食文化の豆知識」カテゴリーアーカイブ

P&Cネットワークの間島万梨子がお届けする、食文化や食の安全をめぐる連載レポート。
旬の話題を含めて、食の大切さを綴ってまいります。

【第151回】 食環境の現状(130)(情報の真偽を見分ける)    

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食文化の豆知識151食文化の現状130(情報の真偽を見分ける) 

私事ですが、このほどiパッドを購入しました。携帯電話は別段不便を感じないので、相変わらずのガラケーですが、手軽に情報を得る手段としてiパッドは有効だと思ったからです。パソコンが二階にあるので、一階のリビングキッチンにいるときにちょっとした情報が欲しい際、いちいち二階に行って調べるのが面倒になったというわけです。遅まきながらの購入は、一応正解でした。分からない語彙や歴史や人物など、すぐに手軽にiパッドからグーグルで検索できるのが便利です。勿論スマートフォンでも同様の使い方は出来ますが、何より画面がでかいのが助かります。得た知識情報が頭に残るとは限りませんが。 

今のところ、もっとも使っているのが料理レシピです。キッチンで料理をしているときに材料を前にして、どんな料理方法があるのか、などを検索します。料理レシピのサイトはまさに百花繚乱ですが、取りあえず最初の画面に出てきたサイト2,3種を参考にします。何度も使ううちに気づいたのですが、一つの料理の作り方に大きな差異があるケースが結構多いのです。例えば、水から調理するか沸騰してからか、調味料は最初から入れるか最後の方で入れるか、小口切りにするか乱切りにするか,etc。たかが?料理のことなので他愛のない違いと言ってしまえばそうなのですが、ネット上でも新聞でも全く異なる情報が飛び交っていることの証のように感じてしまいました。 

結局、料理レシピサイトの情報による効果や、料理の出来栄えは自分の判断と責任に負うということです。これはすべてのジャンルにわたって、同様なのだと思います。揺るぎの無い事実は別として、簡単な料理レシピでさえかなりの差異があるのですから、外交や政局、また社会・経済問題などの情報は、量が多ければ多いほど、入手が簡単であれば簡単なほど、真偽が定かではないかもしれません。などと考えながら、まずはひとつのレシピ通りに調理してみることにしました。失敗してもたいしたことではありませんが、次にはこのサイトは参考にしないでしょう。

ことほどさように、ネット上でも既存メディアでも結構、いい加減な情報が流れるものです。その真偽を見極める眼力と思考を持つのは至難の技かもしれませんが、やはり情報は鵜呑みにしないで、まずは疑ってみて、咀嚼して、判断したいと思いました。 

         3月15日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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【第150回】 食環境の現状(129) (野菜価格の高騰の原理)

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食文化の豆知識150食文化の現状129(野菜価格の高騰の原理) 

年末年初以来の野菜価格高騰が、まだ続いています。従来なら、この時期は一本が百円ほどの大根が、店によっては250円の値札がついています。白菜も一個が400円前後。昨年は150円ほどでした。昨年10月の長雨が、いまだに影響しているのでしょうか。怖いのは、この値段に消費者が慣れてしまうことです。多く収穫できるようになっても、高め価格で推移していく、という例は結構あります。やはり商売ですから、ここは生産者と消費者のせめぎ合いです。高ければ買わないとなれば、自然に価格は下がってきます。まさに需要と供給のバランスですが、これほどまでに高いと、日本人の野菜摂取量がますます低下しそうで、財布も痛いけれど、胸も痛みます。 

さて、気を取り直して、現在の価格優等生の玉ねぎやジャガイモ、ニンジンに役立っていただきましょうか。鍋も洋風シチューにして家計防衛するとか、肉じゃが、カレーを順番送りにメニューに乗せるとか。何だか、寂しい提案になってしまいました。でも考えれば、洋風料理用の野菜は比較的に価格安定していますが、価格が乱高下するのは大体が、和風料理の材料となる野菜です。特に葉物類が、気候の影響を受けやすいので、自ずとそういう結果になるということです。根菜類は強い家計応援団です。栄養価も豊富だし、生鮮者には頭が下がります。 

