食文化の豆知識」カテゴリーアーカイブ

P&Cネットワークの間島万梨子がお届けする、食文化や食の安全をめぐる連載レポート。
旬の話題を含めて、食の大切さを綴ってまいります。

【第99回】 食環境の現状(78)

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食文化の豆知識 99 [食文化の現状78]

実際に外国に行かなくても、その国の人々の食生活はテレビなどでかいまみることが出来

ます。紀行番組の中で、住民の方々の昼食や夕食の場面があると、目が離せなくなります。

所変わればの最たるもので、食事はお国柄を表す大きな要素だからです。今や、日本でも

外国産の食材はそろっていますし、百貨店などでも各種輸入品が手に入る時代ですが、

どのような食生活を送っているのかを見るのは楽しいものです。

 

アジアは家庭食というより、屋台や飲食店での食事場面が多く、それもとても楽しそうで

す。家で作るより安価で美味しいとくれば、外で食べるのが便利に決まっています。主婦

も大助かりでしょう。料理もバラエテイに富んで、パンチが効いているものが多い印象を

受けます。野菜も多く使用されていて、栄養的にも良さそうです。毎日同じものを食べて

も飽きないようです。

 

一方、イタリアなどの紹介番組では、家庭での食事場面が多く見られます。ランチは大体

がパスタ。オリーブオイルとバターをたっぷりと使って、ダイナミックに作られたパスタ

は、見ていても喉が鳴りそうです。でもメニューはシンプル。あとは水かワイン。サラダ

がついているケースもあまり見られません。ディナーはさすがに肉などのメイン料理がま

ずあって、やはりパスタがあり、必ずワインが添えられています。でもせいぜいが2品か

3品。ただボリュームは日本の比ではないようです。豊かにテーブルに用意されている。

野菜はトマトと玉葱、きのこ類がたっぷりと使われています。毎日、昼はパスタ、が

ごく一般的なようです。

 

ひるがえって我が国は、まさに百花繚乱の食生活です。昼はそば、夜は中華、の日もあれ

ば、昼は洋食、夜は魚の塩焼き和食、または昼はラーメン、夜は焼き肉。昼はパスタ、夜

はコロッケ、ってのもありそうです。本当に毎日、色々な料理を楽しんでいる。同じもの

を毎日食べ続けるという習慣はあまり、ありません。ご飯は毎日食べても、おかずは和洋

中と変化をつけている人が多いでしょう。結果として、色々な食材が必要になりますし、

料理を作る側も大変です。シンプルで美味しい料理を毎日、同じように食べている生活が

少しだけ、うらやましくなりました。日本はやはり、ちょっと贅沢なのかもしれません。

 

              25年10月7日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第97回】 食環境の現状(76)

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食文化の豆知識 97 [食文化の現状76]

 

日本の農業については、食料自給率の低さとも関連して、そのあり方に関して否定的な意

見や危機意識などの声が聞かれます。農業に携わっている親しい知人や親戚がいないせい

もあって、実際の農家の現状はよく分かっていないのですが、労働集約型の厳しい生業な

のだろうなという印象があります。事実、農作物を育てる努力は大変だと思いますし、高

齢化や後継者不足問題も抱えておられるところも多いようです。TPP(環太平洋パートナ

ーシップ協定)交渉参加に農協が強行に反対しているのも、今の日本の農業が盤石な経営

下にないということの表れなのでしょう。どうすれば、若い人達がこぞって参加したがる

ような、夢のある成長産業へ向かうことができるのか、なかなか解決策が見えてきません。

 

しかし、このような方法もあるのだなと感心して観たテレビ番組がありました。

ある地の農家が協力し合って、いわゆるファームを結成し、大成功をおさめているという

内容でした。そこでは早々に株式会社化して、農産物の生育だけではなく、直売所は言う

までもなく、冷凍化やレストラン経営などの多角経営にチャレンジしていました。従来の

農協を介したシステムではなく、生産者と消費者を直に結ぶ、製造・サービス業として機

能しているのです。驚いたのは、スーパーなどの購入依頼を受けてから、その野菜の種を

蒔いて育てる方法でした。無駄がないとはこのことです。必ず、あらかじめ契約した金額

で売れるのですから、事業としての効率性は高いわけです。そのファームの若いリーダー

TPP参加にも前向きな姿勢で、海外にも売り込みを図っていきたい旨を述べていました。

何とも頼もしい限りでした。

 

