食文化の豆知識 62 [食環境の現状 41]
久しぶりに連絡を取り合ったコンサルタント仲間が、飲食業界の目を覆うばかりの惨状
を嘆いていました。一等地にある一部の人気店を除いて、一様に売り上げ低迷にあえい
でいると。客数減少と一人当たりの利用金額減少のダブルパンチに襲われているという
のです。確かに、1年ぶりに訪れた中華料理店が閑散としていたのに、驚きました。予
約なしでは入れなかった店と記憶していたので、予約の上訪問しましたが、2割ほどの
客入り状態でした。平日の月曜日であったことを差し引いても、寂しい風景でした。
やはりレストランは、そこそこお客さんがいてこそ息づくものだと、あらためて感じた
次第です。
一方、安価なフードコートや手軽なカレーショップ、リーズナブルな製麺店などは、曜
日を問わず、にぎわっています。最近、気にいってるうどん店は、トッピングに穴子天
ぷら、野菜のかき揚げをプラスして、ひとり420円!です。終日お客さんが入ってい
ます。安くて、しかも美味しい。これなのです。デフレの影響で価格が安くなったとい
っても、美味しくなければ支持されない。一番敬遠されるのは、高くてまずい、のはず
ですが、意外にもこの手の店が健在という例もあります。同席した4人のだれもが不満
をもらした(美味しくなくて)老舗和食店は、今でも誇りある名店として露出していま
す。高くてまずい、が最悪ではないのです。高い店は、上品な内装や丁寧なサービス、
落ち着いた空間提供という強みがある。料理をカバーできる要素が多いとも言えます。
嫌われるのは、安くてまずい、ではないかと思います。これがお客の心証を最も悪くす
る。安いということは、分かっている。こんな値段でいいいの、とも思っている。それ
が美味しければ、感動が生まれます。ありがとうの心です。でも逆に、もしまずければ、
まさにお金をどぶに捨てた、感覚です。自分が“安物買いの銭失い”の馬鹿ものに見え
てしまう。自己嫌悪です。だから、値段が安い、は経営側にとっては本当は緊張をとも
なうビジネスなのです。そこのところを誤解している経営者がたまにいます。
ことほどさように、レストランの価格設定は難しい。厳しいご時世で、安いのが有り難
いのは事実ですが、安いだけでは客は来ません。仮に、安さに惹かれて来ても、まずけ
れば二度目の来店はまず無いでしょう。安いけれど、ちまちました売り方をしていない。
お客さんはそんな店を良く知っています。ちなみに、先のうどん店は、ネギ入れ放題、
天かす入れ放題です。気持ちがうれしい。
忘れてました。個人的にもっとも避けたい店は、そんなに高くはないけれど、美味しく
もない、でした。先日もそんな店にあたりました。1000円のランチ寿司定食でした
が、平凡な寿司8カンに、具の無い赤だしがついていました。有名なチェーン店です。
今一度、初心に戻って、奮励努力してほしいと思いました。
22年9月5日 P&Cネットワーク 間島万梨子 食生活アドバイザー