【第125回】 食環境の現状(104)おせちは昔のままで

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食文化の豆知識 125 食文化の現状104(おせちは昔のままで)

我が家でも年始の食様式は随分と変わった。子供の頃は31日の除夜の鐘を聞くまで、台所では母がおせち作りで忙しく動き回っていた。その代りというか、三が日はおせちと雑煮が続き、その間は料理や買い物から解放されて過ごすのが常であったが、今はどうだろう。おせちは元旦のみで飽きてしまい、2日目から鍋料理や揚げ物などが食卓をにぎわす。材料に不足があれば大手スーパーが元旦から開いているし、開店している飲食店にも事欠かない。これを風情が無くなったとみるか、便利になったとみるかはそれぞれだろう。

 

さて、おせち料理だが、実によくできた料理群だと思う。もともとは節供料理から由来しているが、それぞれに意味があり、何より日持ちがする。そして冷めてもそれなりに美味しい。砂糖やお酢を多使用し、乾物類も多いので数日間は大丈夫なのがいい。今年はおせちの良さを再発見した。というのは珍しさと手抜きもあって、和・洋・中の三段お重のおせちを購入したのだが、特に洋の重は勿体ないが殆どを廃棄するはめになった。内容はと言えば、ローストビーフに豚バラ肉ケチャップ煮、鴨肉と豪華ではあるが、冷めた状態では脂肪分がなかなかに食べ辛いし、野菜はサラダ感覚で変わり映えしない。それに比べ、和の重は黒豆や田作りに数の子、かまぼこに鯛酢づけ、海老甘辛煮と、冷めてもそれなりに美味しくいただけた。

 

やはり、昔からの伝統食は風土に合っているのだと痛感した。中の重は、中華料理の魅力が詰まっており、冷えていてもそれなりに楽しめるものだった。今回の反省を含めて、来年は代表的おせち数種のみで元旦を祝い、すみやかに鍋料理や熱々のステーキ(予算が合えばだが)に移行しようと計画したが、これは鬼の笑い声が聞こえてきた。

 

1月9日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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