【第148回】 食環境の現状(127) (食料品価格の安定とゼロ税率)

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食文化の豆知識148 食文化の現状127(食料品価格の安定とゼロ税率)

食材の美味しい季節がやってきました。特に野菜はやはり冬の方が豊富で、栄養もたっぷりのものが多いようです。大根や白菜、青菜など、まさに鍋の材料の野菜が旬となり、その滋味を甘受できる季節です。果物はりんごとミカン類が主となりますが、それはそれで日本らしいとも言えます。魚介類も断然、冬が美味しい。ブリやカニ、フグ、クエが揃い踏み、財布とにらめっこしながらの楽しみというところでしょうか。

然しながら、当然のように野菜類の価格は乱高下とも言えるほどに、上下します。自然気候現象で供給が減れば、すぐに価格は跳ね上がります。昨日は一本100円だった大根が、今日は250円になっていることなんて、日常茶飯事です。小売店の価格操作も多分にあるでしょうが、本当に相場もの、そのものです。その点、果物類はさほどの値動きはありません。安定した収穫が望める、大規模果樹園が多いからかもしれません。全体として、肉瀬を除く生鮮品は値動きが激しい。そこでやはり思うのは、このような食材に消費税をかけてはいけないのではないか、ということです。来る消費税増税時には、軽減税率を導入するとの動きはありますが、ここは乱暴な案ながら、食料品全体は税率ゼロにすべきだと思うのです。酒類や贅沢品をどう振り分けるかの煩雑さはありますが、命の元である食材に税金はかけてはいけない。

ここにきて、日本人家計のエンゲル係数が上昇し続けています。二人以上の世帯のここ17年の統計を見ると、2001年の23.2%から始まり、2005年の22.9%を底として毎年上昇し、2016年は25.8%となっています。所得が向上しても、豊かさを否定するかのようにエンゲル係数が高くなっている。中食の増大であるとか、高齢者世帯の増加とかが原因と分析されていますが、本当にそうなのでしょうか。原因はずばり価格ではないのかと。衣類や家電が企業努力で画期的な低価格を実現したのに対し、生鮮品は簡単には低価格供給が可能にはならないことは分かりますが、衣類や家電が完結型であるのに対し、野菜はそれだけでは食卓が完成しないのです。白菜一個で夜の食卓を飾れません。当然に肉や魚、その他の野菜も必要となります。それらの価格の積み上げが結果として、びっくりするほどの高額になってしまうということです。トータルなとらえ方をしたとき、食料品全体を消費税ゼロにするのは、国の役目ではないかとさえ思えるのです。

      12月10日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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