弱い日本の農家、というイメージはいつだれが作ったのでしょうか。昔から農家の人々は

逞しく、パワフルです。また、意欲的な農業従事者も増えてきたように思います。だから

行政は、そんな元気な農業関係者が増えるように方策を練るべきであって、保護ばかりを

考えている間は日本の農家の未来はありません。誤解を怖れずにいえば、強く育てること、

強いところをもっと強くすること、が大切なのでしょう。強くなる芽があるかどうかを見

極めて、そこにどんなサポートが必要なのかをスピーディーに判断して実行する。

政府や行政がすべきことは、まさにその適切な助力に尽きるといっても過言ではありませ

ん。保護や救済も勿論必要ですが、力を育ててこそ、将来大きな花を咲かせるというもの

でしょう。

           25年8月4日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第96回】 食環境の現状(75)

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食文化の豆知識 96 [食文化の現状75]

 

先日テレビで、極寒の地に住む人々の生活を追った番組がありました。長い冬は零下20

度が当たり前に続く苛酷な地にあって、懸命に生きる姿には心を打たれました。暑がり寒

がりの勝手ものの我が身を深く反省した次第です。そこでは、トナカイが非常に大切な家

畜であり、現地の人が“トナカイなしでは私たちは到底生きてはいけません”と、その重

要性をしきりに話していました。とても大事に飼われていて、よく人になついてもいまし

た。目がくりっとして可愛い動物です。でもトナカイはペットではありません。物を運ん

だり、ソリを牽引する大きな役目を担っています。それに何より食料になる!かの地の人々

の日常食はトナカイの肉なのです。生肉が野菜不足を補い、その毛皮は様々な防寒用具に

形を変えていました。まさにトナカイは、その地の人々にとってはオールマイティーな存

在なのです。そのことはよく理解できるのですが、飼い主に頭をなぜてもらってすりすり

しているトナカイも、翌日には肉の切り身となって当然のように保存庫に置かれる。その

対比には少し驚きました。ただそこには部外者が、カワイソウに、と言う妙な情緒が入り

こむ隙などない現実がありました。

 

そのテレビを見て思い出したことがあります。子どもの頃によく食卓に載った鯨肉のこと

を。多分牛肉などよりはるかに安価だったのでしょう。ショウガ風味を効かせて甘辛く調

理されたクジラのソテーは度々登場しましたし、オデンにもコロという脂身が入っていま

した。栄養もあって安価な鯨肉は台所のお助け的役目を担っていたのだと思います。その

後、牛肉や豚肉、鶏肉などに押され、食卓からは姿を消していきました。何より捕鯨規制

が厳しくなったのです。捕鯨反対派は鯨のかしこさを反対の理由にあげています。あんなかしこい動物を食べるなんて!ということです。でも今は、鯨は増えすぎの傾向にあるら

しい。海の生態系を揺るがすかもしれません。和歌山県太地町のイルカ漁を告発する米国

のドキュメンタリー映画が話題を集めたことがありました。残酷な漁だとの批判の声が強

かったようです。日常にイルカを食べていた人々は戸惑ったことでしょう。

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先の愛らしいトナカイにしても、かしこいクジラやイルカにしても、それらを食する人々

に感謝の念があり、命をつなぐ役割を担ったのだとしたら、その食の形を異なる価値観で

批判するだけではなく、食と命について謙虚で厳かな心でもって再考してみてもいいので

はないでしょうか。食は本当に、国や地域によってそれぞれの習慣様式があるものなので

すから。

           25年7月4日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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【第95回】 食環境の現状(74)

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食文化の豆知識 95 [食文化の現状74]

今や食を巡る談議は巷間にあふれ、テレビも新聞もどの食材が体にいいかを探る番組の

オンパレードになっています。また食に関する書籍にいたっては、肉や炭水化物の摂取の

是非が極端に分かれており、皮肉な目でみれば、まさに無責任な言いたい放題の感がする

ほどです。ちなみに野菜や魚はターゲットにはされていません。当然といえば当然かもし

れません。

 