実は野菜価格はしばしば高騰しているのです。季節は一定ではありませんが、気候異常は毎年起こっているので、その都度、野菜の価格が跳ね上がる。需要は変わらないのに、供給量が減るので、当然に?価格は跳ね上がります。これが大規模農場だと、かなり安定した供給量を放出できますが、日本の場合、殆どが小規模農家であるがゆえに、もろに気候の影響を受けてしまう。結局、割りを食うのは、消費者です。間違いなく、購入者である消費者が、一番の被害者です。供給者は、不作でも高く売ることで何とかバランスはとれますが、消費者は最後の登場者なので、出来ることは買わないことだけ。それはすごい武器であるともいえます。でも、この時期の美味しい白菜や大根を無視するのは無理かもしれません。 

         2月11日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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【第149回】 食環境の現状(128) (食品ロスの軽減)

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食文化の豆知識149 食文化の現状128(食品ロスの軽減) 

まだ正月気分が抜けきれない時期で、雑煮が食卓にのぼっている家も多いことでしょう。お餅に加えて、鶏肉やブリ、大根、ニンジン、春菊、シイタケなど、色々な食材が取れるので、昼食には重宝します。お正月のごちそうに飽きたお腹も大歓迎です。白みそ仕立てでも、澄まし仕立てでも、どちらも美味しい。

さて、正月後は、各家庭から大量のごみが出されたようです。ゴミ収集車が年末年始、休みだったことを差し引いても、日常以上の量が回収されていました。我が家でも、結局おせちは食べ切れず、勿体ないと思いながらも廃棄しました。一年一回の祝い膳と思えば、やはり相応のものを食卓に載せたいので、毎年同じことが起こります。いい方法があれば教えてほしいものです。

この時期だけではなく、食品ロスは大きな問題です。世界の年間食料廃棄量は13億トンになるとか。気の遠くなる量です。これは全世界の生産量の約3分の1、特に先進国の食品ロスは、一人当たり年間280~300キロです。この事態を受けて、フランスでは食料廃棄禁止法が成立しました。売り場面積400㎡以上のスーパーマーケットは、売れ残った食品を寄付するために一つ以上の慈善団体と契約することを義務つけ、さらにまだ食べられる食品を廃棄した場合は、3750ユーロ(約49万円)の罰金が課せられるというものです。この法律は、食品ロスの低減に実数で貢献しているものの、法規制の対象は大型店舗に限られ、また消費者サイドからの食品ロスには無力です。

店舗に並ぶ豊富な食材、何種類もの牛乳やジュース類、数十種のヨーグルト、おびただしい数の調味料類、そして多くの売り場を占める菓子類、これらは本当に消費者が望んだ結果なのでしょうか。豊富さを求める声もあるでしょうが、多くは企業側が、これでもかと生産・販売した結果です。本当に欲しいものはごくわずか、買ったことの無い商品は、他の消費者が買っているのでしょうか。それとも廃棄処分になっている?食品ロスの問題は、簡単には解決できそうにありません。でもいつか今までのツケが回ってくるような気もします。要は、一人一人の意志なのかもしれません。

         1月7日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第148回】 食環境の現状(127) (食料品価格の安定とゼロ税率)

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食文化の豆知識148 食文化の現状127(食料品価格の安定とゼロ税率)

食材の美味しい季節がやってきました。特に野菜はやはり冬の方が豊富で、栄養もたっぷりのものが多いようです。大根や白菜、青菜など、まさに鍋の材料の野菜が旬となり、その滋味を甘受できる季節です。果物はりんごとミカン類が主となりますが、それはそれで日本らしいとも言えます。魚介類も断然、冬が美味しい。ブリやカニ、フグ、クエが揃い踏み、財布とにらめっこしながらの楽しみというところでしょうか。

