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顧客満足の複雑さ 111 「民泊の行方」

顧客満足の複雑さ111「民泊の行方」  間島 

本年6月に、民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行されるが、それを大きなビジネスチャンスに結びつけようとする動きがある一方で、天下の悪法と捉える意見もあり、施行前からすでに、市場はざわめいている。この新法成立の理由は概ねはっきりとしている。インバウンドの増加にともなって不足が予測される宿泊施設の代替確保と、全国で増えつつある空き家・空き室の有効利用だろう。加えて、すでに横行しているヤミ民泊の規制目的もある。しかし、あくまで個人の住宅を観光客に貸し出してもらうのが、世界的に見ても民泊の本質であるはずが、結局のところ、不動産業界や賃貸住宅事業者とIT仲介業者が利点を得るのだろうし、住宅宿泊管理業者という新しいベンチャービジネスを生みだしたに過ぎない。それによる経済や雇用拡大効果もあろうが、いずれにしても、一般国民がこの新法によって恩恵を受け得るとは到底思えない。 

考えてみても分かる。現在住んでいる自宅に見知らぬ観光客を泊めたい人が多くいるとは思えないし、民泊向きの別荘やセカンドハウスや別宅を所有している人もごく少数派だろう。もっとも、相続したものの現在は住んでいない家屋を所有している人にとっては副収入を得る機会かもしれない。それとても立地によっては周辺住民とのトラブルを抱えるリスクを負う覚悟が要る。また、民泊新法を受けて、収入を確保するために新たに民泊対応可能な住宅を手に入れたとしても、宿泊上限が一年間で180日以下と決められているので、投資額のスムーズな回収が可能だろうか。余り良い儲け話ではない。だからこの新法は、ヤミ民泊に若干の歯止めをかける意味で多少は有効である、くらいにとらえていいのかもしれない。救いは、各自治体の裁量に、規制の部分をある程度まかせ得るという点だろう。

先日のテレビで、ベンチャー企業の住宅管理業者が、地方の農家の人達を集めて自宅での民泊を勧めるという番組があった。数名の中でひとりの中年女性が手を上げ、実際に欧米人の男性を民泊客として迎える、という内容だった。一人暮らしの、人の良さそうな女性の“楽しかった。これから、民泊を積極的に考えたい”の言葉で結ばれていた。あくまでカメラが入り、筋立てが出来た中での構成なので、今後の状態を担保するものではなかったが、どちらかと言えば性善説を是とする日本人の国民性の危うさを感じざるを得なかった。そしてこのほど、民泊利用のアパートで日本女性が殺害されたとのニュースが流れた。民泊していた米国籍男性が逮捕され、取り調べ中とのことだ。二人はSNSで知り合って、男の民泊先で会ったらしい。この事件が民泊に対する大きな警告でないことを祈るしかない。  

                     2018年3月1日                                                      

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【その142】某月某日 ”接客態度はいつも店の顔”・・の巻き

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某月某日  “接客態度はいつも店の顔”の巻き

飲食店は料理や飲み物を提供するところだけれど、それだけでは商売成り立ちません。見合った雰囲気と接客がついてきてこそ、いい店だ、ということになるのよね。お客さんに満足して帰っていただかなければ、まずはリピートは望めないし、リピートがなければ殆どの店は成り立たないわ。駅構内とか駅前立地以外はね。そういえば昔、ビッグな駅の改札口前の店で、ひどい定食を食べたことがあるわ。まずいの一言で済む分かりやすい店なんだけれど、客はそこそこ入ってたわ。皆、一見さんね。こんなひどい料理を出してもつぶれずに営業してるんだと、逆に立地のすごさに感動したことがあるわ。接客がどんなだったかは、あまりの料理のまずさに忘れちまったけれど、多分、接客なんてどうでもいいって感じの店だったと思う。今でもあるみたいよお。

大体、日本の飲食店は丁寧で親切な接客で、そこが外国人観光客にも好評らしい。日常に利用する店も、一生懸命な接客態度のところが殆どで、この国の良さを再認識しちゃう。ただ接客は、お客さんがいるときだけに必要な仕事ではないのよ、といいたいケースもあるのよね。お客さんが入店してからの一連の接客対応は、マニュアル通りにやれば、まずは間違いがないし、笑顔が加わっていれば、言うことなし!でオールOK。でも客待ちのときのフロアースタッフには、対応の差がもろに出てしまう。常に入り口に気を配り、ソフトな客引きで頑張る店もあるかと思えば、店内でスタッフ同士がおしゃべりに興じている店もあって、千差万別だわ。ここに店の実力が出るのだと思う。

