【第51回】 [ 食環境の現状(30) ]

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食文化の豆知識  51 [食環境の現状 30]

 

客が自由に料理を選んで、それなりに自分だけの好みのコースに仕立てる風潮が高まり

つつあるようです。プリフィクススタイルも何種類かの中から客が選択するという方法

で、従来のお仕着せコースと比べると、楽しさが増しました。10年ほど前は、結構有

名なフレンチレストランでも、コースで客が出来るチョイスといえば、メインディッシ

ュの肉の種類(サーロインかテンダーロイン)か重量くらいだったことを思えば、隔世

の感です。フレンチのコースに必ずついているコーヒーやデザートも、私には不要のも

のなのです。それより、食後にはポルトワインを一杯いただいて、食事を締めたい。

食の嗜好なんて、ひとそれぞれ異なるのが当たり前のはずです。だから、なるだけ選択

肢は多い方がいいのです。売り手側のケースバイケースの柔軟な対応が、様々な生活シ

ーンを豊かにしてくれます。

 

ある中華料理店は、とてもコストパフォーマンスがいい店なので、時折利用しているの

ですが、柔軟性に満ちています。ここでは、コース料理も用意されていますが、魅力的

で美味しい料理を数種類オーダーして、いつもシェアしていただいています。点心や大

振りの海老料理などの、何個入りという料理は、個数を人数分に合わせ、値段も調整し

てくれるのが、とても有り難い。単品料理を、柔軟に人数分に合わせて作ってくれる店

は意外に多くはありません。

 

先日訪問した日本料理店も、刺身盛り合わせを、人数分の数量に合わせてはくれません

でした。とあるイタリアレストランでも、一皿の量を変えようとしない。まさに頭が固

いとはこのことです。POSOES(オーダーエントリーシステム)を導入しているチ

ェーン居酒屋やファミリーレストランなら、コンピューターの処理上、数量や値段の変

更は客の頼みでも、聞き入れにくいでしょうが、専門店はその気さえあれば、難しいこ

とではありません。マニュアル対応や膠着したサービスは、、時としてレストランの本質

から離れ、客の満足度をはなはだしく低めてしまう危険性を含んでいます。

 

こうあらねばならない、という生真面目さも大切ですが、臨機応変な対応は人生を豊か

に彩るのは確かです。レストランの世界に限らず、決められた規則に縛られていること

が多いものです。勿論、他人に迷惑をかけないマナーや常識は持ち合わせるべきですが、

細かいことは、その時々に柔軟に処理していけばいい。要は、規則や決まり事は、人の

ためにこそあるということ。提供側の都合で決めてしまうと、必ず膠着が発生します。

レストランや旅館は、お上や役人の真似をしないで、客の期待に柔軟に対応してほしい。

最近、そういうところが増えてきているのは、うれしい限りです。

 

平成21年10月5日 P&Cネットワーク 間島万梨子  食生活アドバイザー 

 

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