食文化の豆知識 52 [食環境の現状 31]
外食業界の売り上げ低迷が続いています。外食業界に限らず、消費縮小の影響は百貨店
業界やスーパーマーケットにもおよび、内部体制の立て直しが求められています。
生き残り戦略としては、まずは人件費等のコスト削減や不採算店の撤退が考えられます
が、百貨店などでは大規模化への改修が、売り上げアップ期待を担う場合もあります。
莫大な設備投資で業績の拡大を狙う策です。
ただ外食業界では大規模化へ転換する余力があるとは思えません。特にチェーン展開を
している企業では、縮小ないしは業態変換が盛んに行われています。ファミリーレスト
ランの雄である“すかいらーく”も、自社絶対ブランドの「スカイラーク」を無くし、
ガスト体制へ変換しました。他ファミレスも不採算店の整理を急いでいます。余分なも
のをそぎ取って、強い体制へのスリム化をはかる必要に迫られてのことです。
あるファミリーレストラン社から、メニュー調査を依頼されていた数年前は、競合他社
のメニュー調査でファミレスに足しげく通っていましたが、個人としては最近、足を運
ぶことはありませんでした。ファミレスの苦戦が伝えられて久しいのですが、現場はど
のような雰囲気なのか掴んでいませんでした。数年前の印象ではファミレスは、料理に
卓越さは望めないものの普遍的な味、教育の行き届いたサービスレベル、清潔な内装で、
顧客から支持されていたように思います。ところが先日、某ファミレスを訪れて驚きま
した。すべてが荒んでいるのです。表面的には普通に見えますが、チェックポイントで
評価すれば、テーブル上の乱雑さ、時代遅れのトイレ仕様、サービスのいい加減さ、料
理のずさんさetc、どれもかなりひどい状態です。お昼時なのに、5割程度しか客がい
ません。数年前のQSC調査で,他社を押さえてトップ評価の結果をクライアントに報
告したチェーン店であるがゆえに、衝撃を受けました。これが今の状態なのだと。売り
上げ不振と店の非力さの悪循環が見て取れました。恐いことです。
で、最近訪問した専門洋食店を思い浮かべずにはおられませんでした。50席ほどの店
内は6時には満席で、何と8時には二回転をしていました。つまり10時くらいまで、
ずっと満席状態が続いているのです。客単価は5000円程度で、値段に見合うしっか
りとした料理を出しています。柔軟で気持ちのいい接客にも大人の対応を感じました。
すべてが、心地よいのです。その店のトイレは素晴らしいの一言でした。
客が見事に店を選別している。選ぶ目を持っているということでしょう。提供側にとっ
て、本当に大変な時代が到来したようです。
平成21年11月7日 P&Cネットワーク 間島万梨子 食生活アドバイザー