スタッフの質は、忙しい時、暇なとき、どちらにも出てしまうってこと、経営者もしっかりと把握しておかなくちゃね。時折訪問していた蕎麦専門店に行かなくなったのは、オーダーを忘れられてそれを指摘したとき、ごまかしたのが理由。後からオーダーした客に先に料理を持ってくるのでスタッフに確認したら、あわてて厨房に再オーダーしているのが丸わかりなのに、もごもごと謝らずにごまかしたの。頭に気て、それから行って無い。で先日、その店の前を通ったら、昼時なのに半分ほどの客入り状態。レジ近辺でスタッフ二人がぺちゃくちゃおしゃべりに励んでたわ。やっぱりね、と思いましたよ。まずまず美味しい蕎麦なのに、忙しい時も暇な時もどちらもだめな接客がつぶしている店の典型ね。

                2018年3月11日・・・続く

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顧客満足の複雑さ 110 「簡潔で丁寧な言葉の大切さ」

顧客満足の複雑さ110「簡潔で丁寧な言葉の大切さ」 間島 

年末年始のテレビ界は、番組の多くを取りだめ特番でしのぐ、という慣習があるらしい。テレビ界に生きる糧を置いている人達も、年末年始はゆっくりと休みたいだろうから、どうしても取りだめが必要となる。今年もわずかな生番組を除いては、殆どがすでに収録されたスペシャル番組だった。中にはなかなかに考えられた凝った内容のものもあるのだが、大体が同じような顔ぶれの似たり寄ったりの内容としか思えなかった。落ち着いて観たわけでもないので、そのことはどうでも良い。気になったのは、言葉の粗さと珍妙さであり、まともな日本語の喪失であった。

テレビから発せられる言葉使いの奇妙さには、かなり慣れてきたつもりだ。何故ならそれは、出演している芸人だけではなく、アナウンサーやキャスターまで浸透して、まるでその言葉が正しいかと錯覚を覚えるほどに氾濫しているからだ。例えば花に“水をあげる”、犬に“ご飯をあげる”という言い回しは、市民権を得たがごとくに常時聞かれる。先日、東京が寒波に襲われた時、ある局で、“明朝は氷点下になる恐れがあるので、水道管をあけておいてあげてください“と真面目顔で言ったときには、さすがにのけぞってしまった。水道管にも優しい言い回しが必要らしい。一方、ほっとするのは一般人の言葉で、農家に取材に行った際に聞こえてきた“犬への餌やりも大事な仕事だから”と、“植木の水やりは難しいのでね”は、とても自然で違和感が無かった。まだまだテレビに毒されていない人達もいるのだ。

丁寧さを勘違いして、最近は“○○の方”という言い方が一般的らしい。“外国人の方”“女性の方”“お年寄りの方”“中国人の方”“お子様の方々”と枚挙にいとまがない。“日本人の方”は英訳できるのか分からない。“ジャパニーズ“以外の言い方があるのだろうか。“犯罪者の方”や“不法滞在している方々“もその内、聞かれだすだろう。かといって優しさと丁寧さに満ちた言葉のみを話す国民性というわけでもなさそうで、“すげえ”“まじかよ”“死ね”“殺すぞ”などの言葉も氾濫している。まるで一貫性がない。飲食店でも、客からは“注文してもいいですか”“メニューブック見せてもらってもいいですか“などの珍妙な言葉がきかれ、店側からは”○○になります“の奇妙な言葉とともに料理を持ってくる。支払時にも“○○のお釣りになります”と、また理解不能な言葉が聞こえてくる。なぜ“○○をください”“メニューブックを見せてください”と言えないのか。店側も“○○お持ちしました”“○○円のお釣りです”と簡潔な受け答えをしないのか、頭が混乱してくる。

愚痴は止めよう。ときには、簡潔でかつ丁寧さを失わない言葉使いを聞くこともある。すべてに、きちんとした意味があり、伝達が明瞭で、しかもそこに個々人の良識を感じさせる言葉は、普遍的に日本の宝でもある。やはり言葉には誠実でありたい。そこに無礼や欺瞞やばか丁寧さを介入してほしくはない。仕事上とはいえ、一流ホテルや旅館で、美しい日本語を聞くこともある。ひいき目で言うのではなく、確かに覚えがある。仕事言葉ではあるが、参考にすべき慣習でもある。丁寧で美しい言葉は、無駄が無く、礼儀さを感じさせる。それが日本語の特徴ではなかったか。

