【第128回】 食環境の現状(107) (本物の味わいは中身)

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食文化の豆知識 128 食文化の現状107(本物の味わいは中身) 

まさに春爛漫。青果売り場も数々の春の食材が揃います。春キャベツ、新玉ねぎの類はこの時期のものは癖がなく、生でもいただける柔らかさです。一方タケノコや蕗などのアクが強い食材も春独特の味わいとして食卓を賑わせてくれます。一斉に植物が芽吹くさまは、命の力強さを感じます。特にタケノコは、糠で茹でてからシンプルに醤油や味醂で薄く味付けたものが個人的には一番の好みです。春の力が香り立つような美味しさです。 

コンビニやスーパーの惣菜売り場にも、タケノコご飯やタケノコづくし弁当が美しい彩りで店頭を飾っていますが、残念ながらそのほとんどは、水煮のタケノコを使用したもののようです。食べると一目瞭然に分かります。濃い味付けで本来の味わいが無いし、そもそも、その売値では掘りたてのタケノコを使用するのは無理というものでしょう。原材料をよく見ると、水煮タケノコと記載してあり、中には中国産のものもあるようです。それでも、春のお惣菜!春のお弁当!とキャッチコピーは華々しい。食べる側が納得すればそれでいいのですが、本物の旬の美味しさを味わってほしい、と思うのは大きなお世話なのかもしれません。それにしても、世の中には巧妙?な食品で溢れています。 

野菜や果物は季節や気候の影響を大きく受け、生鮮品なるがゆえの育てる苦労も生半可なものでは無いだろうと察するものの、中にはこれは売ってはいけないと思えるものも市場に出回っています。真っ赤な色合いなのに、中がスカスカの固いトマト。中の身が黄色く変色したきゅうり、外は白いのに中が黒くなってしまっている大根。みな、外からでは素人は判断がつきかねますが、プロ農家なら土壌や触った感触や重さ、色合いなどで中の様相が分かるはずでは?と思ってしまいます。どれも外は遜色なく立派です。然しながら、見た目はOKでも中は劣等生なら、むしろ逆の方が好ましい。真っ直ぐではないきゅうりでも中身はぱりっと新鮮、多少見た目は悪くてもジューシーで甘いトマト、ぼこぼこでも中身は瑞々しくて真っ白の大根。それらはわけあり商品として、ほんの少し安い価格で売れば、買う人はいるでしょう。その替わり、中身は本物の新鮮さと美味しさでなければなりません。信頼の醸成です。賢い消費者に買ってもらうには、売り手も正直で真摯でなければ売れない。そして無駄な装飾は避ける。それが真の成熟社会と思うのですが。 

                  4月6日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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