食文化の豆知識139 食文化の現状118(海外のおおらかな売り方)
海外の紀行番組を見るのが好きです。それも案内役のいない極めてシンプルな構成のものが、先入観無しに自分の判断でその国が観えるという意味で歓迎です。カメラとガイド音声だけで、充分に海外旅行気分は味わえるのに、何故わざわざ日本から案内役を連れていく必要があるのか、分かりません。大体が、はしゃぎすぎで、うるさく、たいした知識も無い。
さて、それはさておき、紀行番組の中でその土地の市場が紹介されると、とても興味深いものがあります。市場には、その国の人々の生活が息づいています。どんな野菜や果物があるのか、いかほどなのか、魚や肉も日本との相違を見つけるだけで楽しい。そして先進国であろうと、後進国であろうと、売り方には日本と異なる共通項があります。野菜も果物も、魚や肉にしても、ほとんどが量り売りであるということです。日本のように、プラスティックの袋に入れて二個、三個幾らと売っている光景は見たことはありません。数少ない、海外渡航先でも、同じ経験をしました。カナダのマルシェでの鮭の切り身はすべてが、グラム幾ら、キロ幾らの提示で販売されていましたし、りんごもトマトも、同じように重さの値段が提示されていました。対面販売以外のスーパーでも同じこと、ゲストはレジで重さをはかってもらい、レジ係りは機械から出てきた価格ラベルを商品にペタンと貼ってくれて、おしまい。簡単なものです。
重さによる価格販売が何故一般的かというと、商品選びが公平なこと(小さくても、その分安くなるという納得性)などがあげられます。そして何より、ゴミの排出が少ないということです。日本ではキュウリでもトマトでもレタスでも、ご丁寧にセロファンで包装されています。ナスもシイタケも青菜もしかりです。生産側にしても、何本で幾ら、何個で幾らという販売方式を取るがゆえに、農家は規格に合格した商品出荷を強いられ、それに合わないものは店頭に出せないことになるのです。小さいものでも、重さ販売なら堂々と売れるのに。
なんという無駄と欺瞞でしょうか。昔は日本でも海外方式で売られていたように思いますが、スーパーマーケットが個別包装販売を取り始めました。そして日本式販売のおおもとは、農協が生産市場を握るがゆえに、厳しい規格サイズを生産者に強いて、整った野菜や果物だけを市場に回すという構図でしょう。勿論、海外でも新鮮さは要求されますが、少し形がゆがんでいても大きな顔で売られています。何といっても重さ価格なので、客が好きに選べばいいだけのことです。ちまちました、プラスティックごみが大量に出る売り方に、消費者が声を上げる日が来るかもしれません。
3月5日 間島万梨子 食生活アドバイザー