 

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【第150回】 食環境の現状(129) (野菜価格の高騰の原理)

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食文化の豆知識150食文化の現状129(野菜価格の高騰の原理) 

年末年初以来の野菜価格高騰が、まだ続いています。従来なら、この時期は一本が百円ほどの大根が、店によっては250円の値札がついています。白菜も一個が400円前後。昨年は150円ほどでした。昨年10月の長雨が、いまだに影響しているのでしょうか。怖いのは、この値段に消費者が慣れてしまうことです。多く収穫できるようになっても、高め価格で推移していく、という例は結構あります。やはり商売ですから、ここは生産者と消費者のせめぎ合いです。高ければ買わないとなれば、自然に価格は下がってきます。まさに需要と供給のバランスですが、これほどまでに高いと、日本人の野菜摂取量がますます低下しそうで、財布も痛いけれど、胸も痛みます。 

さて、気を取り直して、現在の価格優等生の玉ねぎやジャガイモ、ニンジンに役立っていただきましょうか。鍋も洋風シチューにして家計防衛するとか、肉じゃが、カレーを順番送りにメニューに乗せるとか。何だか、寂しい提案になってしまいました。でも考えれば、洋風料理用の野菜は比較的に価格安定していますが、価格が乱高下するのは大体が、和風料理の材料となる野菜です。特に葉物類が、気候の影響を受けやすいので、自ずとそういう結果になるということです。根菜類は強い家計応援団です。栄養価も豊富だし、生鮮者には頭が下がります。 

実は野菜価格はしばしば高騰しているのです。季節は一定ではありませんが、気候異常は毎年起こっているので、その都度、野菜の価格が跳ね上がる。需要は変わらないのに、供給量が減るので、当然に?価格は跳ね上がります。これが大規模農場だと、かなり安定した供給量を放出できますが、日本の場合、殆どが小規模農家であるがゆえに、もろに気候の影響を受けてしまう。結局、割りを食うのは、消費者です。間違いなく、購入者である消費者が、一番の被害者です。供給者は、不作でも高く売ることで何とかバランスはとれますが、消費者は最後の登場者なので、出来ることは買わないことだけ。それはすごい武器であるともいえます。でも、この時期の美味しい白菜や大根を無視するのは無理かもしれません。 

         2月11日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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【その141】某月某日 ”騒ぎたいならTPOをわきまえて・・・の巻き

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某月某日  “騒ぎたいならTPOをわきまえて・・・”

先日、久しぶりに中華料理店を訪問。何でも、シェフの自家農場から毎日新鮮な野菜が直送されて、優しくてヘルシーな中華料理を食べられるらしい。いいじゃない。中華料理は好きだけれど、あんまり脂っこい料理はパスって女性は結構多いと思うわ。で、総勢6名、予約して行ったんだけど、その日は満席。マックスで25席くらいのこじんまりした店なので、満席の日が結構、多いらしい。予約しておいてよがったぁ。料理は、とっても美味しかったです。1品1品は量は少なめでも、10品くらい出されるので、お腹は一杯。野菜が豊富に使われていて、味も優しい。人気店なのも納得できました。スタッフも料理人もきびきびとして好感が持てるし。なんだ言うことないじゃない?てことよね。はい、店にはね。問題は客。

入店したときには、すでに12名ほどのグループがいて、嫌な予感がしたのが的中。男女混合で、それがやかましいこと、うるさいこと。男の甲高い声を久々に聞きましたわ。みっとも無いったら、ありゃしない。バカ笑いと嬌声が止むことなく続いて、耳が痛くなったわ。こちらも負けじと会話に熱中するんだけど、やはり教養が邪魔して、そこまでバカ騒ぎは出来んかった。負けた。で、思ったんだけど、日本人も充分に騒がしい民族であること。2,3人ならおとなしくても、グループになると周りの迷惑を顧みず、騒ぐ。お金を払っている飲食店なら、なんでも許される、と思ったら大間違い。恥ずかしいわ、全く。それと、やはり店側も、それとなく注意を促すことも必要ね。客の立場をそこねることなく、分かってもらうのも接客技術だと思う。

あまりに静かすぎる気取った店も苦手だけれど、要は程度問題ね。その程度をわきまえるのが、教養でありインテリジェンス。楽しい話題で盛り上がるのは結構。でも、大声とバカ笑いは、馬鹿にしか見えん。少なくとも、小さな店では、控えてほしい。100席以上の大規模なビアホールにでも行って騒いでよ。

