【第165回】 食環境の現状(144)(度を過ぎる親切さ)

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食文化の豆知識165 食文化の現状144(度を過ぎる親切さ)  

何らかの理由で日本に来たいと切望する外国人を、日本に招くTV番組があります。現地で日本に興味ある人を募って、その中からひとりに来てもらい、日本での数日間を追うという、いわばドキュメント番組なのですが、日本に来たい理由が千差万別で、興味をそそられる内容のときもあります、ただ単に日本の文化が好きというだけの人もあれば、実際に日本のある分野に精通して本物を知りたいという勉強家もいて、やはり番組的には後者の方が充実感はあります。日本人よりも日本のある分野に詳しい人もおり、その殆どがネットを通じて知識を深めたと言います。あらためてネットの威力に感心することしきりです。日本での滞在中、本人が来たい理由に関わりのある日本人が、さらなる知識や技術を本人に伝授して交友を深めるという構成になっており、最後は決まって涙の別れが待っています。

 その中で必ず登場するのが、受け入れ側の日本人が家族ともども、本人を夕食に招く場面です。双方、食卓を囲んでなごやかに歓談する情景はなかなかに見ていても楽しいのですが、決まって精一杯の心づくしの豪華な料理が並びます。食卓いっぱいに、お母さんの数々の手作り料理やお寿司の大皿などが供され、いくらテレビカメラが入るとはいえ、準備に大変だったろうなと思ってしまいます。客を食事に招く場合の国民性が出ているのでしょう。欧米であれば、フレンドリーさはあっても料理はかなりシンプルだし、アジアなどでも4~5種類の料理が殆どです。日本はこれでもか、というおもてなしが満ち溢れた賑やかな食卓で、招かれた外国人の吃驚する顔が見られます。それと、これもパターン化された場面なのですが、別れの時にお土産が交換されます。本人からは国のワインかお菓子類が一般的で、一見してささやかな可愛い土産品です。ところが、日本側からは、本人が日本に行きたい理由となった技術や芸術に関連する貴重なグッズが決まって送られる。それも買えば数万円する逸品が殆どで、あるとき、立派なお琴が送られた時には吃驚しました。本人の驚きようも尋常ではありませんでした。安いものでも20万円ほどで、100万円を超すものもあり、送られたものは一見して高価なものでした。たぶん、本人の住む本国ではあり得ないプレゼントなのでしょう。 

そこで、少し複雑な気分になりました。果たしてそれらがプレゼントとして適切であったのかと。送る方の勝手だろう、と言われればそれまでですが、受け取り側にとって身に余る接待や土産が本当に、その人のためになるのだろうかと。確かに送る側の勝手です。気持ちが込められているのでしょう。でも相応というバランス感覚がそこには見られませんでした。日本に立ち込めている、”おもてなし”が、度を過ぎたものになっては双方にとって、良い結果を生むとはどうしても思えません。そんな余計なことを考えてしまいました。

   10月13日  食生活アドバイザー 間島万梨子

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