【第160回】 食環境の現状(139)(野菜・果物は本当に身近?) 

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食文化の豆知識160 食文化の現状139(野菜・果物は本当に身近?)  

昨年の晩秋から年末年始にかけて穏やかな天候に恵まれたおかげで、ようやく冬野菜が求めやすい価格に落ち着いています。ただ夏場から秋口にかけてあまりに高い価格を見慣れてしまったので、ことさら安く感じるのかもしれません。その中でも、夏野菜は相変わらず驚愕価格です。一本100円の値が付いた、しなしなのきゅうりを見ると、“もう売らなければいいいのに。夏に元気になってまた顔を見せてね“と言いたくもなります。旬の野菜を食べるに限ると言うことでしょうか。

日本に二か月間滞在していた欧米人男性の日常の食生活が新聞で紹介されていましたが、滞在中、野菜と果物は殆ど食べなかったそうです。理由はずばり“高すぎるから”。この言葉は、日本の若年層にもあてはまります。もっとも野菜・果物を食べない層で、厚労省の提唱する、1日350gの野菜・果物摂取量にはるかに届かない層です。マクドナルドでの最安値のハンバーガー・マックダブルなら190円で食べられます。一方、りんご一個が158円、トマト一個が140円。お腹が空いている若い人がどちらを選ぶか、言わずもがなです。この現状を厚労省は農林水産省と協力して、分析~解決すべきでしょう。言うだけならだれでも出来ます。それを可能な状態にもって行ってこその、行政力です。 

事実、先進国の中では、日本人の野菜摂取量はかなり低い水準です。ヘルシーと自慢する和食に野菜が多使用されているかは、答えは簡単には見つかりません。野菜料理は数々あれど、単品で食する習慣が根付いているので、どうしても肉・魚がメイン料理になってしまいます。豪華さを誇る旅館の料理も当然に、肉・魚料理がメインです。また、日本人が大好きな麺料理も使用食材はかなり偏っています。特に外食でのそれには、申し訳程度の野菜しか入っていません。アジアでの麺料理の方が、多くの野菜が入っています。また、煮込み料理の多い諸外国でも、大量の野菜を使用しています。イタリアでは、尋常ならざるトマトの消費量を誇ります。ほかの国でも、安価な野菜をぶちこんだ煮込み料理がとても多い。見映えにはほぼ無関心ながら、確かに栄養はたっぷりのような気がします。なので、家でも野菜摂取が足りないと感じたらクリームシチュウなどを作ります。大量の身近な野菜を使用できるからです。本当に、思い込みと事実の剥離現象は、あちらこちらにころがっています。

 2019年1月13日  食生活アドバイザー 間島万梨子

 

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