食文化の豆知識177 食文化の現状156(季節の先取りも歓迎?)
毎年、季節の収穫が早まっているような気がします。温室栽培の普及なのか、“走り”の高価値をねらってのことなのか。いずれにしても、あれ?もう出回ってるの?と驚いてしまうことが多くなりました。例えばソラマメ。収穫は5月頃からのはずが、ここ数年、3月頃には市場に出回ります。ほとんどが鹿児島産で、 有難く頂いています。やはり暖かい土地なので、早目の春の恵みが育つのでしょうか。4月下旬になって地場産も並びだしましたが、それにしても早い。蕗もそうです。すでに愛知産のものが3月から出ています。これもせっせと購入して、煮物で楽しんでいますが、従来は4月下旬頃から収穫できる野菜です。果物も早くも小玉スイカが売られていました。高価なので手は出ません。新玉ねぎも、以前は春の野菜でしたが、2月下旬には棚に並んでいました。驚きです。地球温暖化の影響というより、いち早く季節先取りで売れる商品を出したい、ということだと思います。9月から!おせち商戦が始まるのと似ています。それもこれも競争社会を生き抜くための戦略なのでしょう。
早目の実りを楽しむ贅沢は、昔からありました。まだだれも口に出来ない食材をいち早く味わう。その幸せは充分に分かりますが、やはり季節感のめりはりは、大切にしたいものです。野菜果実は、旬でこそ味わいも栄養も深くなります。自然の恵みを人間がコントロールできるはずもないのです。今、安価で出回っている野菜なども、今後、大雨による日照時間不足が起きれば何倍にも価格が跳ね上がることでしょう。現状の市場原理では、いたしかたの無いことです。自然を支配できるほど、人間の力は強くありません。分散収穫や分散消費でしのぐしか無いのです。何だか、サプライチェーンの分散化に通じるような気もしてきました。危機に対して、出来るだけその影響を薄くするための分散化は常に考慮に入れておく必要があります。それを考えれば、春野菜をいち早く食べられるときにいただく、というのも、ひとつの知恵なのかもしれません。
食生活アドバイザー 間島万梨子