食文化の豆知識 86 [食文化の現状65]
9月に入っても、相変わらずの暑さです。ただ草花や昆虫などの小さな生き物は敏感に秋
をキャッチし、主役の交代が進んでいます。蝉はクマゼミからつくつくぼうしへ。鈴虫も
登場して賑やかです。草木ではさるすべりの花が勢いを弱め、秋桜が咲き始めました。
そして待望の実りの秋。一足早く梨やブドウが店頭を飾っています。遅からず林檎や柿や
栗が加わって、豊かな景色を見せてくれるでしょう。野菜はといえば、インパクトがある
のは高嶺の花のマツタケくらいでしょうか。春と異なり、秋の野菜には胸躍るものが少な
いような気がします。その点、果物はエライ。日本の果物は世界一と、勝手に思いこんで
います。外国の方が、日本の梨(豊水・幸水など)やブドウ(巨峰など)を口にすれば、
その芳醇な豊かさに驚くこと確実です。亜熱帯地方のマンゴーやパパイヤも確かに素晴ら
しい果実ですが、品質改良にそれほど努力しているようには見えません。いわば自然の恵
み。しかし日本では、耐えざる努力の結果として、糖度の高い果実が生まれているのです。
でも、冷凍がしにくく、鮮度が要求される青果物は、スーパーマーケットにとって結構
扱いにくい食材かもしれません。現実としては、ナショナルチェーンの大手スーパーより、
地元密着型のスーパーの方が断然、青果物は豊富に揃っています。価格もリーズナブル。
巨大スーパーは自社PB商品や冷凍食品はさすがの品揃えですが、生鮮野菜や果物は、
何故あんなに高いのでしょう。品揃えも魅力に欠けます。一括購入なので、仕入れ先に関
して小回りに欠けるせいかもしれません。その点、地元密着型はまさにその地の新鮮な食
材が安価で並びます。消費者もうまく使い分けているのだと思いますが、ナショナルチェ
ーンも、地元野菜を中心とした新鮮な野菜や果物を安価に消費者に届ける努力が必要でし
ょう。輸入果物ばかりが目立つようでは、大手の名が泣くというものです。
24年9月3日 間島万梨子 食生活アドバイザー