【第32回】 [ 食環境の現状(11) ] |
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冬将軍とともに日本を襲った中国製ギョーザ中毒事件は、危うく人命が失われそうになったがゆえに、日本中を震撼させました。これまでの食品偽装問題とは犯罪性そのもの性格を異にする事件で、両国間での様々な機関や組織がからんでいます。真相究明への道は容易ではないかもしれませんが、1日も早い解決が望まれます。
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この中毒事件の発生後、日本の食の脆弱さを指摘する論調が目立っています。 当事者には不幸で気の毒な事件ですが、これをきっかけに、行政や政府の危機管理意識の低さに注目が集まりました。そして何より、カロリーベースで40%を切る食糧自給率の現実を、メデイアがこぞって取り上げだしたのは歓迎できます。でもその多くが、低い自給率の理由として食の洋風化による国民のコメ離れ、農業の後継者不足に軸を置いているのは、首をかしげたくなります。
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農林水産省のデータは昭和35年から出ています。まず人口は昭和35年で9400万人。2007年で1億2776万人ですから、47年間で1,36倍の伸びです。思ったほどの人口増加ではありません。生産量などのデータは昭和35年と2005年との比較になりますが、コメの消費量は昭和35年を100とすると約27%ほど確かに減っています。でも、生産量も30%落ちています。そして今は、消費量が生産量を若干上回っているのです。つまり消費量に見合った量を調整生産しているのです。価格安定のためという名目が、何とも官僚の限界を露呈しているとしか思えません。
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国民が、行政のかけ声通り、コメをパクパク食べ出したら、農家にあわてて増産指令を出すのでしょうか? それとも、そんなことはあり得ないとの前提で、皆さん、コメを食べましょう!を無為無策の隠れスローガンにしているのでしょうか?米作に適した国土をフルに生かし、生産量を増やし、コメを原料とする食品開発によるコメの利用促進をはかるくらいの国家戦略は練って欲しい。
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最近、とても心踊るうれしい新聞記事を目にしました。大分県の酪農家の紹介ですが、大規模経営で成功している方です。知恵と研究を結集し、自由化に負けない大規模酪農を実現されました。補助事業に頼りすぎず、農水省と生産者団体の「調整」にも異を唱えておられます。価格安定を図るため、コメの減反と同様に牛乳の生産調整が進む中、”意欲のある生産者を抑えこんではいけない”と指摘されています。大学とも連携し、大規模な放牧地の有効利用の研究も進んでいるとか。まさに民間の力です。
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