               2018年2月10日・・・続く

 

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顧客満足の複雑さ 109 「滅私奉公に頼ると危険」

顧客満足の複雑さ109「滅私奉公に頼ると危険」 間島

 あけましておめでとうございます。今年も様々な事変や気象問題が起こると思いますが、そのときそのときの適切な対応で乗り切ることが出来ますように。 

訪日外国人観光客数の伸びが止まらない。郊外に住んでいると実感はあまりわかないが、ひとたび街中に出ると、場所によってはここは外国か?と思えるほどの状況を見ることも多い。売上増加に湧く業界にとっては、まさに恵みの雨どころか、笑いが止まらないに違いない。宿泊業界も恩恵を受けている業界のひとつだろう。ただ都市部と地方、ホテルと旅館との差異は歴然とあるようだ。

客室稼働率ひとつをとっても、最近のデータではシティホテルで78.7%、ビジネスホテルで74.4%、旅館で37.1%と、大きな開きがある。地域別では、全国1位の84.8%の大阪府と比べ、47位の長野県は35.4%で半分にも満たない。やはり稼働率の低さは収益効率にもろに響いている。ベースとなる経営手法の差異がもたらす影響も大きい。今や宿泊取引の7割はオンライン予約だが、力のあるサイト運営者への仲介手数料の高さで、うまく活用できていないところも多い。会計システムも、宿泊部門と飲食部門との区分別管理会計を採用せずに、旧態依然としたどんぶり勘定を続けていると、細部の分析や方策をたてるのも難しいのは明らかだ。 

さて、先日知人の縁で、新規オープンしたばかりのビジネスホテルに宿泊させてもらった。大阪南の一等地ともいえる場所なので、当然にターゲットは外国人観光客である。そこで感心したのは、無駄を排したコンパクトの追求と質の保持の共存だった。充分な広さと寝心地を提供しているツインベッドを中心にシャワーブースと洗面ルーム、別室のトイレルームのみが配され、それらすべてに、必要な備品類が内蔵されており、他のビジネスホテルよりも明らかに上質のもので揃えられている。無駄なものがないという点で、今まで経験したことのない次元のホテルだった。極めつけは朝食仕様で、殆どの食器備品に使い捨て素材を採用しているのには驚いた。食べ終えたゲストたちは、それぞれ用意されたボックスに皿や食べ残した料理を捨てていく。内容は洋風に特化していたが、ドリンク類や基本的料理、パンは数種類用意されていた。超コンパクトでモダンな部屋と共に、観光で忙しいゲストたちは充分に、満足するだろう。配膳サービスのスタッフ数は劇的に少なくて済む。洗い場も殆ど不要だ。このホテルの利益率はかなり高いものと思われる。 

他方、旅館はどうしても人の力、働く人のがんばりに頼りすぎる感がある。能力に個人差もあるが、お客さんに喜んでほしい、というおもてなし精神は、時として従業員を疲弊させ、結果として離職率を高めてしまう。複雑な旅館の仕事をITをうまく利用して簡素化し、作業の無駄を省きながら、料理を特化したり、部屋の構造を見直したりすることで、売り上げを倍増させた旅館もある。食材ひとつをとっても、在庫管理の徹底で無駄を排する努力も必要だろう。

                    2018年1月3日                     

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【その140】某月某日 ”どこもかしこも人ばかり・・・の巻き

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某月某日  “どこもかしこも人ばかり・・”の巻き

お正月の三が日は、家でひきこもり状態だったので、四日に久々に大型ショッピングセンターに出かけたんだけど(冷蔵庫も空っぽになってきたので。はあ、よう食べたわ)ありゃま、まだ世間はお休み中だったのね。人、人、人で、どこが少子化じゃ。子供であふれかえっとったわ。もとい、お子様連れのお客様が大勢いらっしゃって、飲食店街も活気があふれておりましたわ。オメデトさん。普段は、余り客が入っていない店にも、ウエイティングがかかっていて、まずは良かったね。というのは、私が行くのは大体がウイークデイ、つまり何にもない平日なので、客が入っている店と入っていない店の差が歴然と分かるのよね。大丈夫かいな、と心配していた(うっそ、心配なんかしてないよん)店もあったんだけど、やはり休日にはそこそこ賑わってたのね。

