅行社おすすめのレストランでの、馬が食べるほどのでかく

固いステーキ、うどんのようなスパゲッティ、臭いが気になる魚料理、山盛りのフ

ライドポテト、油っぽい焼きめし、味のめりはりが無い巨大サーモンステーキ、生

状態の人参・ブロッコリー、菜っ葉ばかり大盛りのサラダ、お化けのような無味マ

ッシュポテト、などなども、いい経験です。逆に思い出してもよだれが出るような

ロブズターの甘辛炒め、目にも美しい点心の数々にラッキーにも出会うこともあり、

海外での食事は誤解を恐れずに言えば、まさに博打そのものです。それはそれで楽

しい。

 

ただ“おおらかさ”という点で妙にうれしくなってしまうことが、海外では結構あ

るのです。繊細さや見栄えの良さは、下手をするとちまちまさにつながり、手をか

ける料理は値段の高さに反映されます。

日本人から見ると、あんなに大量の、しかもたいして旨いわけでもない料理を、美

味しそうに食べている現地の方を見ていると、こちらまで驚きを通り越して、楽し

くなってくるから不思議です。一様にどの国も日本人より食欲は旺盛でおおらか。

 

サービスも日本ほどには丁寧ではありませんが、かつての社会主義国を別にしては、

ナチュラルな素朴さを感じます。レストランでも、何か問題はないか、楽しんでる

か、などとフランクに聞いてくれる。そこには、型にはまらない各自の接客スタイ

ルがあります。その国に、大人を感じる瞬間です。

 

平成21年3月15日 P&Cネットワーク 間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

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【第43回】 [ 食環境の現状(22) ]

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 いよいよ、コメの減反政策の見直し改革案に、政府が取り組みはじめました。減反政策は、
いわゆる生産調整と同義語ですが、政府ならびに行政の農政への無策ぶり
を顕著に露呈した
ものといえば言い過ぎでしょうか。要するに、コメ消費が低迷し
だしたので、価格安定のためにも
生産量も減らしなさい。ついてはコメ農家がコメ
の生産を減らしたり他作物に転換すれば、
補助金を出して所得補填をしましょう、
という政策。

 

何と頭の要らない、つまらない政策でしょう。コメの需要拡大への知恵も策もなく、真に意欲ある
農家を押さえつけ、お金でかたづけようとする。そこには農業に従事
する人の票田をあてにしよう
との目論見もかいま見えます。票田のためには、兼業
農家でも零細農家でも数が多いままの方
が有利なのですから。

 

そして、減反政策がはじまってからの約40年で、7兆円もの税金がつぎこまれてきたのです。
結果として、生産効率の低いままに農地が分断され、みじめなほどの
食糧自給率の低下と、
荒れた休耕田の増加を招いてしまいました。今、求められる
のはコメの増産を需要拡大に結び
つける知恵の結集と、意欲的な農家の育成でしょ
う。農家のコメ作りへの自由な活動を促し、
農業を活性化していくためには、減反
政策の見直しは急を要します。

 

農地を集約して生産効率を高めるには耕作規模拡大が必要です。企業の農業参画を勧める

には農地借用の自由化も急がれます。持ち主が手放さないままに休耕田化している農地の有効

利用なくして、日本の農業の展望は開けません。限りある国土なのですから。

 

とにもかくにも、農業改革の扉は開かれました。意欲と能力のある農家への一層のフォローが政府
と行政の重要な役割です。世界の人口は増加しており、食糧不足は
避けられようもありません。
農政改革の必要性と具体的政策は明確です。あとはい
かに実行するかです。
現実に、飼料米づくりに邁進しはじめた農家もあるようです。

意欲ある農家や企業が、政府や行政の一歩前をすでに進んでいるのかもしれません。

 

平成21年2月11日 P&Cネットワーク 間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

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【第42回】 [ 食環境の現状(21) ]

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 昨年は食に関する様々な事件が絶え間なく発生し、その殆どは偽装に関連する内容のもの
でした。輸入品を国産と偽り、汚染米を普通米と偽り、賞味期限を偽り、ま
さに“偽”のオンパレード。
これだけ偽装が後を絶たない遠因のひとつには、食材が
いとも簡単に偽装できる特性を備えている
ことも考えられます。輸入品も国産も、
見かけは同じ様相を呈しているからです。産地にしても見た
限りでは、見分けがつ
きません。賞味期限も、腐乱しているわけではない限り、口にしても判断が
つきま
せん。そこを狙ったいやしい手口は、厳しく弾劾されるべきでしょう。

国産と偽れば儲け幅が大きくなる。人気の産地ものと偽れば良く売れる。ブランドものと偽れば
高く売れる。どの偽装も目的は有利に売りたいがため。だから消費者
も国産やブランドにあまり
こだわらずにいましょう、なんて提言も出てくる始末で
す。これを本末転倒の論理というのです。
消費者は自分の好みで、または予算で、
色々な物品を購入するのが当然です。中には、安いから
輸入食材で充分、という人
もいるでしょうし、産地にはこだわらないわ、という人もいて当たり前
なのです。