然しながら、当然のように野菜類の価格は乱高下とも言えるほどに、上下します。自然気候現象で供給が減れば、すぐに価格は跳ね上がります。昨日は一本100円だった大根が、今日は250円になっていることなんて、日常茶飯事です。小売店の価格操作も多分にあるでしょうが、本当に相場もの、そのものです。その点、果物類はさほどの値動きはありません。安定した収穫が望める、大規模果樹園が多いからかもしれません。全体として、肉瀬を除く生鮮品は値動きが激しい。そこでやはり思うのは、このような食材に消費税をかけてはいけないのではないか、ということです。来る消費税増税時には、軽減税率を導入するとの動きはありますが、ここは乱暴な案ながら、食料品全体は税率ゼロにすべきだと思うのです。酒類や贅沢品をどう振り分けるかの煩雑さはありますが、命の元である食材に税金はかけてはいけない。

ここにきて、日本人家計のエンゲル係数が上昇し続けています。二人以上の世帯のここ17年の統計を見ると、2001年の23.2%から始まり、2005年の22.9%を底として毎年上昇し、2016年は25.8%となっています。所得が向上しても、豊かさを否定するかのようにエンゲル係数が高くなっている。中食の増大であるとか、高齢者世帯の増加とかが原因と分析されていますが、本当にそうなのでしょうか。原因はずばり価格ではないのかと。衣類や家電が企業努力で画期的な低価格を実現したのに対し、生鮮品は簡単には低価格供給が可能にはならないことは分かりますが、衣類や家電が完結型であるのに対し、野菜はそれだけでは食卓が完成しないのです。白菜一個で夜の食卓を飾れません。当然に肉や魚、その他の野菜も必要となります。それらの価格の積み上げが結果として、びっくりするほどの高額になってしまうということです。トータルなとらえ方をしたとき、食料品全体を消費税ゼロにするのは、国の役目ではないかとさえ思えるのです。

      12月10日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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【第147回】 食環境の現状(126) (寿司学校の目的)

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食文化の豆知識147 食文化の現状126(寿司学校の目的) 

世界で人気の寿司。でも実際に海外での寿司店が提供しているのは、日本での寿司とは異なるものも多いようです。いわゆる裏巻きのカリフォルニア巻きや、チリソース味の豆が入ったものなど、自由な発想で寿司もどきなるものが産まれています。それはそれでいいのではないかと思います。目くじらを立てるものでもない。我々日本人も、本場にはない中華料理を編み出してきましたし、フレンチでも日本ならではの料理を提供しています。ただ、生魚を出す寿司店の場合、衛生管理が行き届いていることは、必至条件です。 

今、世界で急増する寿司店では、いわゆる、きちんとした寿司職人を必要とするところが多くなってきました。本物の日本人職人を。それだけ、寿司もどきを売る店が多くなったということでしょう。以前カナダツアーに行ったとき、日本料理店でのランチが組み込まれていましたが、すぐに日本人による店ではないと分かりました。料理はもとより、食器が違う、そして料理人の対応と印象が日本人のそれではありませんでした。すべてに不満でした。でも外国人客には日本人かどうかわからないでしょう。大手旅行代理店企画のツアーで、それはないだろうと思いました。だから、海外の寿司店で日本人の職人が望まれるのは、うれしい限りです。 

「飯炊き3年、握り8年」が一人前の寿司職人への道だと言われてきました。そのような常識を打ち破るような、寿司学校が各地で人気だそうです。3カ月でプロの出来あがりを目指して、独特のカリキュラムを組んでいます。鮮度を見極める力や、下処理、さばき方に始まって、握り技術の習得に、大切な衛生管理に至るまで、厳しい指導がなされ、一人前の寿司職人を送り出すのです。海外の日本食店で、実際に日本人が関わる店は1割に満たないとか。日本人が握る寿司、は需要が多いのです。寿司学校は日本人のほか、アジア、ヨーロッパにわたる受講者も勉強しています。それも歓迎です。頑張って、日本の寿司の真髄を、海外で披露してほしいと思います。 

