【第132回】 食環境の現状(111) (伸びない食料自給率)

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食文化の豆知識132 食文化の現状111(伸びない食料自給率) 

農林水産省の調査結果によると、2014年の日本の食料自給率は39%でした。前年とほぼ同率。目標の45%には全く届かない数値です。ちなみに統計を取り始めた1965年の自給率は73%で、以後徐々に減り続け、ここ数年は39%と増減の変化なしの状態です。つまり減りもせず増えもせず状態が続いているのです。これは一体何を意味するのでしょう。食料自給率低迷の原因を“日本人の食生活の変化”とする農林水産省の主張が正鵠を得なくなったということです。つまり日本人の食生活はもはや定着したので、食生活の変化をいくら悪者?にしても、まさに笛吹けど踊らず状態。現在の食料自給率低下の原因は別のところにある証です。 

確かに、コメの消費量は低下しました。農林水産省のデータでは、1965年のコメ消費量は一人年間111㎏であったのが、2014年は56.9㎏と約半減しています。では生産量はどうなのでしょう。1965年前後が1250万トンらしいのはデータでわかりますが、私のデータを見る目が不足しているせいか、2014年の数値が800~900万トンと、明確ではない数値しか分からず、どうも消費量と比較しにくいのです。消費量と生産量は当然に同時比較した正確なデータとして公表すべきだと思うのですが、農林水産省は消費量の低下をことさらにアピールしたいのではないかと、勘ぐってしまいます。つまり「コメは生産過剰状態にある」現実を、あまり公にデータとして分かりやすく世に知らしめたくはないのかと。農業政策の失敗が見えるからです。食料自給率低迷の原因は、国民の食の変化だけにあらず。コメをはじめとする穀物生産政策の変化も大きな要因だと思われます。つまり、飼料穀物の輸入の爆発的増加と、休耕田(耕作放棄地)の爆発的増加のセットが表わす現実です。 

食料自給率の低下原因を探ると、まさに魑魅魍魎の世界を覗いているような気がしてきます。何故なら、世界各国、特に先進国の食料自給率と比べると、めまいがしてくるからです。ちなみに圧倒的農業生産国である米国・カナダを除いても、ドイツが92%、スペインが96%、フランスは129%、イタリアが61%、オランダは66%、イギリスは72%。いずれも2011年のデータです。日本は39%です。コメの生産過剰、その他穀物の圧倒的輸入超過、耕作放棄地の増大、この三つがトライアングルのように奇奇怪怪に日本農業を翻弄しているかに見えるのですが、果たして・・・。 

8月4日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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