食文化の豆知識186 食文化の現状165(果物の高級化)

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食文化の豆知識186 食文化の現状165(果物の高級化) 

コロナが世界を襲う以前、多くの外国人観光客が訪日していました。都会を楽しむ人、古都を楽しむ人、自然を楽しむ人たちに負けず劣らず、日本の食を楽しみに訪日していた方たちも多くいました。日本食はバリエーションが広く、生鮮物、焼き物、煮物、揚げ物と多種多様で、それぞれが美味しい。これほど多くの料理種が存在する国も珍しい。海の幸、山の幸と食材が豊富なうえに、日本人の食への飽くなき欲求が、美味しいものを生み出したのでしょう。中でも、日本の果物の美味しさは折り紙付きのようで、外国人観光客が桃や苺を箱で大量買いしている風景がよく見られました。本当に日本の果物は美味しい。南国の独自の果物を除けば、世界一ではないかと思っています。でもいささか値が張ります。かつては買いやすい価格の果物がもっと多くありました。蜜柑類なら、夏みかん。メロン系ならマクアウリにプリンスメロン。桃の類似品なら、すもも系。すべて庶民が普段、家庭で食べ親しんできた果物たち。それらを今、果物売り場で見かけることは、ほぼありません。柿やいちじく,びわなどを除いて、ほとんどの果物が品質改良?されて、より甘く、より大きくなり、それに伴って驚くほどの値段がつけられるようになってきました。より甘く、より大きく、は果物農家のたえざる努力の賜物であるのは重々分かるものの、ちょっと手がでない価格ゾーンに入っています。スーパーに行っても、買っている人をあまり見かけません。梨一個が400円以上しているのです。昔の素朴な長十郎や二十世紀梨は姿を消し、今は甘味豊かな、幸水や豊水といった種類が主流です。確かに美味ですが、果物が特別なものとして陳列されている、といた印象です。桃にいたっては超高級果物化してしまいました。日常に食していた時代が懐かしい。 

日本では、果物は生食するのが一般的なので、より美味しい味の追及がなされるのでしょう。ジャムなどの加工品や料理に使用する場合なら、甘味は砂糖などで補えます。だから外国のリンゴや苺は美味しくない?あくまで個人的感想ですが、果物の生での美味しさは日本がダントツです。しかしながら、これほど高級化してしまうと、購入離れが生じるかもしれません。果物を食べましょう、との進言を雑誌や新聞でもよく目にしますが、思い切り摂取できるのは、柿や早生・温州みかんが市場に豊富に出回る冬を待たねばならないのかもしれません。

生活アドバイザー 間島万梨子

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