           11月9日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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【第146回】 食環境の現状(125) (良質なHMRを)

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食文化の豆知識146 食文化の現状125(良質なHMRを) 

HMRとは、ホームミールリプレースメントの略で“家庭の食事に代わるもの”という意味です。アメリカ初のMS(ミールソレーション・食事の問題を解決する)とほぼ同様の位置付けでしょうか。要するに、惣菜のことです。女性の社会進出や高齢者世帯の増加を受けて、近年、その市場は大きく広がってきました。スーパーやデパ地下でも、惣菜売り場がかなりの面積を占めています。それだけ需要があるということです。スーパーマーケットのすぐれたマーケティング戦略でもあります。 

HMRと一口に言っても、様々な種類があります。献立に合わせた材料がセットされたもの(鍋用のセットなどです)。冷凍加工品(お好み焼き、たこ焼き、弁当用おかずなど)。調理済みでそのまま食べられるもの(寿司、サンドイッチ、揚げ物、サラダなど)が主な種類です。最近は本当に便利なものが出てきて、鍋用の出汁など、家ではなかなか作れない味わいのものがあり、重宝しています。まさに食のお助けマン、といったところでしょうか。しかし、本来の意味、すなわち、家庭での食作りの負担を軽減するために、食材や味にこだわった良質の食事を提供すること、を第一義としたMSとは言えないのではないか、と思われる惣菜があふれています。かなり質が悪い惣菜も、大きな顔で売られています。 

家で作る料理に、とって代わろうというにはおこがましいレベルのものが氾濫しています。衣だらけの揚げ物、中身スカスカのイカリングフライ、輸入野菜オンパレードの煮物、後味の悪いサンドウイッチ、合成着色料まみれの巻きずしetc。これらは確かに求めやすい価格で売られていますが、その目的は前述の、家事を補助するための良質な食の提供、というよりは、売れ残りを防ぐための食材の有効利用、すなわち賞味期限ぎりぎりになった食材に手を入れることで、ロスを防ごうという意味合いの方が大きいのではないでしょうか。家で料理を作り切れないときや忙しいとき、元気の無いときなど、惣菜に頼るのは当たり前のことですが、もう少し良質の惣菜が出回ってもいい。先の鍋用スープなどは、大ヒット商品になりました。要はアイデア力です。いつまでも店頭に、質の悪い揚げ物を並べて置かないでほしい。妙に甘すぎる煮物も撤退してほしい。残り物有効利用の発想ではなく、真に家庭の食事に代わる良質のものを開発販売してこそ、厳しい市場を生き残ることが出来るでしょう。 

           10月8日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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【第145回】 食環境の現状(124) (情報の進化)

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食文化の豆知識145 食文化の現状124(情報の進化) 

海外に住んだことが無いので断定はできませんが、日本ほど食に関するテレビ番組が多い国は無いのではと思うほどに、いつもどこかのチャンネルで、食事風景が流れています。実際に店を訪問して料理を食べていたり、生産農家を訪ねて食材を調理したものを食べていたり、ドラマ仕立てで出演者が食べていたり、とにかく食の場面がいつも流れています。いささか飽食気味ながら、食べるという営みの原点に訴えてくるので、興味をそそられることが多いのも確かです。人は毎日、何かを食べなければ生きていけないわけですから、食べるのに飽きないようにしたい。その意味では、手を変え品を変え、食風景を流す番組は、食欲増進に役に立っているのかもしれません。 

