【第111回】 食環境の現状(90)

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食文化の豆知識 111 [食文化の現状90]

朝晩は随分と凌ぎやすくなりました。これからしばらくは快適な環境の中で

外の空気を吸えそうです。といっても11月の声を聞けば北から木枯らし一号

が吹き、季節は早くも秋から冬へ移っていきます。となると家の方が快適とい

うことになります。春にしても外を歩いて気持ちがいいのは4月から二か月ほ

どでしょうか。またしても体にはきつい夏がやってきます。そうなのです。外

を歩いて皆が快適と思える時期は意外なほどに少ない。まるで日本は、1年が

亜熱帯か寒冷地かに分かれているような状況になりつつあります。だから日本

ではオープンエアの施設が馴染まない。ここが、常に温暖気候下にあるハワイ

や、厳寒期を別にすれば夏でもまずはさわやかな空気が流れるフランスやイギ

リス、ドイツなどとの違いです。これらの国はいずれもオープンカフェが良く

似合い、人々が外気の中でお茶やお酒を楽しんでいる様子をよく目にします。

確かに絵になる風景です。でも日本で導入すると、原則的に失敗します。

 

自宅から車で30分ほどの距離に、商業施設がオープンしました。数年前のこ

とです。初めて行って驚きました。オープンスタイルなのです。各店毎には勿

論専用の出入り口の扉はありますが、ゲストは各店に入るまでは外を歩かなけ

ればならない。回遊式とでも言うのでしょうか。オープン時期は確か小春日和

の11月初旬でした。大勢の人が詰めかけていましたが、一か月先が懸念され

ました。案の定、その時期には人はまばらでした。とにかく寒いのです。強い

風が回廊式の歩道を吹き抜けていきます。各店は独立型なので、まさに客は店

を出たり入ったりで、その度に寒風に身がさらされてしまう。一方、巡ってき

た夏はとにかく暑くて仕方がない。数年間で半分ほどの店が入れ替わりました。

この施設を企画した側は、日本の季節を正しく認識したうえで、オープン式を

採用したのでしょうか。大いなる疑問です。

 

その近隣に、すべての店・テナントをビル内に囲い込むスタイルの、ハイパー

マーケットとも呼ばれる超大型店があります。一年を通じて人が集まっていま

す。完全空調施設なので、過酷な季節ほどここは快適なわけです。前述のオー

プン式の施設と真逆の進路をたどりました。多少のテナントの入れ替わりはあ

るものの、常に賑わい感があります。極寒でも猛暑でも関係がありません。

店の形態やしつらえは、その地の気象特質をよく見極める必要があります。

ゲストがいかに快適に買い物ができるか、これに尽きるからです。

        平成26年10月5日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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