顧客満足の複雑さ 108 「歳末商戦とネット利用の影響内容」

顧客満足の複雑さ108「歳末商戦とネット利用の影響内容」間島 

正確なデータを取ったわけでは無いが、毎年歳末商戦が早く始まるような気がする。9月におせちの広告案内を目にしたときはさすがに驚いた。まだ暑さが残っている時期に、とてもとてもおせちの気分ではなかろうと。そして11月下旬に、おせちのパンフレットを物色して、いざ注文したところ、その商品は売り切れとの連絡が入った。人気商品だったらしい。他にも魅力的なおせちは充分に揃っているので、他商品に切り替えれば済む話だが、早い商戦の意味が分かる気がした。

とにかく、他社よりいっときでも早く売り切ることで、すべての効率化をはかり、資金繰りを立てることが出来る。特に年末の消費は手堅く確実に増大するので、早い商戦となるのだろう。そのうち、一年後の予約受付という笑えない事象も出てくるかもしれない。スーパーマーケットでも、すでに数の子の特設コーナーが出現しているし、デパートや家電業界も歳末商戦にかける意気込みは激しい。

世界的に見ても同様なのだろうが、米国では歳末商品を買い求める店への客の伸び足が昨年と比べて鈍っているらしい。ネット注文が増えているのだ。この傾向は今後も続くと思われる。直に商品を見て買物をする楽しみも捨てがたいが、人込みを嫌って自宅でのんびりと選べるメリットを取る人は確実に増えていく。少子高齢化社会にとっても、ネット経済は嫌が上にも自然に望ましい成長を遂げていくに違いない。そして、買い方のバランスが逆転したとき、小売店の販売構造は大きく変わらざるを得なくなる。利益構造の変化は言うに及ばず、根本的なありかたも変わる。従業員数も減少していく。今盛んに叫ばれている人手不足は解消される。対面販売が少なくなれば、それこそAIの出番だ。

さて、先の歳末商戦の影響をあまり受けないのが宿泊業界だろう。提供商品(部屋数)に限りがあるから、需要が勝るのは当然で、大小かかわらず、年末年始のホテル・旅館はほぼ満室状態で、しかも秋口から埋まっているところも多い。歳末商戦の必要は無いわけだ。ネットの影響も、簡便な注文スタイルとして良い意味で利用できる。ただし、ネットで予約が出来ても、宿泊という行為そのものは決して体験できない。そこが小売り店と大きく異なる。いわば体験が売り物なので、いくらネット社会が趨勢を誇っても、うまく利用すればいいだけのことだ。そう考えると、今後の宿泊業界の強さも見えてくる。もしかすると、より強くより安定した業界になるかもしれない。問題は、いかに利益を確保するかどうかで、当たり前のことだが、売上を上げるか、経費を減らすしかない。ゲストの満足度を低めることのない経費の節減は、改善の余地がまだまだ残っているだろうし、売上の増加も時流が味方している。ただその背景には、グローバルな先進的機能性と娯楽性の二者の力保持が必至となる。                                             2017年12月1日

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