それほど「健康」が、人間にとってすべてにまさる大切な要素になっているのでしょう。

確かに、生きる基底となるのは健康かもしれません。食生活が予防医学の見地からも極め

て重要であるのも理解出来ます。ただ、一方の面からのみを捉えてヒステリックにあれを

食え、あれを食うな、の氾濫にはいささか辟易してしまいます。

結局、体には、“大食をせず色々な食材をバランスよく摂取する”のがベストだと思うので

すが、それを言ってしまえばそれで終わり。ハウツー本の商売があがったりになります。

でも、体にいいものを追い求めるより、避けるべき食を念頭に置いた食生活を送る方がよ

ほど健康に役立つのではないでしょうか。食生活に苦心しても病気になるときはなるもの

です。ストレスというもっとも恐ろしい危険因子が体にダメージをあたえる場合が多いか

らです。ですからいいものを追い求めるのではなく、避けるべきものをとりあえず避ける、

というスタンスの方が楽なような気がします。

 

まず、劣化したものは避ける。特に劣化した油は毒といっても過言ではありません。だか

ら外食で揚げものばかりを注文するのは危険です。よほど心ある、または高価格のところ

以外は、新鮮な油ばかりを使っているわけではありません。

それとやはり濃い味を避ける。薄味の方が食材そのものの旨さに味覚が敏感になるからで

す。高血圧の危険もかなり避けられます。あまい物は食べ過ぎない。糖尿病は日本人にと

っては発症しやすい恐ろしい病気だからです。アルコールはほどほどに。飲みすぎると肝

臓がダメージを受ける以前に、精神に影響を来します。

すべて“摂取しすぎないこと”に尽きるのです。

 
             25年6月7日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第94回】 食環境の現状(73)

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食文化の豆知識 94 [食文化の現状73]

知人が病院に入院しました。あいにくと一般病室が空いておらず、個室に入りました。あ

まり協調性があるとはいえないタイプなので、多少、出費はかさんでも結果的には個室で

よかったようです。私も基本的に入院病室は個室であるべきだと思っています。入院する

ということは、手術を受けるか、重篤な症状があるとかの場合であって、健康な状態で入

るはずはないのですから、静かで落ち着く環境が求められます。相部屋の方がにぎやかで

安心できるという声も聞かれますが、やはりストレスは発生します。

その病院に設置してあるご意見ノートなるものを見てみました。苦情も謝意もオープンに

掲載しているのは感心しましたが、苦情のほとんどが相部屋での出来事に関することでし

た。他患者への見舞客がうるさい、傍若無人に振る舞う、荷物置き場が少ない、などの苦

情が多く寄せられていました。根っこは、騒音と狭さにあるようで、その二つが解決でき

るのはやはり、個室、ということになるのでしょうか。病院は英語ではホスピタル。そし

てそれを語源とするホスピタリテイは“親切なもてなし”を意味します。病いと院とで成

り立つ日本語と比べ、そこには、病院本来の役目が何であるかを示唆しているような気が

します。病院はただ治療するところではなく、身心ともに元気になってもらう場所である

べきであって、それには“親切なもてなし”がいかに大切かが問われます。

病院側の論理ではなく、患者側に立った治療や対応は、まだまだというのが実感です。

知人が入院した病院は数百もの病床を持つ大病院なのに、入院患者の家族に対する配慮が

著しく欠けていました。例えば駐車場。平均2週間以上、長くて1ヶ月に及ぶ入院生活に

足繁く通う家族も、一般外来と同様に時間払いなのです。何らかの用事で一旦出ると、そ

こで精算。帰るとまた新たな精算が待っています。買いものもしにくいし、荷物を家に取

りに帰るのも不便きわまりない。それに、強制撤去こそされませんが、午後7時30分に

は院内に“駐車場から出て行けコール”が流れます。何故、入院患者の家族用に10日契

約もしくは月極契約のスペースを作ってやらないのでしょう。そのシステムがあればどん

なに便利かを想像できないのは、まさにお役人的発想です。また院内のレストランが恐ろ

しくまずい。まずいのはかろうじて我慢できるにしても、午後5時30分がラストオーダ

ー、6時に閉店するのです。何故もっと美味しく提供できる民間の業者を選出できないの

でしょう。やり方によっては結構儲かるはずです。競わせたらいい。それにせめて8時く

らいまで空いていれば、見舞い客も家族もすこしはのんびりと夕食を取れるというもので

す。久々に病院なるものに、特に入院病棟なるものに接してみて、多くの改善すべき点が

目に付きました。要は、いかに相手側の立場に立って物事を考えられるかに尽きます。

病院経営者も、ホテル、旅館やレストランの経営マインドを学ぶべきだと痛感しました。

 

