顧客満足の複雑さ 105 「様々な世論調査」

顧客満足の複雑さ 105「様々な世論調査」飲食担当 間島 

内閣府が昭和32年度からほぼ毎年実施している「国民生活に関する世論調査」が8月に公表された。それによると、現在の生活に満足していると回答した率が、過去最高の73.9%となったという。「所得・収入」「資産・貯蓄」「食生活」「住生活」「自己啓発」「レジャー・余暇生活」のすべての項目で、各満足度が過去最高を記録した。内閣府は景気の緩やかな回復が原因と分析している。この結果をにわかに信じがたい向きも多いと思われるが、世論調査そのものが氾濫している昨今では、それぞれの受け取り方があっていいのだと思う。ことにこの結果は、“国民すべてが現状の生活に不満を抱いているに違いない“との認識に偏りがちなメディアにとっては見たくない数字であっただろうと思うと、いささか愉快でもある。 

確かに、求人率は上昇し、アルバイト時給は過去最高を記録し、今春の大卒就職率も過去最高の97.6%だった。この事実現象を、単に人手不足のもたらした恩恵ではないかと冷たく無視するのも無理筋だろう。企業業績が伸びているのだ。国内消費は期待するほど伸びてはいないらしいが、とにかく景気動向は数字でしか判断できない。国内総生産も予想以上の伸びを示した。そして、前記の内閣府の調査結果も確かな数値なのだろう。特定のメディアの自己陶酔による正義感がいかがわしいものに見えてくる。ただ、この調査における政府への要望では、社会保障の整備や、高齢者社会対策、雇用・労働問題への対応、防衛・安全保障問題、などが上位につらなっており、国民の現実的な賢明さを垣間見ることができる。 

一方、世論調査を含むすべての調査は、設問の内容や回答形式仕様如何によって、調査元が結果を誘導しやすいものだ。飲食店や宿泊施設に用意されているアンケート調査なるものもしかりで、一体何のために実施するのか判断に苦しむ場合もある。つまりどのような結果が出ても、それに対応できる体制がなければ全く意味がない。また適切な結果分析力がなくては、調査そのものが徒労に終わる。それより、長く繁盛している他店を視察する方が余程勉強になる。客が少なく元気のない店を見るのも反面教師となる。クレームはともかくとして、客のご意見を調査で知ろうとするより、自分自身が客となって他店を見ることで、自店がはっきりと見えてくるものだ。世界の飲食店やホテルでは、日本人客は“妖精”といわれているらしい。料理や待遇が気に入らなかったら、何も言わずすっと消えていなくなって二度と来ないからだとか。国民性を良く表しているものだと妙に納得してしまった。

                          2017年9月1日

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