筆者はバッグをはじめとする服飾品のブランドものには、全くといって興味がありません。
重量と色と形が自分のニーズにあえば、あとは値段次第です。ブランドは
選別の対象にはなりま
せん。使い勝手が一番だと思うからです。でも、ブランドも
のを購入する人を決して非難などでき
ません。その人は、そのブランドにニーズを
見いだしているからです。だから日本では、偽物を売れ
ば厳しく検挙されます。
ブランドはブランドたるべく努力をして地位を保全しているのであって、
簡単に
ブランドに乗っかった偽物を作ってあぶく銭を稼いでもらっては困るわけです。

 

食材にしても同様です。国産や地場ものを購入する人は、農薬の適性使用や作り手の顔が見え
やすいことを原因としてあげるでしょう。フードマイレージに関心のあ
る人もいるかもしれません。
産地にこだわる人は、その産地ならではの価値を認め
ているのです。ブランドにしてもしかり。
だから多少高くても購入する。それらに
価値を認めない人、また予算上やむを得ない人は、
こだわりなく購入する。それで
いいのです
。食品添加物に対するこだわりは、もっと多くの人に持って
もらいたい
と思いますが、産地やブランド、国産の是非等は、ひとえに購入者の好みで選ばれ

てしかるべきです。だからこそ、偽装は重い罪であり、裏切りでもあるのです。商品・食材は、
自ら努力して付加価値をつけて売れるように努力するのが、市場
の論理です。ただ売れるものに
乗っかって差益をだまし取ろうという輩は、市場か
ら撤退していただくしかありません。

 

平成21年1月12日 P&Cネットワーク 間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

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【第41回】 [ 食環境の現状(20) ]

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先進国の中でも際だって低い我が国の食料自給率を巡っては、様々な意見や提言、

またここまでの低下を許した犯人捜しなど、かまびすしい主義主張の氾濫を招いて

います。そして、新聞・テレビなどで、たびたび目にし、耳にするのは“食の洋風化”に

自給率低下の最大の罪?を負わせる「識者」の声です。その後に聞こえてくるのは

“日本食の良さを見直そう”の大合唱です。日本食とは、ご飯、みそ汁、野菜の炊き合

わせ、魚の煮付け、納豆、冷や奴、あたりを指すのですか?ハンバーグやカレーライス、

焼き肉などは、洋風化によって生まれた料理なのでしょうか?

 

何か反論があるのか、とも言いたげな、得意満面の大合唱を聞くにつけ、彼らの幼児性

に辟易としていました。“食の洋風化”の言葉自体に偽善を感じるからです。

牛乳などの乳製品の需要増大を指すのか、畜肉の需要増大を指すのか、パンの需要

増大を指すのか。もしそうなら、食の洋風化は、まさに国民の体格を増進させ、健康の

保持に貢献する重要な役割を果たしてきたのです。問題は、国民の健康のため

避けるべきではない“食の洋風化”のための原材料確保を、安易に他国に依存してきたと

いうことです。行政の怠慢と戦略の見誤りの罪は大きいと言わざるを得ません。いわゆる

価格調整・生産調整が、日本の農業を振り回してきたのです。

 

自給率を巡る不毛のメデイア論争の中、やっとまともな戦略が打って出されました。

石破農林水産大臣が、食料自給率を10年後に現在の40%から50%に引き上げるため

工程表を発表したのです。そこには、企業の農地賃借規制の緩和や、パンなどの原材料

として需要が見込まれる米粉の生産量の拡大、飼料米の生産拡大、小麦や乳製品の増産

が、盛り込まれています。約38万ヘクタールの耕作放棄地の有効利用を促すための方策

も盛り込まれているようです。「自作農主義」を中心とした1952年制定の農地法を、56年 

ぶりに改正しようというものです。ただ結構、時間のかかる行程が待っています。

農地法改正案は来年の通常国会に提出される予定です。

 

総論賛成でも各論反対。大きな改正が望まれる時に必ず発生する、既得権益に引きずられる

反対論に猶予しないでほしいと思います。大きな改正は具体化が難しいものですが、

今こそ政治主導で未来のために、思い切った農政転換を図ってもらいたいものです。

 

 

平成20年12月9日 P&Cネットワーク 間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

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【第40回】 [ 食環境の現状(19) ]

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食の安全を脅かす事件の続発や、金融不安による株価暴落などの影響を受け、消費