              25年5月7日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第93回】 食環境の現状(72)

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食文化の豆知識 93 [食文化の現状72]

 

手にした週刊誌の特集記事を読んで愕然としました。中国産食材の汚染度の一覧が掲載さ

れていたのです。魚介類、野菜類、コメ、菓子、加工品に至る多くの食材に、過剰農薬や

大腸菌、人体に危険度の高い化学薬品などの残存が認められるというのです。特に混ぜ合

わせ漬け物類には、まず間違いなく中国産の野菜が混入されているとか、冷凍野菜でも多

くは安価な外食産業に流れているとか。話し半分としても、愉快な記事ではありませんで

した。スーパーマーケットでは国産ものを選ぶようにしていますが、外食の場合には見分

けることは難しい。コンビニエンスの弁当にしても多くの中国産野菜が使用されています。

やはり安価だからです。現実問題として、中国産食材を口に入れないことが困難な状態に

なっているようです。自衛策としては、外食でも市販弁当でも同じものを食べ続けないこ

と、そしてせめて自分で購入する食材は出来る限り国産のものにすることです。

 

そんな中、すべて国産の野菜を使用していると明言しているのが、外食業社のリンガーハ

ットです。ほかにも、びっくりドンキーとか、バーガーキングなども国産野菜を使用して

いるとか。すべて国産野菜でまかなうのは大変な企業努力が必要だと思いますが、是非こ

のような店が増えていってほしいものです。大手ファミレスも、今後、国産食材の使用割

合の多さが、ステイタスを左右することになるでしょう。

 

ちなみに、外食で国産野菜使用の割合が比較的多いのは、レタス、トマト、大根、さつま

いも、白菜などで、輸入野菜が多くを占めるのは冷凍物や加工品のかぼちゃやほうれん草、

枝豆、たけのこ、さといも、玉ねぎ、ブロッコリーの類だそうです。それらを食べてすぐ

に体に悪影響が出るとも言い切れませんが、やはり食材は国産のものを食べたい。日本の

農業の大改革は緊急かつ喫緊の課題です。自国民がベーシックに口にする食材くらい国産

で充分にまかなえるようになってほしいと、心から願うばかりです。

 

              25年4月1日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第92回】 食環境の現状(71)

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食文化の豆知識 92 [食文化の現状71]

昨年秋に全面リニューアルオープンを果たした、阪急うめだ本店は色々な意味で新しい

百貨店像を具現化しているようです。通路が広く、ゆったりとした展示構成はもとより

最高レベル機能を備えた化粧室や大小の文化ホールを備えています。何と言っても画期的

なのは、9階に出現した4層吹き抜けの面積2000㎡の大広場でしょう。今後魅力的な

各種イベントを開催して欲しいものです。梅田の一等地にある利点を生かして、文化・

情報の発信地になれば、まさに新しい百貨店として客の支持を集めることでしょう。その

為には、ハード完成で終わらず、今後はソフト面での企画力が望まれます。

 

12,13階に出現したレストラン街は、百貨店らしく、26店舗の和洋中ほかが揃った

バラエテイ豊かな展開になっています。ただ、周辺地域にはすでに次々と新しい商業施設

が出現しており、それぞれにレストラン街を形成しています。色々な店に行きたい気はあ

っても、お腹はひとつなので、なかなか訪問できない辛さを感じるほどに、この界隈のレ

ストラン群は百花繚乱状態となっていますので、阪急うめだ本店のレストラン街も、どっ

と人が押し寄せるというより、お客さん達も落ち着いて探索している、といった印象を受

けました。350もの席数を誇る大型レストラン・シャンデリア テーブルは、百貨店大

食堂の草分け的役割を担った阪急百貨店として、まさに面目躍如の空間を演出しています。

大阪人ならだれでもが見知った、旧コンコースの天井を飾ったシャンデリアや、ガラスモ

ザイク壁画などが配されたレストラン内は、各所で違った顔を見せてくれます。勿論他に

も、関西なじみの味や伝統の味、老舗の味がそろい、関西初登場の店もあって、楽しみな

スポットが増えました。早速、懐かしい中国料理店に行ってきました。久々の梅田再登場

の店です。今風の料理も加わって、安心出来る技は健在で、満足度は高いものでした。

 