で、この時期、大阪の難波を歩いた知人がいて、“すごい人だ”と緊急メールを寄こしてきたわ。何しに行ったん?ほんま、人の行動と逆の行動を取らないとエライ目に会うよ。ま、限られた休日しか、遊べない人達も多くいるので、混んでいる理由は分かるんだけど、自由時間が多い人間は、なるだけ人と違う行動を取った方が、楽にストレスなく生活シーンを送ることができるわ。根が、人と違うのを好むタイプなので、今まで余りトラブルもなく、ゆらりゆらりと生きてこれたんだと思う。勿論、人が賑わうところにも足を運ぶけれど、基本的に、人と違う行動をとった方が安全かつスムーズに過ごせると思う。だから飲食店も、空いていて、美味しくて、安い店を探しているんだけど、こればかりはなかなか無いわ。いい条件が揃っている店は、やはり客も入っているし。はい、でも今年は、穴場の素晴らしい店を見つける努力をいたしますわ。だれにも教えないからね!

2018年1月8日・・・続く

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【第149回】 食環境の現状(128) (食品ロスの軽減)

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食文化の豆知識149 食文化の現状128(食品ロスの軽減) 

まだ正月気分が抜けきれない時期で、雑煮が食卓にのぼっている家も多いことでしょう。お餅に加えて、鶏肉やブリ、大根、ニンジン、春菊、シイタケなど、色々な食材が取れるので、昼食には重宝します。お正月のごちそうに飽きたお腹も大歓迎です。白みそ仕立てでも、澄まし仕立てでも、どちらも美味しい。

さて、正月後は、各家庭から大量のごみが出されたようです。ゴミ収集車が年末年始、休みだったことを差し引いても、日常以上の量が回収されていました。我が家でも、結局おせちは食べ切れず、勿体ないと思いながらも廃棄しました。一年一回の祝い膳と思えば、やはり相応のものを食卓に載せたいので、毎年同じことが起こります。いい方法があれば教えてほしいものです。

この時期だけではなく、食品ロスは大きな問題です。世界の年間食料廃棄量は13億トンになるとか。気の遠くなる量です。これは全世界の生産量の約3分の1、特に先進国の食品ロスは、一人当たり年間280~300キロです。この事態を受けて、フランスでは食料廃棄禁止法が成立しました。売り場面積400㎡以上のスーパーマーケットは、売れ残った食品を寄付するために一つ以上の慈善団体と契約することを義務つけ、さらにまだ食べられる食品を廃棄した場合は、3750ユーロ(約49万円)の罰金が課せられるというものです。この法律は、食品ロスの低減に実数で貢献しているものの、法規制の対象は大型店舗に限られ、また消費者サイドからの食品ロスには無力です。

店舗に並ぶ豊富な食材、何種類もの牛乳やジュース類、数十種のヨーグルト、おびただしい数の調味料類、そして多くの売り場を占める菓子類、これらは本当に消費者が望んだ結果なのでしょうか。豊富さを求める声もあるでしょうが、多くは企業側が、これでもかと生産・販売した結果です。本当に欲しいものはごくわずか、買ったことの無い商品は、他の消費者が買っているのでしょうか。それとも廃棄処分になっている?食品ロスの問題は、簡単には解決できそうにありません。でもいつか今までのツケが回ってくるような気もします。要は、一人一人の意志なのかもしれません。

         1月7日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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顧客満足の複雑さ 108 「歳末商戦とネット利用の影響内容」

顧客満足の複雑さ108「歳末商戦とネット利用の影響内容」間島 

正確なデータを取ったわけでは無いが、毎年歳末商戦が早く始まるような気がする。9月におせちの広告案内を目にしたときはさすがに驚いた。まだ暑さが残っている時期に、とてもとてもおせちの気分ではなかろうと。そして11月下旬に、おせちのパンフレットを物色して、いざ注文したところ、その商品は売り切れとの連絡が入った。人気商品だったらしい。他にも魅力的なおせちは充分に揃っているので、他商品に切り替えれば済む話だが、早い商戦の意味が分かる気がした。

とにかく、他社よりいっときでも早く売り切ることで、すべての効率化をはかり、資金繰りを立てることが出来る。特に年末の消費は手堅く確実に増大するので、早い商戦となるのだろう。そのうち、一年後の予約受付という笑えない事象も出てくるかもしれない。スーパーマーケットでも、すでに数の子の特設コーナーが出現しているし、デパートや家電業界も歳末商戦にかける意気込みは激しい。