生活範囲のエリアにある飲食店にランキングを付けて、人気度を競い合う番組のなかで、特に人気度が高かった店を実際に訪問したところ、期待を裏切らない美味しさでした。お笑い系芸人が主体なので、おふざけ傾向が前面に出ている番組ですが、少し見直したい気分になりました。インターネットでも飲食店の情報は豊富です。専門サイトは言うに及ばず、個人発信のおすすめ店など、まさに百花繚乱。大いに参考になります。そこで、思い出しました。20年ほど前のことです。私たちはチームを組んで、旅館や飲食店を対象に“ホームページを作りませんか“の提案をしていました。反応は弱く、ホームページなど要らない、との返答が殆どで、そのプロジェクトは立ち消えになりました。方法と手段が力不足だったのだと思いますが、今や、何らかの形でもホームページを持たない飲食店は皆無に近くなりました。逆に、ネットで探せない店は信用出来ないといった雰囲気です。たかが20年で情報伝達がここまで進化したということは、この先20年で、どんなことが起きるのか予想もつきません。今が、飽和状態なのでしょうか。それとも? 

             9月10日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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【第144回】 食環境の現状(123) (本物ということ)

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食文化の豆知識144 食文化の現状123(本物ということ) 

スーパーマーケットやデパートの食品売り場はまさに百花繚乱。様々な食材が並び、選ぶのに一苦労で、うれしい悲鳴も上げたくなります。皆、企業の努力のかいあってか、購入をそそる形態仕様をしています。わたしを買って!の声が聞こえてきそうです。だからこそ、消費者は商品を見極める努力が必要だと思うのです。安くていいものを見つけるのは当然ですが、フェイク商品が多く出回るジャンルの食材は、予算の許す限り少し高くても本物の商品を買いたい。 

以前、“本物の食材とは何ですか?”の質問を受けて、答えに言い淀んだことがあります。大きすぎる題目だなと思いましたが、今は私なりに答えられそうな気がします。“本物とは無駄なものが加えられていないものです”と。野菜・果物類はすべて本物です。形・大きさは様々なれど、偽物のトマトやきゅうりは売られていません。肉類も成型肉には気を付けなければなりませんが、偽物はまずありません。ですので、本物かどうかを見極めるべき食材とは、そこに人の手が加えられている商品なのです。 

例えば、醤油。本物は大豆・小麦・食塩から作られます。然し店頭に並んでいるものの中には、脱脂加工大豆・アルコール・糖類・アミノ酸調味料etc、ずらりと添加物が加味されたものも、醤油として売られています。立派な偽物です。価格は安めです。安い添加物を加えることで、醤油風の味を作っている調味料です。味醂も同じく、本物はもち米と米麹とアルコールが主原料ですが、味醂風調味料の名で売られているものは、うま味調味料や水飴、塩などに酒税のかからない1%未満のアルコールが添加されたものです。本物の味醂はアルコール量が多いため、酒税がかかる分、値段も高めですが日持ちがよく、コクもあります。味醂風調味料は酒税がかからないため、値段は安いものの、アルコール分が少ないことによる劣化が早いのです。コクにも欠ける。いわば作られた味です。料理酒も同様に、純米料理酒と料理酒調味料は似て非なるものです。やはり料理の味の決め手となる醤油や味醂は、本物を使いたいものです。値段は倍ほどにも高くはありません。それにぐびぐびと飲むものではないので家庭によって差はあるでしょうが、一カ月の消費量はそれほど多くはありません。本物の味に慣れると、フェイク商品の後味の悪さが分かってきます。 

ハムもチョコレートも魚の練り物類も、安い添加物を加えて増量し、いかにも本物のように売られている食品は、日本では残念ながら多くあります。逆にいえば、技術力が高いのでしょう。でも日本料理を世界に誇るためにも、せめて基本的な調味料は本物が主流となってほしいものです。 

                  8月7日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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【第143回】 食環境の現状(122) (食生活の変化と肥満)

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食文化の豆知識143 食文化の現状122(食生活の変化と肥満) 

時代と共に、私たちの食生活は変化してきました。いい方向にか、悪い方向にかは一概に断言できかねますが、少なくとも栄養面で、そして選択面では豊かになりました。反面、手をかけ時間をかけた料理世界を、簡単便利なファストフードや中食が侵食しているのも現実です。そして、ファストフードや中食の比率が高まれば高まるほど、健康面での問題が増えてくるのも、また事実です。

かつて長寿を誇った沖縄男性の平均寿命の変化は衝撃的です。1990年で全国5位であったのが、2000年では26位、2010年では30位という結果でした。そして何と、65才未満の死亡率は全国1位だったのです。一方、女性は長らく平均寿命1位を保っており、2010年でも3位です。女性の方が従来の食生活を守っているからでしょうか? 