このレストラン街で、おや?と思ったのは、著名シェフを看板に掲げる、フレンチやイタ

リアンの店を見かけなかったことです。新しいレストラン街には、今までは必ずといって

いいほど、人気シェフが率いる店が出店していました。レストランも数的に飽和状態にあ

るので、出店がかなわなかったのでしょうか。それとも企画段階から予定はなかったので

しょうか。いずれにしても、充分な店舗群なので問題はありませんが、それでもすでに客

を多く集めている店と、ちょっと寂しい店との線引きがなされており、この業界も厳しい

状況下にあるようです。

              25年3月2日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第88回】 食環境の現状(67)

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食文化の豆知識 88 [食文化の現状67]

 

景気は一向に良くならないものの、人々はそれなりに楽しんでいると痛感する場面が多々

見られます。旅行に行けば平日でも観光スポットには人が溢れているし、外食シーンでも

人気店は満席状態で、客たちが美味なるものに舌鼓を打っています。でも現実に家電をは

じめ、著しく業績を落としている企業が多く出始めているのも確かです。円高が元凶なの

でしょうか。それとも先行きの見通しが甘かった?

「企業業績の悪化は、給与削減という形になってそこで働く人たちの家計をいやがうえに

も圧迫していきます。結果として消費が低迷する。そして物が売れなくなると価格競争が

発生し、企業の業績がさらに落ち込んでしまう。この悪循環に抜本的な対策が打てないま

ま、日本の活力がどんどん失われていく」とは新聞以下、メディアの論調です。日本には

それなりの経済のプロが多くいるはずなのに、何故いつまでも景気が落ち込んだままなの

か、経済に疎い頭では疑問だらけの現状です。かつてのようなバブル景気はもう要らない

けれど、やはり着実に景気は上がっていって欲しい。でも冒頭に述べたように、各所各地

各世代では、とても元気な状況を見受けることが出来るのです。メディアが騒ぎ、不景気

を表す実数が明らかであってもなお、街はそこそこ活気があり、上質のレストランは賑わ

いを見せ、観光地には多くの人が集う。第一に暴動が起きない。日本の底力は捨てたもの

ではないのでしょう。

ただ人の心理は微妙に変化しているのは確かで、言葉を変えれば、賢くなっていると言え

るかもしれません。働く女性向きの情報誌が実施したアンケートによると、OLのお小遣

いの用途が5年前とは明らかに異なっているようです。平成19年のお小遣い使い道の1

位は洋服、2位が飲食代、3位にレジャー関連、4位が趣味、そして5位が貯蓄であった

のが、24年では1位が飲食代、2位がレジャー関連、3位が貯蓄となり、4位が趣味で、

洋服は5位に下がったとか。高品質で安くて格好いい衣服が出現してきたのが大きな要因

でしょうが、飲食とレジャー関連が上位にきたのは、楽しく日々を過ごしている向きが伺

えます。見栄を張らずに実質的に楽しみ、将来への貯蓄も忘れない。何と賢いOLさんたち

でしょう。高級ブランド服には悪いですが、身の丈に合う暮らし、に日本人もやっと気づ

いたのかもしれません。より地に足の着いた堅実で賢い消費者になって、うまくお金を使

っていきたいものです。企業も、消費者がうなるようなお値打ち感のある商品を産みだす

努力が求められます。

 

               24年11月1日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第87回】 食環境の現状(66)

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食文化の豆知識 87 [食文化の現状66]

 

食が健康に寄与する割合の高さが、あらためて見直されています。一口に食といっても

この場合、“食の質”如何が健康を左右する、ということでしょうか。確かに身をもって

食の大切さを感じざるを得ません。自分のことで申し訳ないのですが、学生時代の下宿生

活での私の食事は、今思い返せばめちゃくちゃでした。朝は抜き。昼は学生食堂。夜はお

菓子や果物でお腹を満たす日々。まともな食事は昼食のみといったありさまで、結局体を

こわしました。幸いにも完治し、それ以来これといった大きな病気はしていませんが、き

ちんとした食生活がいかに体にとって重要か、の認識を持ついい経験になりました。

 

