食文化の豆知識 60 [食環境の現状 39]
消費税増税を巡って、各党各紙各ジャーナリスト、論戦にぎやかです。国の税収が低下
の一途を辿っている状況下では、広く税収が期待できる消費税アップはやむを得ないと
いう向きと、今増税などすれば益々景気が悪くなってしまうと警告を発する向きもあり、
どちらの意見もそりゃそうだなと思ってしまいます。“正義はどちらに”という問題でも
なさそうです。本音としては、やはり増税は痛いかなと。でも単純に収支を考えれば今
のままでは日本がどっつぶれてしまいそうで将来の不安がつのります。
さて、悩ましい消費税談議は横に置いて、最近、レストランでのお持ち帰りが、徐々に
増えているそうです。エコ意識の高まりを受けて“もったいない”精神が浸透してきた
のでしょう。年間1900万トンの食品廃棄物の中で、500から900万トンにも登
る食品ロス。食品ロスとは、食べられるのに廃棄される食品です。特に、レストランの
食品廃棄の再利用率は低いのが現状です。お客さんの食べ残しや売れ残り食品は、衛生
上、廃棄されるのです。そこで、自分の食べ残しを持ち帰ろう、という動きです。
ドギーバッグと呼ばれ、米国や中国などでは日常化しているようです。カナダで訪れた
中華レストランでは当然のように、食べきれない料理を皆が専用箱に入れて持ち帰って
いました。それをどう食べようとも、利用者の裁断にまかされます。ドギーバッグの語
源の如く、アメリカでも当たり前のことになっています。日本でも宴席での料理を折り
詰めで持って帰る習慣はありますが、一般レストランでは少ないのが現状です。店側と
しては、食中毒を恐れて慎重にならざるを得ない。確かに、家に持って帰って直ぐに食
べずに、古くなったものを食べて病気になった場合でも、店の責任の所在を問われそう
です。これでは、たまったものではないでしょう。
でも、持ち帰りによる食中毒の危険性は、そんなに心配することは無いと思います。
なぜなら、食中毒の大半は細菌やウイルスによるもので、万が一それらに汚染されてい
るのであれば、店で出された時点でアウトだからです。潜伏期間は3時間から数日後と
幅広い。だからレストランの食中毒は大抵自宅に帰ってから発症します。
個人的には、もっと持ち帰りが一般化すればいいと思っています。ただ、なるだけ早く
食べてしまうのは当然で、そのときも鼻で目で舌で確かめる。五感を働かせれば、食べ
られるかどうかは判断できます。昼食時のものなら夕食の一助に。夕食時のものなら夜
食の楽しみやお土産に。楽しみが増えそうです。
22年7月2日 P&Cネットワーク 間島万梨子 食生活アドバイザー