世界的に見ても同様なのだろうが、米国では歳末商品を買い求める店への客の伸び足が昨年と比べて鈍っているらしい。ネット注文が増えているのだ。この傾向は今後も続くと思われる。直に商品を見て買物をする楽しみも捨てがたいが、人込みを嫌って自宅でのんびりと選べるメリットを取る人は確実に増えていく。少子高齢化社会にとっても、ネット経済は嫌が上にも自然に望ましい成長を遂げていくに違いない。そして、買い方のバランスが逆転したとき、小売店の販売構造は大きく変わらざるを得なくなる。利益構造の変化は言うに及ばず、根本的なありかたも変わる。従業員数も減少していく。今盛んに叫ばれている人手不足は解消される。対面販売が少なくなれば、それこそAIの出番だ。

さて、先の歳末商戦の影響をあまり受けないのが宿泊業界だろう。提供商品(部屋数)に限りがあるから、需要が勝るのは当然で、大小かかわらず、年末年始のホテル・旅館はほぼ満室状態で、しかも秋口から埋まっているところも多い。歳末商戦の必要は無いわけだ。ネットの影響も、簡便な注文スタイルとして良い意味で利用できる。ただし、ネットで予約が出来ても、宿泊という行為そのものは決して体験できない。そこが小売り店と大きく異なる。いわば体験が売り物なので、いくらネット社会が趨勢を誇っても、うまく利用すればいいだけのことだ。そう考えると、今後の宿泊業界の強さも見えてくる。もしかすると、より強くより安定した業界になるかもしれない。問題は、いかに利益を確保するかどうかで、当たり前のことだが、売上を上げるか、経費を減らすしかない。ゲストの満足度を低めることのない経費の節減は、改善の余地がまだまだ残っているだろうし、売上の増加も時流が味方している。ただその背景には、グローバルな先進的機能性と娯楽性の二者の力保持が必至となる。                                             2017年12月1日

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【第148回】 食環境の現状(127) (食料品価格の安定とゼロ税率)

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食文化の豆知識148 食文化の現状127(食料品価格の安定とゼロ税率)

食材の美味しい季節がやってきました。特に野菜はやはり冬の方が豊富で、栄養もたっぷりのものが多いようです。大根や白菜、青菜など、まさに鍋の材料の野菜が旬となり、その滋味を甘受できる季節です。果物はりんごとミカン類が主となりますが、それはそれで日本らしいとも言えます。魚介類も断然、冬が美味しい。ブリやカニ、フグ、クエが揃い踏み、財布とにらめっこしながらの楽しみというところでしょうか。

然しながら、当然のように野菜類の価格は乱高下とも言えるほどに、上下します。自然気候現象で供給が減れば、すぐに価格は跳ね上がります。昨日は一本100円だった大根が、今日は250円になっていることなんて、日常茶飯事です。小売店の価格操作も多分にあるでしょうが、本当に相場もの、そのものです。その点、果物類はさほどの値動きはありません。安定した収穫が望める、大規模果樹園が多いからかもしれません。全体として、肉瀬を除く生鮮品は値動きが激しい。そこでやはり思うのは、このような食材に消費税をかけてはいけないのではないか、ということです。来る消費税増税時には、軽減税率を導入するとの動きはありますが、ここは乱暴な案ながら、食料品全体は税率ゼロにすべきだと思うのです。酒類や贅沢品をどう振り分けるかの煩雑さはありますが、命の元である食材に税金はかけてはいけない。

ここにきて、日本人家計のエンゲル係数が上昇し続けています。二人以上の世帯のここ17年の統計を見ると、2001年の23.2%から始まり、2005年の22.9%を底として毎年上昇し、2016年は25.8%となっています。所得が向上しても、豊かさを否定するかのようにエンゲル係数が高くなっている。中食の増大であるとか、高齢者世帯の増加とかが原因と分析されていますが、本当にそうなのでしょうか。原因はずばり価格ではないのかと。衣類や家電が企業努力で画期的な低価格を実現したのに対し、生鮮品は簡単には低価格供給が可能にはならないことは分かりますが、衣類や家電が完結型であるのに対し、野菜はそれだけでは食卓が完成しないのです。白菜一個で夜の食卓を飾れません。当然に肉や魚、その他の野菜も必要となります。それらの価格の積み上げが結果として、びっくりするほどの高額になってしまうということです。トータルなとらえ方をしたとき、食料品全体を消費税ゼロにするのは、国の役目ではないかとさえ思えるのです。

      12月10日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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