が縮み志向にあると、繰り返しメデイアが報道しています。外食業界も、市場は一向に

増えず、むしろ縮小傾向にあります。全体の売上げも平成9年の29兆円をピークに徐々に

減少し、いまは24兆円前後で推移しています。それでも、百貨店と総合スーパーの売上げが

合計で16兆円強であることと比べれば、とても大きな市場であることは確かなのです。

 

食費は流動費であるがゆえに、家計から削られやすい費用であると言われ、世論調査でも

景気が下向けば“まずは食費を下げる“という結果が出ています。外食は特に回数や予算を

削られる傾向があります。それでも身近な娯楽である外食は、多くの人が楽しみとするところです。

頑張って欲しい。

 

仕事柄というか、根っからの食いしんぼなので、飲食店を利用する機会は結構あります。

そして感じるのは、ここ2,3年の大きな変化です。まず、インテリアが先行したデザイナーズ

レストランにかつての勢いが感じられません。ムードたっぷりの店内で出される料理は、何故か

創作料理とやらが幅をきかせています。そして、そんな料理や雰囲気を好む比較的若い層の

消費に、いま元気がないのです。

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ファミリーレストランも厳しい状態が続いています。相変わらず抜群の簡便性を誇る業態ですが、

たいして安くはないのに、際だって美味しい物は見あたらない。これはあくまで筆者の考えなので、

意見の分かれるところでしょう。ただ、現実にすかいらーくもロイヤルやデニーズも閉店店舗を

増やしています。採算の取りにくい店は、捨てていくのが生き残りの道なのです。

 

いま飲食店は、本来あるべき仕事をしているところが、お客の支持をしっかりと集めているように

思います。本来あるべき仕事とは? 美味しい料理に、それに見合った価格。プラス、フレンドリー

な接遇です。雰囲気は清潔で居心地良く、インテリアにオーナーのセンスが感じられれば、

別にきらびやかで豪華でなくてもかまいません。照明も暗めでなくてもOKです。そう、すべて

当たり前の要素です。

 

美味しい料理とは、その分野で一生懸命技術的に、かつ素材的に最高を目指して工夫している料理

です。教科書通りでもなく、固定観念に縛られるこもなく、独自の感性で魅力的な料理を編み出して

いる店。そんな店は例外なくお客さんで溢れています。どんな業種でも同じです。厳しい環境が、

かえって偽物を駆逐するのに役立っているのかもしれません。

 

平成20年11月5日 P&Cネットワーク 間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

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【第39回】 [ 食環境の現状(18) ]

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またも愚かしくもいやしい犯罪が発生しました。何らかの汚染によって工業用への

転化が義務付けられた輸入米が、一業者によって全国に食用に転売され、ばらまか

れました。大きな利ざやを稼いでいたのです。まさに濡れ手に粟とはこのこと。

この事件は偽装ではなく、犯罪そのものです。

 

転売米の最終使用業者、つまり市場での末端の食品製造業者は今のところ被害者で

はあるものの、事の内実を本当に知らなかったのか否かが、厳しく問われるでしょう。

また、万が一、農水省サイドの“見て見ぬふり”姿勢が露見するようなことになれば、

国を揺るがす一大事です。そこに癒着やなれ合いがなかったのか、金銭の見返りの

有無等、徹底した捜査が望まれます。

食品関連業者の企業倫理の遵守と、それをチェックする行政の矜持ある姿勢が、仕

組みの中に普通に循環する体制作りに期待するほかありません。

 

それにしても、米の最低輸入義務を課せられ、年間70~80万トンを中国などか

ら輸入せざるを得ないウルグアイ・ラウンド合意なるものの摩訶不思議さは、筆者

の頭では理解不能です。加えて、その中の汚染米を返却しない、という現状も納得

できません。国と国との貿易も一種のビジネスであるなら、粗悪品は相手国着信払

いでさっさと返品するのが常識ではなかろうかと。農業政策の弱腰外交が透かし見

えます。

 

食料自給率向上政策の為に、少なからぬ予算が農水省に回っているとか。メデアあ

げての危機感発信も、消費者に危機感をつのらせるに充分な効果を上げています。

国民に国内食料の需要を勧める前に、やるべきことは山ほどあると思うのですが。

近所のあちらこちらに点在する小さな農地と、同じ規模での休耕田を見るにつけ、

日本の農業の行く末が真剣に案じられるのです。この国は、本当に世界第二位の先

進国なのですか。

 

平成20年9月24日 P&Cネットワーク 間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

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【第38回】 [ 食環境の現状(17) ]

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  昨今、「食」に関する課題提言は、安全をはじめとして私達の回りにあふれかえっています。
今まで、食の問題に無関心すぎたツケが、一挙に回ってきたという印象を受けます。
豊かになればなるほど、食品種が多くなればなるほど、食品への目が厳
しくなるというのも
皮肉な話です。度重なる食品偽装は多分、かなり以前から表面に出てこないままに
存続していたはずです。“消費者の目が厳しくなったから“も確
かに一因ですが、より大きな
要因は内部告発でしょう。世の中の人心が変化したの
です。偽装を続けることが難しくなった
のは、歓迎すべきですが、悪事がばれるの
は殆どが内部告発によるとは、情けない限りです。
食品関連業者の企業倫理の遵守
とそれをチェックする行政の矜持ある姿勢に期待する
ほかありません。
 

