食文化の豆知識 119 食文化の現状98(果物の摂取量の少なさ)
食と健康との因果関係を啓発する動きは、永遠?に続きそうです。古くは紅茶
キノコから始まり、ココアやトマト、バナナへと続き、今はコーヒーにまぶし
い光が当てられました。一日に3杯以上コーヒーを飲む人は、糖尿病を発症し
にくいとか。がん予防にもいいという論もあるようです。コーヒーは朝にたっ
ぷりといただきますが、それ以外は飲みません。なぜか、覿面に夜の寝つきが
悪くなるからです。ですので残念ながら、その絶大な効能にあやかれません。
食べ過ぎず、飲み過ぎず、甘いものは控えめにして、適度に体を動かしている
ほかはなさそうです。それが難しいのですが。
今までに出た様々な話題食材でいえば、紅茶キノコなるものは口にしたことが
ありませんし、ココアはめったに飲みません。でも、トマト、バナナは毎日い
ただいているから大丈夫、帳尻があうかもしれません。何だか馬鹿馬鹿しくな
ってきました。ひとつの食材の効能をひたすらに持ち上げる風潮には、いい加
減愛想がつきそうです。そんな中にあっても、健康維持のためにミネラルやビ
タミンが豊富な野菜や果物の摂取を勧める論調には、それはそうだろうな、と
納得しきりです。しかし、現在の日本人の果物の摂取量は1日100g程度で、
先進国では最下位、米国の半分以下だとか。果物摂取量が少なすぎる、との指
摘は複雑な思いと共にうなずくしかありません。というのは、野菜嫌いは結構
いても、果物嫌いの人は少ないのではないかと思うからです。結局、摂取量の
低さの大きな理由は、価格の高さと皮むきなどの面倒さではないのかと。日本
の果物の美味しさは世界に誇れるレベルだけれど、価格もそこそこします。旬
の果物を安く購入するのにもそれなりの予算が必要です。やはり小規模果物農
家が多いからなのでしょうか。または生産にとても手がかかるから? 外国の
安い果物輸入は関税の高さが弊害となっているから?
どれも理由に当てはまりそうですが、若年世代がもっとも果物を摂取していな
い現実に直面するとき、なにがしかの方策が求められてしかるべきしょう。
コメは日本にとってもっとも重要な食材ですが、極小農地や点在する休耕田を
コメ以外の生産に利用するか、また荒れ果てた山林を果樹園として蘇らせる大
きな戦略があってもいい。それと適正な価格操作にも行政が踏み込むだけの魅
力が果物にはあると思うのです。誰もが十分に楽しめる供給量と買いやすい価
格で果物が店頭に並ぶ時代が来てほしいものです。
平成27年6月7日 間島万梨子 食生活アドバイザー