顧客満足の複雑さ147「金科玉条の公平と平等」

     顧客満足の複雑さ147「金科玉条の公平と平等」 

やはりというべきか、何故というべきか、日本でのワクチン接種スケジュールは当初の発表から大幅に遅れる見通しとなった。ま、想定通りの成り行きではある。ワクチンそのものの生産数が世界の需要に追いつかないのに加え、コロナワクチンの管理の難しさがスムーズな工程を阻んでいるようだ。止むを得まい。ただ率直に不思議に思うのは、GDP規模世界第三位であり、ノーベル賞輩出でも好レベルにいる日本が何故、コロナワクチン製造では完全に後れを取っているか、ということだ。

自然科学分野での日本人ノーベル賞受賞者は24名で、これは世界5位に当たり、米国、英国、ドイツ、仏、日本の順となるが、2001年からに限ると18名で、アメリカに次ぐ堂々の2位である。ただその内訳は物理学賞8名、化学賞6名と比べ、医学・生理学賞は4名ともっとも少ない。ちなみに米国の医学・生理学賞受賞者はノーベル賞発足から総数105名にのぼる。英国31名、ドイツ16名、仏10名、そして日本は5名。自然科学分野など、まるっきり無知な自分ではあるが、この数字をみて浮かび上がったものはある。医学・生理学を実際に生きたものにするのは、厚労省の役目ということだ。日本にはかつて、ペスト菌を発見し、破傷風の治療法を開発した北里柴三郎博士がいた。諸事情でノーベル賞は取れなかったが、まさに日本の誇る医学界の巨星だ。今もし、博士が生きておられたなら、などとかなわぬ夢を抱いてしまいそうになる。コロナ収束後は、官民あげて医学界の危機管理の見直しと、柔軟で才能を伸ばす土壌の養成に真剣に取り組む必要があろう。いざというときに役に立たない技術は、技術とはいえない。

さて最近、日本はつくづく公平と平等が好きな国民だと思う事案に遭遇する。公平と平等は追い求めるべきではあるが、あまりにそれに執着すると、社会は全体主義ないし共産主義にならざるを得ない。現実は日本は指折りの公平かつ平等社会である。だれでも自由に生きることが出来るし、勉学の道も閉ざされてはいない。国民皆保険は世界に類を見ない公平かつ平等な卓越したシステムだ。そして日本国民は贔屓目に見なくても、勤勉かつ優秀で真面目だ。結局、日本人の優秀さをミスリードしているのは、まるで全体主義思考に陥ったメディアであり、臆病な政治であり、頭でっかちな官僚なのではないかと思う。その中で、メディアは見ない、聞かないという権利が国民に残されているし、政治は一応、選挙という選択の権利が国民に与えられているが、国民にとっての官僚は?となる。とりわけ優秀な人達が集まっているはずの行政が、世界経済第三位の果実を国民に実感させられないでいるのだとすれば、どういう解決策があるのだろう。                       2021年3月1日

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