しかし、健全な食生活とは一体どういう状態を指すのかとなると、王道はなかなかに難し

い。誰が考えてもまず思いつくのは、バランスのいい食事と食べ過ぎない。この2点でし

ょうか。食べ過ぎないは、呑みすぎないにも通じます。要は、消費する以上に食べ物を摂

取しないこと。バランスとは色々な食べ物をまんべんなく摂取する、の意味の他に、栄養

配分を考えながら食べる、の意味もあります。よく、30種類以上の食材を摂取する、の

を毎日の目標にしている人の話を聞きますが、やはりバランスとは、栄養素の配分がうま

くいった食べ方、なのかもしれません。体にいいからといって、野菜ばかり30種類食べ

ても、タンパク質不足に陥り免疫力の低下を招きます。粗食もまた、お薦めできません。

適量の肉は高齢者であっても必要なのです。お茶漬けと漬け物や甘いものがメインの食生

活では、抵抗力もなくなります。

 

人間は年齢を経るに従って、食生活も変化していきます。言葉を変えれば、変化していく

べきなのです。まず消費エネルギーが落ちます。それなのに若い頃と同じ量を食べ続ける

と立派なメタボ・肥満の出来上がりです。中年以降はやや小太りがいい、と最近言われる

ようになりましたが(いざ病気と戦うときの体力保持のため?)、その小太り状態を保つの

が一番難しいと思いませんか。ちょっと油断すると大太りへ一直線です。痩せすぎも感心

しませんが、自分の足で歩き、結果として自分の頭で考えるには、体型をスリムに保った

方が有利です。回りを見ても、太りすぎの人はおおむね足が弱い。自分の体重が足に負担< /span>

を強いるのです。命つきて倒れる直前まで、自分の足で歩きたい。最近見舞った、寝たき

りの叔母が可哀相でした。歩けさえすれば環境は広がるのに、ただ足が弱って歩けないだ

けで、生活シーンは閉ざされます。車椅子に移るにも人の手を借らねばならない。他にこ

れといった病変は無いのに、こういうケースもあるのです。体重管理は、まさに自分の為

に自分を律することなのかもしれません。

 

               24年10月1日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第86回】 食環境の現状(65)

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食文化の豆知識 86 [食文化の現状65]

 

9月に入っても、相変わらずの暑さです。ただ草花や昆虫などの小さな生き物は敏感に秋

をキャッチし、主役の交代が進んでいます。蝉はクマゼミからつくつくぼうしへ。鈴虫も

登場して賑やかです。草木ではさるすべりの花が勢いを弱め、秋桜が咲き始めました。

そして待望の実りの秋。一足早く梨やブドウが店頭を飾っています。遅からず林檎や柿や

栗が加わって、豊かな景色を見せてくれるでしょう。野菜はといえば、インパクトがある

のは高嶺の花のマツタケくらいでしょうか。春と異なり、秋の野菜には胸躍るものが少な

いような気がします。その点、果物はエライ。日本の果物は世界一と、勝手に思いこんで

います。外国の方が、日本の梨(豊水・幸水など)やブドウ(巨峰など)を口にすれば、

その芳醇な豊かさに驚くこと確実です。亜熱帯地方のマンゴーやパパイヤも確かに素晴ら

しい果実ですが、品質改良にそれほど努力しているようには見えません。いわば自然の恵

み。しかし日本では、耐えざる努力の結果として、糖度の高い果実が生まれているのです。

 

でも、冷凍がしにくく、鮮度が要求される青果物は、スーパーマーケットにとって結構

扱いにくい食材かもしれません。現実としては、ナショナルチェーンの大手スーパーより、

地元密着型のスーパーの方が断然、青果物は豊富に揃っています。価格もリーズナブル。

巨大スーパーは自社PB商品や冷凍食品はさすがの品揃えですが、生鮮野菜や果物は、

何故あんなに高いのでしょう。品揃えも魅力に欠けます。一括購入なので、仕入れ先に関

して小回りに欠けるせいかもしれません。その点、地元密着型はまさにその地の新鮮な食

材が安価で並びます。消費者もうまく使い分けているのだと思いますが、ナショナルチェ

ーンも、地元野菜を中心とした新鮮な野菜や果物を安価に消費者に届ける努力が必要でし

ょう。輸入果物ばかりが目立つようでは、大手の名が泣くというものです。

 

               24年9月3日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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