【第156回】 食環境の現状(135)(民泊は遠い事柄?) 

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食文化の豆知識156 食文化の現状135(民泊は遠い事柄?) 

まだまだ酷暑が続きます。本当に今年の夏は暑く、そして長い。立秋を過ぎた今、ミンミンゼミとつくつくぼうしが、協奏しています。従来なら、ミンミンゼミの声が消えてから、つくつくぼうしの愛らしい声が耳に入ってくるのに、生き物も混乱しているのかもしれません。

さて、食文化とは直接関係は無いのですが、興味深いアンケート結果を目にしました。某新聞の調査ですが、回答者数は1558人。まずまずの標本数です。第一の質問は“民泊を利用してみたいですか?”。はい、が16%、いいえ、が84%という結果でした。予想以上の大差がつきました。いいえ派の理由は、安全面や衛生面への不安が主にあげられ、ヤミ民泊への警戒やサービスの欠如などが続いています。一方、利用してみたい派の一番の理由は、手ごろな宿泊料金で、次に、その地の文化や暮らしを体験できる、があげられています。これほどの大差がつくとは予想外ですが、日本の宿泊施設構造をみると、うなづける結果でもあります。日本には、幅の広い価格帯の旅館群に、ニーズ別のホテル群が多く存在し、ゲストは予算や目的別で、かなりの選択自由を持っています。また人との交流も、日本人には苦手な分野で、旅行に行ってまで気を使いたくない、の気持ちは良く分かります。ただ、海外旅行時と国内旅行時とに分けて質問をすれば、また異なった結果が出たかもしれません。特にイギリスをはじめとするヨーロッパの地方部では民泊は浸透しており、懸念材料も少なく、部屋自体も宿泊するに充分な仕様のものが多いようです。第二の質問は、“では自宅で民泊をやってみたいですか?”。はい派は4%、いいえ派は96%。この結果は言うまでもありません。いいえ派の色々な理由があげられていますが、一言で表すと“わずらわしい”。これも日本らしい。宿泊はプロに任せよ、の論理です。わずかな、はい派の理由は、空き部屋の利用と交流、そして収入面の期待でした。                               

この6月に民泊新法が施行されてからの一カ月での申請数は5千件に満たない状況で、今後も飛躍的に伸びるとは考えにくい。各自治体が厳しい条件を課しているのに加え、民泊はそもそも日本人には合わないシステムだということです。だからこの法律は、違法民泊を取り締まるために役立てる、だけでその役割を果たしているのだと、割り切ることだと思います。日本には日本に合った文化や習性があります。価格差の広い、安全で衛生的な宿泊施設の充実こそが望まれる事象であって、世界がそうだから日本も、という倫理は、こと民泊に関してはあまりあてはまりそうにありません。

  2018年8月12日 食生活アドバイザー 間島万梨子   

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