顧客満足の複雑さ184(ホスピタルとホテル)

     顧客満足の複雑さ184「ホスピタルとホテル」

友人が入院した。重篤な症状を抱えての緊急入院ではなく、一か月ほどを要する検査入院ということだが、やはり心配が募る。で、一週間ほど経って見舞い訪問したところ、いたって元気な顔を見てほっとすると同時に、どうか早く退院できることを願わずにおられなかった。部屋は、リラックスできる雰囲気の個室で、改めて病院の個室の利用価値を認識するとともに、病院の個室は、広さや雰囲気、それに価格は各病院で実にさまざまであるのに驚く。個室の費用を左右するのは、まずは広さ、それに設備だろうか。基本的にトイレと洗面台を有しているが、シャワー&浴室を備えているのは特別室タイプになる。勿論病室としての特別機能を有しているが、感覚的にはビジネスホテルから簡易シティホテルに近い。ただまさに千差万別、病院スタイルとしてきちんと市場価格別に整理されているわけでもない。ソファや冷蔵庫の大きさもさまざまだし、窓からの眺望もそれに加わる。家族や自分、そして知人が利用した個室も価格、広さ、設備、眺望ともに、一貫性はなく、ただただ病院側の一方的な値付け放題、といった印象を受けた。そこに市場競争感覚は無い。これがホテルとなると需要バランスや部屋の値打ち度をマーケテイング反映させた価格体制がとられる。いわば、買い手市場を微妙に取り入れたものになる。 

病院側からすれば、4人部屋くらいの方が対処しやすいのだろうが、患者側からみれば入院事情は同一ではなく、まして個人環境も大きく異なる中で、これから益々個室利用希望者は増えるものと思われる。それを証拠に個室の空きが無く、ウエイティング状態の時も多い。病院の個室は6.4㎡以上が規定らしいが、広さや設備によって価格差が大きい。某大学病院の最高特別室は1日30万円ほどで驚く価格だ。一般病院でも5000円の個室もあれば3万円前後のもあって価格差は大きい。一方、ホテル個室は9㎡の規定だが、ビジネスホテルのシングルルームの場合、大体が6000円から1万円前後までの価格内に収まる。需要競争も加わり、市場がほどほどの価格を生み出しているからだろう。 

ホテルとホスピタル(病院)はホスピスという同じ語源を共有している。いわば兄弟のようなもので、ホスピスの意味は「もてなす」だ。ただホテルとの決定的違いは、病院の場合は24時間そこで過ごす、ということだ。ならば、ホテルより快適でリラックスできる環境に向けて、部屋そのものに対する発想転換があってもいい。特に色使いを含むインテリア、眺望等に、病院共通の指針があってこそ、ホスピタルを名乗る意義もあろう。 

       2024年 3月1日  間島   

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