沖縄の場合の理由はやはり、アメリカナイズされた食生活への転換なのでしょう。高カロリー、高脂肪の食生活が肥満を招き、結果として様々な病気を呼び起こしたのだと考えられます。ステーキやハンバーグなどは文句なく美味しいと思いますが、要はバランスです。かつて食していた野菜や海藻、豚肉などの伝統料理との摂取比率が逆転してしまったのです。食生活は全く個人の自由なので、外野があれこれ口をはさむのもはばかられますが、健康を保つ食生活のモデル県であったのが夢のようです。環境は異なりますが、ベトナムでも肥満率が上昇しているとか。野菜中心のヘルシーな食生活から、脂肪や糖分の多い食生活への変化により、2015年のベトナム男性の肥満率は16%と、10年前の3,2倍に。女性は24%と10年前の8割増しだそうです。 

少し太り気味が健康面ではベストだという説もありますが、程度問題でしょう。過度の肥満は、確実に足腰を痛め、心臓に負荷がかかります。先進国、準先進国が肥満防止に力をいれるのも、医療費増大を避けるためであり、食生活面では、圧倒的に肥満度が少ない日本の“和食”に注目が集まるのも納得できます。少し面倒でも、野菜の煮物や酢の物など日本古来の料理を各家庭で伝承していきたいものです。 

                  7月9日  間島万梨子 食生活アドバイザー

 

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【第142回】 食環境の現状(121) (食品ロス減少の新たな展開)

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食文化の豆知識142 食文化の現状121(食品ロス減少の新たな展開) 

食品ロスは様々な形で、様々なところから出てきます。家庭からは、賞味期限切れの食品の廃棄、食べ残し、野菜や果物の過剰切り取り、などが主なケースでしょうか。盛んに、食品ロス減少のための提案の声が聞かれます。消費者は啓蒙しやすい対象なのでしょう。それに対して、企業側の努力は?と思っていたところ、朗報が届きました。製造技術の向上と高機能な容器開発により、賞味期限そのものを伸ばすことで、食品ロスを減らそうと言う試みです。 

キューピーでは、製造過程での酸素減少で賞味期間を延ばすことに成功。牛乳も製造過程での徹底した衛生管理で賞味期間を倍に伸ばしたとか。一方、容器の改良でおいしさを保つ技術も進んでいます。容器の密閉性を高め、品質劣化を防ごうというものです。このような賞味期間延長は確実に食品ロスを減らすことにつながります。以前、カナダを旅行した際、客がスーパーで買い物をしている横で、黒い大袋を持った男性がパンや菓子類を目にも止まらぬスピードで袋に投げ入れていました。賞味期限切れが近い食品を廃棄していたのです。日本では少なくとも、客の目の前でそのようなことはしないでしょう。かなり衝撃的な場面でした。ことほどさように、食品メーカーによる賞味期間延長は非常に望ましいことです。 

さて、飲食店での食品ロスも大いに気になるところです。売れ残り材料の廃棄はもとより、客の食べ残しも馬鹿にはならない量になっているはずです。ファストフードから出る廃棄率は、どれほどなのでしょう。企業秘密とも言われています。ただ、客の食べ残しは、客自身の気づきでかなり解消されます。食べられる量を考えて注文する。食べ残しは持って帰る。これは店側の同意も必要ですが、生もの以外の火の入った料理は、一日くらいは十分に大丈夫です。食べ残し持ち帰りは、もっと自由に普遍的になっていいと思います。 

             6月10日  間島万梨子 食生活アドバイザー

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