先日、“本当にいいものは高いので消費者も良品を買い支えるべきだ”がテーマの

食に関する本を読みました。値段はその食品の質を反映しているのは確かです。

でも、“安い”を第一義にとらえる消費者の傾向を、本当に優れた食材・食品が支持

されにくい理由付けにしているのには、疑問がわいてきます。消費者は、最後に買う人です。
消費者がお金を支払って、流通は完了するのです。安い物を買うのか、
高くても上質の物を
買うのかは、完全に消費者の自由な裁断にゆだねられているの
です。せっかく作った
上質の物が売れないのは、売る側の戦略・努力が足らないか
らに他なりません。
また、手をかけ時間をかけて作った物は、大量に売ることを
目的にはしていませんし、
大量に供給も出来ないのです。

 

以前から、筆者も“本物”重視、つまり“もどき”は買いたくないと述べてきました。
みりんもどき、酒もどき、醤油もどき商品は、価格を安く設定するために生ま
れたような
ものです。多くの消費者が、せめて基本食材くらい本物を購入する意志
をしめせば、
劣悪なもどき商品は、姿を消していくはずです。でも肉や野菜などの
食品は、本物ともどき、
の差を見極めるのは難しい。とすれば安いにこしたことは
ありません。いつの時代も、
高級品はあるのです。どの値段帯を購入するかは、全
く、その人の財政状況、こだわり
度合いによって異なるのです。消費者は馬鹿では
ない。やむを得ず、その価格で購入する
ケースが殆どなのだと、思っています。

 

食の安全や質の確保は、提供する側の倫理責任以外に、その責を問うことは出来ま

せん。リーズナブルで良い食材・食品を提供するのが、作る側の責務です。どうしても
高く売らざるを得ない食材・食品は、本当にそれが良い物であるなら、一部の
消費者が
買ってくれるでしょう。それが、自由流通なのです。

 

平成20年8月15日 P&Cネットワーク 間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

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【第37回】 [ 食環境の現状(16) ]

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日本の食料自給率の際だつ低さに関しては、その原因や対策等、新聞誌面やテレビなどでも様々に議論されていますが、どれも今ひとつ、という印象を受けます。数十年をかけて?じわりじわりと低下してきたものを、そうは簡単に引き上げることも困難でしょう。でも、食生活の和食回帰や食べ残しゴミの減少など、国民への行動提起を目にし、耳にする度に腹立たしくなります。食料自給率をここまで低下させたのは、農政の大失策であると思うからです。民間他企業の参入を拒み、大規模農業への転換政策を行わず農地税制優遇政策を取り続け、生産調整に終始してきたツケが回ってきたということでしょう。

 

和食を見直しましょう、との連呼がかまびすしい中にあって、逆に洋風の食事を奨励する声もあるのです。中高年男性の約50%に傾向があり、実際に700万人もの人が治療を受けているという高血圧症。食事療法として、塩分を控えることが肝心なのは周知の事実。和食の献立につきものの、味噌汁や漬け物、醤油、魚の一夜干し、塩鮭、たらこ、お浸し、うどん、そば等には、どれも塩分がたっぷりと入っています。

 

むしろ、洋風の食事の方が低塩分なので、脂肪をとりすぎない程度に取り入れましょうとのアドバイス。確かに一杯の味噌汁には2gの塩分がありますが、牛乳は0g。食パンはバターがあれば充分に美味しく食べられます。日本人と比べ西洋人は塩分の摂取量が半分程度といわれているのは、まさに食生活の違いからきているのです。そして、日本人の塩分摂取量は、厚労省が旗を振っても、なかなかに少なくならない。

 

日本における食の洋風化は、必然性を伴ったのです。子供の成育を助け、病弱な人の栄養補給に寄与し、高齢者の健康保持にも役立ちました。牛乳やチーズ、鶏肉や豚肉は今や食卓に欠かせない食材です。日本食の良さは当然のことながら、生活環境は変化していくものです。食も変わって当然。農政も変わって当然なのです。食生活では、食の洋風化より、むしろ加工食品の氾濫の方に危機意識を持つべきでしょう。多くの加工食品には保存性を高める目的で塩分が添加され、安価な輸入食材も多使用されています。

 

“食の洋風化”だけに、低い食料自給率の罪?をかぶせるのは、いい加減に止めて欲しいものです。

 

平成20年7月9日 記    P&Cネットワーク  間島万梨子 

 

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