【第28回】 [ 食環境の現状(7) ]

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【第28回】   [ 食環境の現状(7) ]
 
某新聞で連載されていた食関連記事が、執筆担当者の交代に伴い、軸足も大きく変わりました。「くらし安全」という大テーマは従来通りですが、食の安全に対する行政の取り組み方を中心に構成されていた論調から、現在の法規制の問題点を突く先鋒的内容となりました。まだ変更間もないので、今後の展開を見届けたいと思いますが、この変化は歓迎すべきものととらえています。
 
今まで何度も、首をかしげたくなる内容記事を目にしていたからです。「国では食糧自給率を高めようと検討しているところです。・・・・・」に続く、「国民も、自給率の高いコメ中心の食生活を実践するよう・・・・」に至っては、まさに自分達の無為無策ぶりを、国民に転嫁しようという姑息さが透けて見えます。先進国の中でも飛び抜けて低い食糧自給率は、国家としての戦略の貧しさの結果ゆえであるのは、誰が考えても分かることです。
 
日本古来の伝統食である味噌、醤油、豆腐などの主原料、大豆の自給率は果たしてどれ程のものなのでしょう。多くの人に愛されるパンやうどんの主原料、小麦は? 大豆は約20%、小麦は14%前後。これが全体の消費量のなかで、国産ものが占める量なのです。あとはすべて輸入に頼っている現状を、どう道理付けしようというのでしょうか。”輸入した方が安くつく”の理由などは、まさに農業政策の無策ぶりを証明したようなものです。
 
また、中国産食品への信頼の低下する昨今、厚生労働省以下、いかに熱心に検査検疫を実施しているか等、輸入食品の安全確保の制度や取り組みを説明した内容も目立ちました。つまるところ、食料自給率が40%前後に過ぎない今の日本には、輸入食品は欠かせないので云々、という本音が見え隠れしています。
 
新しい連載の第一報は、「中国産食品への不安の広がりを受けての、小売店や消費者、マスコミの取り上げ方が過剰反応との声もあるが、そうは思わない」から始まり、農薬や薬剤のずさんな使用方法への不信、原産地を表示する義務の無い弁当、惣菜などの加工食品やファミリーレストランでの使用などの不透明性をあげて、食品表示のさらなる重要性や透明性を訴えています。
 
食を預かる業界全般の情報公開は、まだまだこれから始まったばかりなのです。
法律は、いつも後手後手に決められるといった印象を、払拭してほしいものです。
(平成19年10月18日著)
 
 
 

 

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